2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K00958
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
幅 良統 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (60377950)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 天体観測 / 恒星 / 星検出 / 音声変換 / 視覚障がい |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、天体観測で得られる視覚情報を音声情報へ変換することで、視覚に障がいを有する人々に天体観測を身近に感じてもらうことを目的としている。本年度は、撮像システムとしてモノクロCCDと焦点距離75mmのレンズを用いた場合の、星検出の最適化を目指した実験を行った。また、星の測光データを音声データに変換するプログラム作成を、当初の計画から前倒しにして実施した。 モノクロCCDはSmartek社製GCP1931Mであり、これに焦点距離75mmのレンズ(フジノンHF75SA-1)を使用した。CCDの露光時間、ゲイン、およびレンズのピントを様々に変化させ、同じ星空を撮像することで、測光精度と検出感度を検証した。検出感度は裸眼と同程度の6等星までの検出を目標とした。測光精度はピントのデフォーカス量に対して大きく変化しなかったが、検出感度に対してはセンシティブであったため、6等星の検出感度を確保するため、ほぼジャストピントで測定を行なった。一方、露光時間が0.1秒を超えると、2等星以下の星の測光値がCCDの飽和電荷量に達したため、測光精度を保つため露光時間を0.1秒とした。 上記のような観測で得られた星の測光値を音量データに変換し出力するプログラムを作成した。プログラムはC言語を使用し、音声関連のライブラリとしてALSAを利用した。音声信号は振幅と周波数をパラメータとする単純な三角関数を用いた。振幅は星の測光値を反映する。一方、CCDはモノクロであるため、星の色情報を得ることは出来ないが、その代わりに、CCD上での検出位置に応じて音程を変化させる (検出された星の仰角が高いほど高音となる) プログラムをつくり、それに応じて、三角関数の周波数を変化させた。 以上により、星の撮像から音声出力までが可能なシステムが構築できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の達成目標は、モノクロCCDを用いて、検出された星の測光精度および検出感度を測定することであった。同じ星野において、CCDの露光時間、ゲイン、およびレンズのピントを変化させ、最適なパラメータを検証することで、1等星から6等星までのダイナミックレンジで測光観測できることが確認できた。一方、当初は、上記と並行して、CCDの指向方向をモニタする姿勢センサを組み込む予定であったが、これは、これまで申請者が携わってきたスターカメラの姿勢モニタ技術を流用することが可能であることから、作業を後回しにし、逆に、これまで経験の乏しい、音声データに関するプログラムの開発を前倒しして行なう事とした。C言語とALSAライブラリを使用することで、星の測光値を音声の振幅に反映することで、明るさを音量で出力することが出来た。また、将来的には星の色を音程に反映することを予定しているが、現状のCCDはモノクロであるため、色情報を反映させる代わりに、星の検出位置を音程に反映させるプログラムを作成し、仰角の高い星ほど高音となるプログラムを構築することが出来た。 以上のように、当初の研究計画と順序が前後する部分があったが、全体としては順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、モノクロCCDを用いて、星検出から音声出力まで一連のシステム構築が出来た。これを基に、次年度以降は3色カラーCCDを用いることで、測光値だけでなく星の色情報を音程に反映させる観測システムの構築を目指す。色の違いが明確となるような音程設定をするため、低温・高温の基準星として、それぞれ、うしかい座の 1 等星アルクトゥルスと、しし座の 1 等星レグルスの観測を実施する。 上記と並行して、星の導入を容易にするための、姿勢モニタの組み込みを実施する。姿勢モニタとしては、スマートフォン等で一般的に用いられる9軸姿勢センサモジュール (MPU-9150)の使用を予定している。MPU-9150内の加速度計から重力方向、地磁気計から磁北方向を決定することで、地平座標系における指向方向が検出できる。この作業を星の撮像と同時に行なう事で、MPU-9150の姿勢決定精度を検証する。 以上のシステムが完成した段階で、実際に視覚に障がいを有する人々に天体観測を体験してもらい、改善点などを洗い出し、更なるシステムの洗練化を目指す。
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Causes of Carryover |
同じ星野を安定して観測するため、赤道儀を発注したが、納期が年度内に間に合わなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の赤道儀はすでに納品されており、これに「次年度使用額」分を充てる。よって、H29年度の請求額を圧迫することはなく、また、H29年度に発注を予定している物品に変更はないため、当初の計画に沿って経費を使用する。
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