2016 Fiscal Year Research-status Report
日本の算数・数学教師の持つ潜在的授業観・潜在的授業力に関する研究
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16K01010
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
二宮 裕之 埼玉大学, 教育学部, 教授 (40335881)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相馬 一彦 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (40261367)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 数学教育 / 授業研究 / 授業力 / 潜在的授業力 / 日米比較研究 / 教材研究 / 研究授業 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度実施した「日米合同授業研究会」として、9月15日に埼玉大学附属中学校において研究授業を行なった。Brigham Young大学大学院より、現職の高校教諭でもあるMelville教諭を招聘し、Melville教諭自身が日本語で「統計」の授業を行なった。 国内研究グループによる授業研究会は、埼玉・旭川・静岡(山梨)の3地区において、各1回ずつ開催した。埼玉においては、上述の埼玉大附属中での授業研究会と、9月16日に寄居町立寄居中において堀江教諭・青木教諭の研究授業(文字式の利用、方程式の利用)を行なった。旭川においては、11月14日に旭川市立光陽中の渡辺教諭による研究授業(平行と合同)、並びに旭川市立東陽中の角地教諭による研究授業(反比例のグラフ)を行なった。また静岡(山梨)においては、1月11日に焼津市立大村中の福中教諭による研究授業(図形の計量)、1月12日に甲府市立北中の望月教諭による研究授業(図形の証明)を行なった。 これらの授業研究会は、日本の数学の授業において潜在化している「授業観・授業力」を顕在化させることを目的としている。日米合同授業研究会では、日本の教材のアメリカの数学科教師が教えることで、日米それぞれの視点から検討を進めた。また国内研究グループによる授業研究会では、日本国内の異なる地域の数学科教師がそれぞれ授業をすることで、地域に固有な潜在性を顕在化させることを試みた。これらの授業研究会での検討を通して、日本の数学の授業において潜在的に存在している事柄として『教材研究』をキーワードとすることが見出すことができた。 更に「教材研究」については、9月に来日したMelville教諭がアメリカの視点から、日本の数学科教師が教材研究をどのように捉えているかについて調査を進めている。氏の調査結果は、今年度中には成果として纏められる見通しである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本科研の研究分担者である相馬一彦教授(北海道教育大学旭川校)、國宗進名誉教授(静岡大学:静岡大学において科研資格喪失者とされたため、書類上は本科研の分担者ではないが、実質的には分担者の一人)とは、電子メール等により頻繁に連携を取りながら、研究を進めている。日本国内では、それぞれの地域(埼玉・旭川・静岡)で定期的に授業研究会を進めた。各地域の研究チーム(現職の中学校教諭を含む)がそれぞれの地域で行われる授業研に参加することで、授業研において「地域に独自の事柄」と「共通する事柄」を峻別することで、日本の「よい授業」の背後にある『潜在的な』要因を探ることを試みた。 一方、日米の連携研究では、ユタ州 Brigham Young大学のCorey准教授を中心としたチームとの、定期的な研究討議を進めてきた。平成28年度は、Brigham Young大学大学院のMatthew Melville教諭(修士課程院生)を日本に招聘し、特に『教材研究』について日本の先生方へのインタビューを行うことで、日本の先生方が暗黙のうちに捉えている「教材研究」の様相を探った。「教材研究」について厳密な定義は存在していないが、インタビューの結果から、① 日々の授業を進める際に行う日常的な教材研究、② 研究授業などの「イベント」的な授業を行なう際の準備としての教材研究、の2通りの捉えられ方がされていることが明らかになった。 Corey准教授とはインターネットを介して定期的に研究協議を進めている。基盤研究(C)(平成25-27年度)「算数・数学科における問題解決の授業の具現化に関する研究」(研究代表者:相馬一彦、研究分担者:國宗進・二宮裕之)の研究成果として明治図書から出版された『理論×実践で追究する! 数学の「よい授業」』をもとに、「よい授業」を視点として日米双方の視点から、日米双方の数学の授業を分析している。
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Strategy for Future Research Activity |
相馬科研での研究成果として出版された『理論×実践で追究する! 数学の「よい授業」』の英訳本を作成することが、平成29年度以降の研究の骨子の一つである。アメリカBrigham Young大学日本語学科のTraci Andreason講師を中心として、イギリスUniversity of Exeter数学教育講座のTaro Fujita講師、スゥエーデンUniversity of Gavle数学教育講座のYukiko Asami-Johansson講師らに翻訳を依頼し、平成28年度中に既に一部はでき上がっている。でき上った英訳に対して、それを直訳から意訳、さらには日本の数学教育の背景を共有していない諸外国の読者にも分かるような解説を付けた上で、日本の数学教育において「よい授業」とされるものの本質を明らかにしていきたい。 並行して、日米合同授業研究を進めることが、本科研におけるもう一つの柱である。平成28年度は、日本においてアメリカの教師が数学の授業を行ない、それを日本の研究者が分析した。今後、逆にアメリカにおいて日本の教師が数学の授業をすることを計画する。また、平成28年9月15日に行われた日米合同授業研究では、日本の教材(文部科学省全国学力・学習状況調査、授業アイデア例に記載されているもの)を使用して研究授業を行なったが、アメリカの教材を用いて日本で授業をすることや、日本の教材を用いてアメリカの学校で授業をすること、など、様々な形での授業研究を計画することで、日本の「よい授業」に潜在化している様々な要因と、そのような授業を進めるための授業力の中で、特に潜在化されたものを明らかにしていきたい。
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Causes of Carryover |
研究分担者の相馬教授(北海道教育大学旭川校)の研究グループのメンバーの中に、国内授業研究会との日程がどうしても調整できず、参加できなかった者がいたため、その分の旅費を次年度に繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
旭川グループの平成29年度の国内授業研究会への参加旅費として使用する。
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