2019 Fiscal Year Research-status Report
理科教師の授業力量の高度化に関する研究ー省察的実践力の形成を支援する事例開発ー
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16K01019
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
山崎 敬人 広島大学, 教育学研究科, 教授 (40284145)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 教師教育 / 省察的実践 / 理科教師 / 授業力量 / 省察 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,教師の授業力量の中核をなす省察的実践力の形成に焦点をあて,多様な成長段階にある理科教師を対象として省察的実践とその実践力の実態・特徴を解明するとともに,理科の授業実践の事実や文脈,実践知などが埋めこまれた省察的実践の「事例」として再構成し,教師の省察的実践力の向上を目指す学びにおける「事例」活用の有効性について検討することを目的としている。 令和元年度は第4年次にあたり,前年度までと同様の調査を補充的に実施するとともに,教師の省察的実践とその実践力の実態や特徴について事例的に分析した。 その結果,ある教師(教職14年目)の事例では,当該の理科授業において子どもに身に付けさせたい能力として教師が重点化したものを育成するために,どのような授業構想や具体的な手立てが適切なのかを,既習の知識や能力の実態及び実際に展開しつつある授業での学びの姿を踏まえながら思考・判断し,実践化しようとしていることが確認できた。また,授業中の机間指導に際して,特定の子どもたちの思考や学びの行為について把握できたことがクラス全体での学びにとってもつ意味や価値を瞬時に吟味し判断するとともに,その実践化へと行為するケースも把握できた。 他方,別の教師(教職7年目)の事例では,転勤先の学校の子どもの実態が前任校とは異なる現実に直面し,教職経験を通して獲得してきた理科授業に関する指導方法の再考が不可欠になったものの,自身が理想とする指導方法や目指したい子どもたちの学びの姿を断念することはぜず,有用だと考える指導方法を段階的に子どもたちに獲得させていこうと取り組んでいることが把握できた。また,子どもの関心や問題意識に応じて教科書の順序とは異なる展開で授業を柔軟に再構成して実践したり,授業実践における個々の子どもの言動の把握を通して子どもの学びの可能性を新たに見いだしたりしていることも確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究者の他の業務の多忙さ等のため,現職教師を対象とした調査や分析が十分には実施できなかった。それに連動して,省察的実践の事例化のための分析・考察も予定通りには推進できておらず,当初の年次計画で予定していた,教師用の学習材として活用するための省察的実践の事例化を進めることができなかった。これらを踏まえて「遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度である令和2年度は,これまで収集し蓄積してきた調査データをもとに,省察的実践とその実践力の実態・特徴に関する分析・考察にさらに取り組む。そして,その成果をもとに教師用の学習材として活用していくための省察的実践の「事例」としての再構成と,学習材としての「事例」の活用の有効性について検討する。最後に,研究の総括を行う。
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Causes of Carryover |
(理由)主な理由としては,研究者の他の業務の多忙さ等のため,年度当初に計画していた調査が予定通りに実施できず,その結果として調査のための出張旅費及び音声データの文字化作業に係る経費(業者への委託経費や研究補助謝金経費)の執行が計画どおりに実施できなかったことがあげられる。また,教師用の学習材として活用していくための省察的実践の事例化,及び学習材としての事例の有効性の検討に関わる研究も十分に推進することができず,その結果としてそれに係る諸経費の執行が計画どおりに実施できなかったこともあげられる。 (使用計画)研究期間の1年間延長の申請が承認されたので,この1年間で調査の補充やデータ分析,教師用の学習材として活用していくための省察的実践の事例化等に関わる経費として適切に執行する
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