2016 Fiscal Year Research-status Report
海産生物飼育から物理・化学・生物・地学領域の総合的理解を図る理科教育の有効性検証
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16K00957
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
坂口 雅彦 信州大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (30221998)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 理科教育 / 総合学習 / 科学教育 / 初中等教育 / 環境教育 / 総合的な学習の時間 / 初等教育 / 中等教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
理科を学ぶ目的は、将来、科学技術の専門家になるためだけでなく、科学的な見方・考え方を習得し、将来、様々な分野で未知の問題に立ち向かう時に、色々なことを相互に関連させて考え、問題解決をはかる思考方法を身につけることにある。初等中等教育の理科において、児童・生徒は、物理・化学・生物・地学領域を学習するが、各領域の関連性はほとんど意識されておらず、その総合的理解が得られているとは言い難い。各領域の関連性を意識させ、総合的に考えさせ、理解させる教材の開発が必要である。本研究では、小中高校生が、海産生物を飼育するシステムを自ら調べ、考え、工夫し、実際に飼育を行う過程を総合学習的に体験することが、理科各領域の関連性、総合的理解を得るのに適した教材であるとの仮説を検証することを目的とし、アンケートと心理テスト(FUMIEテスト)を行う。 平成28年度は某小学校で予備調査を行った。中学校及び高等学校では残念ながら、協力内諾を受けていた方が異動になり、校長の方針等で協力がむつかしくなったため、予備調査が実施できなかった。小学校においては、飼育の難しい海産生物を飼育した経験者はほとんどおらず、海産生物飼育事前事後の調査の影響を調査することができることがわかった。しかし、物理・化学・生物・地学という領域の認識はされておらず、光や電気・物の溶け方・生き物のくらし・太陽や星の動きといったとらえ方でないと各領域が意識にのぼらないことがわかった。小学校での生物との関連性を考えさせる題材としては、小5「もののとけかた(食塩)」及び小6「ものの燃えかた」を小6「動物の体」で振り返る場面が良いようであった。中学校と高等学校での調査が遅れているため、早急に新年度体制での協力者を得るべく活動していく。中学校では中1「塩化ナトリウムの溶解度」と中2「生物の体」の関連性で行う計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
中学校及び高等学校では残念ながら、協力内諾を受けていた方が異動になり、校長の方針等で協力がむつかしくなったため、予備調査が実施できなかった。また、新規に協力者を得ようとしても科研費採択が決定したのが4月下旬であり、各校の総合的な学習の時間の内容等がすでに決定された後であるため、なかなか協力者を得ることができなかった。小中高等学校で協力を得ようとする場合、この点が問題となる。また1)心理テストが内容に含まれていること、2)理科の学習指導要領に沿った内容では扱わない、物理・化学・生物・地学各領域の関連性の研究であること、3)最近、理科実験で事故などが多発し報道されていることなどの影響で、学校現場で十分な検討がなされていない活動に対し、生徒の安全を考慮し、積極的に導入しにくいことなども、多忙な学校現場の現状に加え、協力が得にくい原因であることが判明した。そこで平成29年度に向けて早めに協力を働き掛けているが、協力教員移動の決定時期及び新年度新クラスの生徒との話し合いによる総合的学習の時間のテーマ選定が行われる問題があり、思うように協力者が得られないのが本年度末の状況である。しかしながら、小学校では調査ができている。科学の祭典や理科研修講座などに訪れて、理科への意識が変化するのは小学生であり、中学生高校生は講座に参加する人も皆無な状況が全国的な状況であるので、小学生での研究をより深く行っていくのが得策である可能性もある。以上のように、小学校では順調に研究が進んでおり、現在までの進捗状況の区分が、「遅れている」という区分までではないと判断し、「やや遅れている」との自己点検による評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、順調に研究が進んでいる小学校について、さらに本調査を行っていく。FUMIEテストを行うとともに、個々の児童の変化を事例研究として行っていく。生物と化学の関連性を、小5「もののとけかた(食塩)」及び小6「ものの燃えかた」を小6「動物の体」で振り返る場面で追究するだけでなく、小6「水溶液の性質」において、食塩水とうすい塩酸、うすいアンモニア水、炭酸水を定性的に区別するだけでなく、小5「塩分濃度という目に見えないものを粒子モデルで考えたこと」と、小6「生物の体」という既習内容から、海と川の生物を利用し、食塩水の濃度について考えていく発想を引き出していきたい。また中学校と高等学校の協力者を得て、調査を行い遅れを取り戻していく。また私自身で単独で実施できる大学生対象の調査についても実施するべく調査対象を拡大(変更)していく。中学校については信州理科教育研究会等に相談し、協力者を探していく。また、平成29年度理科教育学会が福岡で開催されるので、学会に参加し、広く協力者を得るべく活動する。高等学校については、理科の科目選択性の問題があり、物理・化学・生物・地学領域の関連性を意識させる教材設定に関して難しい面があるが、逆に探究活動を重視しているスーパーサイエンスハイスクール(SSH)もあり、SSHを中心に協力を呼び掛けていく。 このように生物と化学の領域間関連性を意識させる教材については、比較的目星がついたが、生物と物理、生物と地学の領域間の関連性についても行っていく。具体的には、それぞれサイホンの原理、地球温暖化について取り上げることを計画している。
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Causes of Carryover |
当初予定していた調査のうち、小学校では調査を開始できたが、高等学校及び中学校での調査協力予定者が異動勤務先の状況変化(予定していた学年と違う学年担当になったり、校長の協力が得られない学校であったり)のため、調査が行えなかったため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は平成29年度請求額と合わせて、小学校での調査に加え、高等学校及び中学校での調査協力者との研究打ち合わせ、及び調査の実施に使用するとともに、調査で得られた成果の学会発表、論文発表に使用する計画である。
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