2016 Fiscal Year Research-status Report
光と物質の相互作用を用いたミクロの世界の探究法と教材開発
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16K00980
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
松村 敬治 西南学院大学, 人間科学部, 教授 (40157350)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩野 正明 西南学院大学, 人間科学部, 教授 (80235499)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 理科教材開発 / マイクロ波分光の教材 / 赤外分光の教材 / 紫外可視分光の教材 / シャボン玉の干渉 / セッケン膜の干渉 / 膜厚測定 / X線回折の教材 |
Outline of Annual Research Achievements |
ここでは、最初に本研究の目的について簡単に述べ、そのあと研究実績の概要について述べる。 本研究の目的は、物質と光の相互作用を用いてミクロの世界を探究して物質の性質を解明する教材を開発し、理科教育の振興を図ることである。具体的には次の4つのことを目的としている。①分光法を用いて、原子・分子の性質を解明する教材を開発する。②光の干渉を用いたシャボン玉やセッケン膜の膜厚測定の教材化に関する研究を行う。③光のハンカチなどによる回折を用いてX線回折の原理を説明する教材を製作する。④本研究で製作した教材を地域社会へ向けた自然科学の啓蒙活動の中で公開し、理科教育の振興を図る。 続いて、現在までの研究実績の概要について述べる。①分光法を用いた教材の開発においては、現有のマイクロ波発振器と検出器を用いて10 GHz帯で作動する液体用のマイクロ波分光器を製作した。この装置を用いて、極性分子と無極性分子を区別することができた。②シャボン玉やセッケン膜の膜厚測定の教材化については、廉価版の測定装置の開発を進めている。具体的には、従来50万円かかっていた干渉スペクトルの光学系を懐中電灯で代用する方法を開発した。現在、5万円の分光器を用いて干渉スペクトルが測定できるかについて、継続して実験している。③X線回折の原理を説明する教材の製作では、2種類の布を用意して、布越しに豆電球の光を見るときに目視される回折パターンから、結晶配列の大きさと回折像の関係が類推できるような教材のプロトタイプを製作した。また、プリンタの印字出力をドット単位で制御して布の代用品になる格子を描画するプログラムソフトも開発中である。④地域社会へ向けた自然科学の啓蒙活動については、「チルドレンズミュージアム」で幼児や小・中学生や保護者を対象に体験学習を行い、理科教育の振興を図った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分光法を用いて原子・分子の性質を解明する教材に関しては、現有のマイクロ波発振器と検出器を用いて10 GHz帯で作動する液体用のマイクロ波分光器を製作した。この装置を用いて、極性分子と無極性分子を区別することができた。現在、廉価版の装置を製作するための検討を行っている。続いて、教材用の振動スペクトルの測定装置を製作するために、近赤外分光器を購入したが、現在、動作テスト中である。光源の赤外発光ダイオードと測定対象の分子の選定に関しては、水分子を中心に教材作りを行うことを決定した。一方、可視光・紫外線領域での原子・分子の分光については、現有のマルチチャンネル分光器を用いて、原子の発光を演示実験の教材として提供することができた。 シャボン玉やセッケン膜の膜厚測定の教材化については、廉価版の測定装置の開発を進めている。具体的には、従来50万円かかっていた干渉スペクトルの光学系を懐中電灯で代用する方法を開発した。現在、5万円の分光器を用いて干渉スペクトルが測定できるか、実験中である。近赤外分光器を用いて干渉スペクトルを測定することに関しては、検討中である。今後、測定光源から出る赤外線のシャボン玉の膜への影響も調べる予定である。 X線回折の原理を説明する教材の製作では、2種類の布を用意して、布越しに豆電球の光を見るときに目視される回折パターンから、結晶配列の大きさと回折像の関係が類推できるような教材を作成した。しかし、演示実験として提供する方法については検討中である。一方、プリンタの印字出力をドット単位で制御して布の代用になる格子を描画するプログラムソフトを開発中である。このソフトが完成すると、色々な回折像を紹介することが可能となる。 地域社会へ向けた自然科学の啓蒙活動については、「チルドレンズミュージアム」で幼児や小・中学生や保護者を対象に体験学習を行い、理科教育の振興を図った。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、平成28年度に得られた結果を基にして、次に示す内容の研究を行う。 液体のマイクロ波分光に関しては、廉価な誘電体発振器が10 GHz帯のマイクロ波源として使用できるかについて発振テストを行う。振動スペクトルに関しては、水と有機物の近赤外分光を行い、これらの分子が赤外発光ダイオードの光を吸収するかどうかを検査する。一方、可視光・紫外領域の分光では、本年度に購入する分光器を用いた演示実験の教材を作成する。 シャボン玉の膜厚測定法を高校物理の教材として提供するための基礎的研究として、シャボン玉の膜厚の均一性を確認する装置を開発する。具体的には、本年度に購入する広帯域マルチチャンネル分光器と現有の装置を用いて、シャボン玉の膜厚を数か所で同時測定するシステムを構築する。また、高校の教科書に則した実験法をセッケン膜に対して適用できるかについても検討する。これと並行して、1 ミクロン程度の膜厚を長時間キープできる薄膜の選定を行う。こうした薄膜が用意できれば、測定装置の改良や微調整に役立つ。また、廉価版の膜厚測定装置の開発に関しては、光源と分光器で合計100万円程度必要であったものを、5万円で済ませるためのシステムを開発する。 X線回折の原理を説明する教材の製作に関しては、前年度に作成した布の格子を用いて回折像を再現する教材を自然科学教室で公開して改良を加える。しかし、布の格子だけでは回折像の種類が限られるので、パソコンのプリンタの印字出力からも布の代用になる物を作成する。市販されている1200 dpiの解像度を持つレーザープリンタの印字出力をドット単位で制御できれば、高密度の格子を作ることも可能になるので、プリンタを制御するプログラムソフトの開発を進めて行く。 本年度に作成した教材は、地域社会を対象にした自然科学教室の中で公開して、更なる改良を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度は2,166円だけ予算が余ったが、この金額で購入する適切な研究用物品が無かったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度に余った2,166円は、次年度の研究用物品費に組み込んで、分光測定やソフト作成のための物品を購入する予定である。
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Research Products
(1 results)