2016 Fiscal Year Research-status Report
考える力を養成するための天文を中心とした理科教科単元横断型教員用教材の開発と検証
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16K00959
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
大山 政光 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (80332716)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 理科教育 / 教材開発 / 単元横断 / 天文 / 対流 |
Outline of Annual Research Achievements |
小学校、中学校の理科で学習する天文分野の「太陽表面」では対流が起きている。対流の考え方で利用する基本的な物理は、小学校や中学校理科の物理分野で学習を行う(数式を用いての考え方は高校や大学で行う)。そこで、対流をテーマとし、単元横断型の教材開発に向けて研究を行った。
まず、第一段階とし、将来教員を目指す学生の理解度実態調査を大学1校で実施した。これは、基本編と応用編の2つに分け実施した。基本編では、対流に関わる基本的な物理を問い、応用編では対流に関係する自然現象について問う問題で、選択式、記述式、図示形式の問題が含まれ、併せて聞き取り調査も実施した。記述式では、理由も含めて理科的な回答ができているかどうかで判断した。聞き取り調査では、選択式、記述式、図示形式の問の回答をもとに、説明不足な点に関して、表現不足によるものか理解度の不足によるものかを区別するために実施した。
基本編はすべて選択式で、3問中2問が正解率90パーセント程度であったが、1つが約50パーセント程度と極めて低いことが分かった。応用編では、たき火や水の対流など3問を問うた。水の対流の正解率は約50パーセント、たき火ではほとんどの学生が煙の上昇を図示したものの、その理由がわからないものも多数いた。これらの結果から、応用編の問題を考えるにあたって基礎的な物理の活用力が弱いこと、また、基礎的な物理の理解度そのものが不十分であることが示唆される。そこで、まず基礎的な理解が第一と考え、基礎的な物理に関する動画教材を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理科所属学生全員にアンケート調査を実施し、学生の理解度を調べた。アンケート調査は基礎的な問題と応用的な問題に分け、さらに、選択式、記述式、図示形式、聞き取り調査を含む内容にした。アンケート調査としては、回答に時間のかかる内容ではあったが、概ね順調に実施することができた。
アンケート調査を行う前の当初の予想では、基礎的な物理の理解はできており、それを活用する力が弱く、自然現象の理解力が弱いと推測していた。しかしながら、今回の調査結果から基礎的な物理の理解力も弱い可能性が出てきた。そのため、次年度の研究では、アンケートを全国規模に広げ実施することを決めた。これは、今回のアンケート調査が意味ある調査であることを示唆している。
今回の調査研究により、基礎的な物理の理解力を確かなものにするため、教員用の動画教材を作成した。今回作成した動画は、当初の予定通り次年度に活用し、検証・改訂を行う。以上のことから、今年度の研究は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の1大学による調査研究により、小学校、中学校理科で学習する基礎的な物理の理解度が低いことと、基礎的な物理を活用して自然現象を理解する力が弱い可能性が出てきた。そこで、次年度では、まず以下の3つの調査研究を行う。(1)今年度の調査研究の結果は調査実施大学1大学の問題であるのか、もしくは一般的に大学生は理科の基礎的な物理の理解度が弱いのかどうかを調べるため、大学数を増やし調査研究を行う。この調査では、地域的な偏りを減らすため、全国的に広げて大学数校に実施することとする。また、(2)小学校の理科に関係する内容も含まれているため、学生の調査対象を広げ、理科以外の学生にも調査を行う。(3)学習後の理解度の推移を調べるため、実際に小学生、中学生にも基礎的な物理の理解度調査を実施する予定である。
今年度作成した動画教材を、将来教員になる大学生や小学生、中学生に活用することで検証し、改善を行う。
さらに、次年度はスペクトルに注目し、単元横断型の教材を新たに開発する。天文分野では、遠く離れた天体の組成を調べるときにスペクトルを利用する。この物理原理は高校物理で学習する。また、化学の炎色反応でも同じ物理が用いられる。一方で、これらが共通原理であることを理解していない教員や学生も多い。そこで、これらの単元を横断し、スペクトルを軸とした教材の開発を行う。
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Causes of Carryover |
次年度はスペクトルをテーマとした単元横断型の教材を開発する。このスペクトルは、高校物理で学習する内容であり、岩石の元素特定や炎色反応とも関係している。また、天文分野では、天体の元素特定や皆既日食時に観測できるスペクトル線においても、この原理が活用される。
次年度はアメリカの広い範囲で皆既日食を観察することができる。このような機会は限られており、皆既日食の観察のための旅費として使用するため次年度分に請求している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の8月にアメリカで皆既日食を観察することができる。この旅費として使用する計画である。
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