2016 Fiscal Year Research-status Report
ビーチコーミング学の提唱と漂着物を活用した自然史教育リテラシー
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16K01002
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
鈴木 明彦 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (20235930)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 海岸漂着物 / ビーチコーミング / 自然史教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、日本海側の余市浜中海岸を定点として設定し、毎月の試料採集を行った。本年は暖流系漂着物に乏しい年であったが、その原因を採集した漂着物の解析から特定した。特に冬季に対馬暖流の影響があまり強くないことが主要な原因と考えた。また、北海道の離島(奥尻・利尻・礼文)の打ち上げ貝類の整理・分析を継続して行っており、打ち上げ貝の多様性とそれをとりまく環境との関連を考察した。また、北方地域の北海道との比較検討から、奄美群島の打ち上げ貝類も整理・分析しており、南方地域での打ち上げ貝類の多様性も解析した。 毎年大学で開講される授業で海岸漂着物を取り上げ、漂着物を活用した体験型環境教育を実施した。具体的には大学で開講される「アカデミックスキル」、「地学実験」、「地学野外巡検」等の授業で海岸漂着物を取り上げ、それに基づいてレポートをまとめ、討論を行った。また、夏休みの免許更新講習において、海岸漂着物を取り上げ、各種レポートを提出させた。大学院生とともに小・中学校の理科分野をその対象とし、さらに北海道の日本海側の海浜砂の教材化を試みた。これは日本理科教育学会北海道支部研究大会で口頭発表した。 本年10月には、ビーチコーミングの入門書『北海道の海辺を歩くービーチコーミング学入門』(中西出版、120頁)を刊行した。本書は、北海道新聞、科学雑誌、学会HP等でも好意的に紹介された。また、本年度は第16回漂着物学会北海道大会の実行委員長を務め、学会の開催に尽力をつくした。北海道大会は、2016年10月22-23日に、北海道博物館(札幌市)で開催され、100名程度の参加があった。当日の様子はマスコミからも注目され、新聞やテレビ等でも紹介された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一連の研究成果は学会で発表し、順次学会誌に公表した。特に日本海沿岸における暖流系貝類の北上傾向は、海水温上昇や対馬暖流の強化を示唆する例として注目された。また、奄美群島(徳之島・奄美大島)の打ち上げ貝類の研究は、海洋生物地理的視点から評価され、新たなデータを提示したといえる。一方、ビーチコーミングの入門書『北海道の海辺を歩くービーチコーミング学入門』(中西出版、120頁)は、研究者のみならず一般市民にも好評で、現在も札幌市内の主要書店で販売されている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は以下の2点について、調査研究と成果公表を行なう。 (1)本年度は夏に奥尻島の野外調査(2泊3日)、秋に利尻・礼文島の野外調査(3泊4日)を行い、海岸の地形・地質の調査及び打ち上げ貝類の採集を重点的に行う。以前に採集した試料は断片的なので、調査地点を増やしてデータの精度を高めたい。また、前年度と同様に日本海側の余市浜中海岸の定点調査を行い、暖流系漂着物のモニタリングを継続する。そこでこれらに関わる調査旅費や消耗品を計上した。 (2)一連の研究成果を学会(国際学会AMBS2017や漂着物学会)で発表し、主要部分を論文として学会誌に投稿する。そのための学会旅費や論文別刷代金を計上した。
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Causes of Carryover |
消耗品代の残金(5016円)が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品代として使用する。
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Research Products
(13 results)