2018 Fiscal Year Research-status Report
物理教育におけるアクティブ・ラーニングを実現する生徒・学生実験の総合的検討
Project/Area Number |
16K01015
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
村田 隆紀 京都教育大学, 教育学部, 名誉教授 (10027675)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 和成 京都教育大学, 教育学部, 教授 (90319377)
笠 潤平 香川大学, 教育学部, 教授 (80452663)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生徒実験 / アクティブ・ラーニング / 公開講座 / 相互作用型授業 / 物理教育研究 / 高大連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,生徒・学生の概念的理解を促し,知識の活用力を育むために,アクティブ・ラーニング(AL)を実現する生徒実験を中心とした物理授業プランの開発,提案を目指している。昨年度までに,高校物理の通常授業おいて実践可能なAL型の生徒実験授業を開発し,高校生9名(1校)を対象とした公開講座を通した検討を行ってきた。その結果,自己効力感および積極性などの自己評価は向上したものの,難易度の設定に課題があり,理解度の向上には至らなかった。 そこで,本年度も昨年度と同様の授業実践および評価・分析体制を設けて,8月に京都教育大学にて,力学・電気分野の公開講座を行った。ただし,異なる学年の高校生20名(5校)を募り,背景の異なる多様な生徒間の相互作用を積極的に促し,その効果を検証した。そのため,課題設定をより基本的で概念的なものとし,グループ・全体での討論を重視しつつ,段階的に理解を促す展開とした。 講座において生徒は,予想時のみならず,実験後の考察において活発な議論を行っていた。事後アンケートの結果,昨年度と同様に生徒の自己評価は高く,自由記述においても「他者と議論をして自ら考えることの意義」や「(正しい)結果だけでなく,結果から考えることの大切さ」など,本研究が目指す「生徒実験によるAL」が実現されていることが示唆された。一方で,初歩的,基本的な事柄についても討論が活発になってしまい,設定した課題を終えることができなかった。これは,募集する生徒の多様性を求めた結果,前提となる知識の定着度の幅が想定を超えて大きかったことが原因として挙げられた。 以上のように,最終年度の成果として提案するには,依然として不確定な課題が残された。したがって,後半期には,研究期間の延長申請を行い,これまで2回の公開講座で明らかになった成果と課題を基に,次年度夏に再々度,公開講座を開催するための準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画において最終年度となる本年度は,アクティブ・ラーニング(AL)を実現する生徒実験を中心とした物理授業プランの提案する予定であった。しかし,その提案の根拠となる公開講座に参加する高校生の募集において,1回目(前年度)は,受講する生徒数の不足により全体討論がうまく機能せず,2回目(本年度)は,複数の高校から募ることにより生徒数の不足を解消し,多様性を増したことにより討論が活性化したものの,活動の前提となる知識の理解の差も広がってしまい,結果として主要な課題に対する活動が不十分なものになった。その原因としては,ボランティアの高校生を対象とした公開講座の性格上,避けられない部分があるが,対象の生徒の見取り(概念的理解度,情意的側面)が不十分であったことが挙げられた。 以上の理由により,新しい物理授業プランの提案に至らず,年度内に目的を達成することが難しくなった。しかしながら,上記の2回の公開講座により,生徒実験を中心とした物理授業を開発し,実施することの意義は明らかになり,可能性も見えたことから,助成期間の延長を申請するに至った。 また,これらの成果を教育現場に還元するための現職教員を対象とした教員研修についても,授業プランが確定していない状況であるため,実施に至っていない。しかし,次年度に実施する公開講座と連動することにより,実践的,効果的なものにする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は研究期間を延長した年度であり,確実に目的が遂行できるように,次の4つの事項を中心に研究を遂行する予定である。 (1)今年度と同様の研究体制で,生徒実験授業を開発し,夏に公開講座を開催する。対象の生徒については,これまでの経緯をふまえ,協力校1校から可能な限り1クラス(30名)集団での参加を依頼する。 (2)全国の現職物理教員に公開講座の参観を呼びかけ,直後に検討会を開催し,成果と課題を共有するとともに,教員研修の場とする。 (3)次年度の実践を含む,これまでの3回の公開講座を経て開発してきた生徒実験授業をブラッシュアップし,研究会所属の研究協力者が各自の勤務校において実践し,その結果について,物理教育関係者に対して,一同に報告,議論するためのミニシンポジウムを開催する。 (4)以上の成果をまとめ,アクティブ・ラーニングを実現する生徒実験授業集として提案するとともに,学会および論文誌等にて発表し,広く周知をはかる。
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Causes of Carryover |
本年度は最終年度であるため,公開講座を中心としたこれまでの成果のまとめに向けて,同様の研究を行っている研究者と意見交流するための旅費や,成果に基づく教員研修会およびそれを広く周知するミニシンポジウムの開催費用を計上していた。 しかしながら,これまでの2回の公開講座を通して,本研究の意義および重要性を明らかにしたものの,ボランティアの高校生の実態把握の難しさから,本研究のねらいどおりの展開は実現できておらず,生徒実験を中心としたアクティブ・ラーニング型授業プランの提案ができるまでには至っていない。したがって,上記の成果に連動する教員研修会およびミニシンポジウムも開催できていないため,次年度使用額が生じた。 次年度の使用計画としては,これまでの課題をふまえて第3回の公開講座を開催し,上記の授業プランを確定するとともに,当初の計画にしたがい,教員研修会およびミニシンポジウムの開催費用,さらに授業プランを冊子化する費用に充てる予定である。
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