2017 Fiscal Year Research-status Report
ソフトウエア無線環境を用いた基礎的概念の理解に重点をおいた教育実践の推進
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16K00985
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Research Institution | Ishikawa National College of Technology |
Principal Investigator |
山田 洋士 石川工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (10230492)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 無線伝送路 / インパルス応答測定 / 同期 / M系列 / 相関 / 近似逆システム推定 / 処理遅延 / 補正 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の計画では、発展的な学習を促す教材仕様の明確化と実現を目的としていた。また、昨年度までの研究実施においては、使用する無線信号用インタフェースの時間同期精度が十分でないことが、大きな制約事項となっていた。 そこで、発展的な学習を促す教材の例として、ソフトウェア無線実験環境を活用して、無線伝送路のインパルス応答測定を可能とすることを目指した。実用面での検討が進むmultiple-input and multiple-output(MIMO)通信方式においては、無線伝送路特性を定量的に把握することが必要である。しかし、高専や大学などの高等教育機関で現実的に準備が可能な設備を用いて無線伝送路特性の実測を行うことは、容易ではない。パソコン(PC)とソフトウェア無線(software-defined radio:SDR)装置を組み合わせた種類のソフトウェア無線実験環境(PC-SDR)により無線伝送路のインパルス応答特性を実現できれば、基礎的事項の習得に有効であるとともに、PC-SDRの利用範囲を拡大する事例となる。 PC-SDRでは、PC上でのソフトウェアによる信号処理及びPCとSDR装置間でのデータ伝送に伴う処理遅延がそれぞれ存在し、遅延時間が変動することも多い。処理遅延の影響を考慮せずに測定を行った場合には、測定結果には信頼性がない。この問題はPC-SDRを計測に使用する際の妨げとなっている。 報告者は、M系列を用いて送信用ベースバンド信号と復調信号の相互相関値のピークに基づき送受信信号間で時間的な同期を確立する手法の利用を検討した。音響系のインパルス応答測定で実績のあるTSP(time stretched pulse)信号を用いて920MHz帯で測定対象のインパルス応答算出を行い、その結果の検証を行った。その結果、正当な結果が得られたことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基礎的事項を重視しつつ発展的な学習を促す教材の実装例として、PC-SDR環境によるインパルス応答測定の実現を行った。PC-SDRの欠点を克服する実装例となっており、PC-SDR環境の柔軟性と相俟って、今後の展開が期待できる興味深い成果が得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点においては、多数回の測定を行った場合の安定性に課題がある。パソコンのI/Oデバイスの交換などにより、これを改善する方策を検討する。加えて、PC-SDR環境固有の問題として、ベースバンド信号のサンプリング周波数が測定周波数に対して相対的に小さいという性質がある。ハードウェアの処理負担の観点から、無線信号を復調する際には、周波数変換により相対的に低い周波数に周波数変換した上でサンプリングを行う場合が多い。 このことは、ベースバンド信号のサンプリングにおいて、1サンプリング周期の時間粒度が相対的に荒く見えることにつながる。1サンプリング周期未満の時間精度で相関のピーク位置を推定する手法の導入などを検討し、PC-SDR環境における制約を取り払う方策を検討したい。これらを実現することで、現在の無線信号処理を成り立たせている基礎的(かつ高度)な技術を把握する実験・演習を可能とすることを目指す。
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Causes of Carryover |
(理由) 研究計画に沿って予算を執行した結果、3,000円程度の次年度使用額が生じた。 (使用計画) 今回生じた次年度使用額は、平成29年度に計画している使用予定と併せ、研究目的を達成するための機材・消耗品・ソフトウェアライセンス費用などの一部に充当し、有効に利用する。
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Research Products
(2 results)