2016 Fiscal Year Research-status Report
メタン発酵を利用した化学・生物領域が連携した化学教育教材の開発研究
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16K00970
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
大橋 淳史 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (50407136)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 化学教育 / 環境化学 / 科学教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,科学技術イノベーションを目指す人材育成につながる教材開発を計画した。具体的には,クリーンエネルギーを生成するメタン発酵に注目し,学校現場で導入しやすいメタン発酵測定教材の開発を計画した。今年度は,以下の点について検討した。 (1)発酵条件の確認:メタン発酵菌は大きく分けて,低温菌(20~30℃),中温菌(30~40℃),高温菌(50~55℃)と好熱菌がいることがわかっている。このうち,もっとも産業的に利用されているのは中温菌であり,低温菌は存在するが単離されていない。そこで,今年度は産業的に利用されている中温菌と高効率菌を単離すればイノベーションを起こすことが可能な低温菌について検討した。 (2)培養装置の設計:培養装置としてはペットボトル,ジャム瓶,バイアル瓶を用いた。ペットボトルは予備試験から酸素の透過が起こることが明らかになったため不適とした。ジャム瓶では,フタに穴を開け,ホースを固定した培養装置を試作し,培養を行ったが,密閉性について課題がある。バイアル瓶は初期コストが高いことが課題だが,安定して発酵を行うことができ,かつ耐圧性が高いことが特徴である。基礎研究にはもっとも適している。 (3)培養試験:メタン発酵菌群の栄養源のあるなしで比較した結果,栄養源なしでは,培養温度を高めても気体の発生が有意に遅くなることが明らかになった。栄養源としては,安価に大量に手に入れることができる,コーンスターチの副生物コーンスティプリカーを用いた。その結果,約2週間で,メタンが発生することをガスクロマトグラフィー(予算で購入)によって確認した。得られた気体はメタンと二酸化炭素の混合気体であるため,混合気体を注射筒に入れて,水酸化ナトリウム水溶液で二酸化炭素を中和した後,点火試験を行い,気体の燃焼を確認した。 これらの結果を日本化学会春季年会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
環境中のメタン発酵菌群を培養し,メタン/二酸化炭素の混合気体を得ることに成功した。家畜糞尿や土壌からメタンが得られることが明らかになり,かつ家畜糞尿よりも土壌菌が有意に活性であることが明らかになった。これによって教材として用いて,身近な環境の環境浄化菌を利用した探究活動を行うための準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は,常温下での培養を検討している。恒温槽を用いた培養は,安定かつ迅速にメタンの混合気体を得ることができる。しかしながら,学校現場で恒温槽を長期間にわたって利用することは難しいだろう。そこで,下水処理施設を利用してメタン発酵を行っている松山市中央浄化センターを調査して,常温下でのメタン発酵法について検討している。温度が低いため,反応速度は下がるが,学校では利用しやすいだろう。 また,培養装置の簡素化についても検討したい。ただし,メタンが漏れない容器を用いる必要があり,現在検討中である。
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Causes of Carryover |
旅費を自己資金で賄ったため,旅費が計上されなかった。ガスクロマトグラフィーについて各社を検討し,申請時と同等の性能で安価なモデルを購入したため,費用が大幅に削減された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験装置開発費,学会発表などの旅費などで利用の予定。
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Remarks |
本教材を中学生を対象にした理系人材育成事業国立研究開発法人科学技術振興機構「次世代科学者育成プログラム事業」で試行した。中学生による探究結果について,上記2回の発表が行われている。
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Research Products
(4 results)