2017 Fiscal Year Research-status Report
中等科学教育における科学技術の評価スキル育成のカリキュラム開発と効果検証
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16K01017
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
石川 聡子 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (30314438)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 科学技術 / 評価 / カリキュラム開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
中等教育レベルの生徒が科学技術のありかたを評価する時の観点の設定や意思決定をおこなうなどのスキルを伸ばすための学習をおこなわせ,その効果を確認することが本研究の概要である。今回は中等レベルのなかでも高校生を対象にし,科学技術の事例として遺伝子組み換え技術とそれを応用した作物を取り上げる。遺伝子組み換え作物は、現在多くの国で人間の食物や家畜の飼料として多用されており、身近な食のあり方と深く関連していることや,遺伝子組み換え作物をめぐる経済的,社会的,倫理的側面を含んでいることから,科学技術のあり方の評価をおこなう時の観点が多角的であることなどから、高校生の学習に適していると考えている。遺伝子組み換え作物についての教材を開発して,実際に学習,評価させ,高校生が実際にどのような評価をおこなうことができるようになったかの評価スキルを分析することが本研究の目的である。 社会における科学技術のあり方をどのように評価するか、このことには、科学技術を受容する社会のあり方も関連があり、どの社会においても評価の観点や内容は一様ではない。学習者が中等教育レベルの生徒であっても同様である。そこで、本研究では、日本、フィリピン、アメリカ合衆国の高校生に同一(日本語版と英語版を用意)の教材によって遺伝子組み換え技術についての学習をおこなってもらい、学習前後による評価の観点や内容を比較分析することによって、学習による効果、社会による科学技術の評価の観点や内容の相違についても検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
科学技術の評価スキルを育成するためにカリキュラムを開発している。今回の研究では,科学技術の一例として遺伝子組み換え技術とそれを応用して作られている遺伝子組み換え作物を取り上げた。中等教育レベルでの科学教育で扱うカリキュラムであるので,高等学校の生徒が学習することを前提にした。遺伝子組み換え作物は多くの市民が毎日摂取する可能性が高いものであり,生徒にとって身近な科学技術の具体と言える。遺伝子組み換え技術によって改変された食物が提供されることについて,将来増加する人口のための食糧確保という持続可能性や,遺伝子を科学技術によって人工的に操作することの倫理,食の安全性,安価な食糧の安定的な供給などの観点から学習し,評価するための教材を開発し,実際に高校生に評価をおこなわせた。データ収集を今年度おこなった。また,前述の評価の観点には学習者個人や社会の価値観が背景にあることが考えられることから,日本の高校生と海外の高校生とで比較をおこなうことによって,日本の高校生に学習がより必要な内容や提供するべき情報があるかどうかを検討するために,海外(フィリピンおよびアメリカ合衆国)の高校生にもデータ収集をおこなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、日本、フィリピン、アメリカ合衆国の高校生の遺伝子組み換え技術についての評価のあり方について、前年度実施した調査によって得られたデータを比較分析する。遺伝子組み換え生物を科学技術の事例に取り上げ、これの倫理的、経済的、社会的側面などについての評価の観点や評価の方法について明らかにする。開発した教材を用いて学習する前後による評価スキルの変容、教材による評価スキルの伸長を考察する。また、教材が学習者の評価スキル育成に与える効果についても検討する。 また、社会における科学技術の評価の内容は、それぞれの社会の特徴(フィリピンならばキリスト教が根付いているので、遺伝子組み換え技術によって遺伝子を改変することについての倫理的な抵抗感が考えられる)によって一様ではないことが想定されるため、日本、フィリピン、アメリカ合衆国間での相違についても考察する。 以上のような分析をおこない,結果について学会などで公表する予定である。研究成果は日本国内とアジア圏の学会において発表する予定である。
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Causes of Carryover |
学会参加にかかる参加費や旅費について計画より2,386円の残額が生じたため、翌年度に参加する学会にかかる旅費に含めて使用する。
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Research Products
(1 results)