2017 Fiscal Year Research-status Report
相互作用型授業とその知識・理解及び学習姿勢を複合した分析・評価法の開発
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16K00952
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
新田 英雄 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (50198529)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 相互作用型授業 / 学習姿勢 / 授業の定量的分析 / 授業の定量的評価 / 現代テスト理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
予測困難な時代に対応できる社会人を育成するために,授業形態を伝統的な講義形式から主体的に生徒・学生が考え学び取る能動的学習へと転換していくことは,現在の全ての教育課程の潮流となっている。本研究でいう「相互作用型授業」は,生徒・学生が主体的に学ぶためには教員,ともに学ぶ他の生徒・学生,教材の間の強い相互作用が不可欠であることを強調した用語である。本研究は,研究代表者らが推進してきた相互作用型授業の定量的分析と評価を,学習者の学習に対する期待や態度すなわち学習姿勢を含めたものに拡張することによって,授業の定量的分析・評価から得られる情報を質的に深め,さらなる授業改善に活用できるようにすることを目的としている。具体的には,(1)海外と比較可能な学習姿勢調査を導入し,様々な授業形式に対し学習姿勢を数値的に分析・評価できるようにすること,(2)(1)で開発した分析方法と,これまで開発してきた授業の定量的分析・評価法とを複合した定量的分析・評価法を開発すること,(3)それらを応用してジェンダーギャップ問題の基礎調査を行うこと,(4)それらを基に,相互作用型授業の改善を行うことの4項目を研究目的としている。なお,本研究は物理教育を対象としているが,開発した分析・評価法は広く科学教育全般に利用できるものである。 平成29年度は,本研究で開発したCLASS(Colorado Learning Attitudes about Science Survey)の和訳版を複数の高等学校,大学の授業で実施し,因子分析をおこなうことによって,CLASSで提示されている因子が日本の教育課程にも適用できるかを調査した。また,授業効果を測定する際に利用されているHakeの規格化ゲインの問題点を超克するために現代テスト理論を用いた評価法を開発し,それによって安定した結果が得られることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に続き,さらに多くの高等学校に対してCLASSによる調査を実施できた。統計を増やすことができた結果,因子分析の精度を向上させることができた。分析中であるが,CLASSを作成した研究グループの提案する因子とはやや傾向が異なっていること,因子は学校ごとに特徴がみられることが分かってきている。また,Hakeの規格化ゲインの問題点を克服するため,現代テスト理論のabilityを基礎とする授業評価を開発し,ピア・インストラクション型授業の事前・事後テストに適用して規格化ゲインと定量的に比較した。この結果は物理教育国際会議で発表した。なお,ジェンダー差に関する研究をまとめた論文が掲載され,生徒の概念獲得過程を詳細にプロトコル分析したコンフリクトマップに関する研究をまとめた論文が掲載決定となった。以上のことから,研究は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は研究の最終年度であるため,今までの研究成果をまとめていくことになる。CLASSの因子分析を進め,Colorado大学の研究グループの提案した8因子のままでよいのか,それとも日本独自の因子が見られるのかは重要な問題であり,さらに多くのデータを積み重ねていく必要があるが,本研究として一定のまとめを行う予定である。また,FCIとの相関等を複合的に分析し,相互作用型授業による差異やジェンダー差を概念理解と学習姿勢を総合的に分析する定量的手法を提示する予定である。また,授業効果の定量化に現代テスト理論を応用し精度を高める研究を,調査対象を増やしてさらに進める。これらの研究成果を論文にまとめていく予定である。
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Causes of Carryover |
研究発表に要する旅費が当初の見積もりよりも少額で済んだために次年度使用額が生じた。次年度使用額は,平成30年8月に来日が予定される,相互作用型授業の研究で世界的に著名なDavid Sokoloff博士の講演会および研究打ち合わせに必要な経費に充当する予定である。
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