2016 Fiscal Year Research-status Report
持続可能性(Sustainability)に関するSTEM教材の開発と国際比較
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16K01031
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Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
坪田 幸政 桜美林大学, 自然科学系, 教授 (70406859)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 持続可能性 / STEM / 科学技術 / 国際比較 / 気候変動 / 人口 / 食糧 / エネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
再生可能エネルギー(風力と太陽光)の利用技術に関するSTEM教材を完成させた.風向の変化に合わせて風車の向きを変えるヨー制御と太陽の日周運動に合わせて太陽パネルの向きを変える太陽追尾プログラムをテーマとし,制御プログラムはレゴマインドストームEV3を用いた.大学生と高校生を対象とした実践からのフィードバックを踏まえて,「生徒用ガイド」と「教師用マニュアル」を作成した. 持続可能性の重要トピックである食糧生産(農業)と関連付けて,水耕栽培の教材化を実施した.水耕栽培は,植物への気候影響(日照不足)や炭素循環の実験的指導に利用できることがわかった.しかし,使用する種子の影響や成長の度合いの指標などの課題も明確となった.また,光のスペクトルの影響評価では,放射強度とスペクトルの影響を切り分けるために,放射強度の調節可能な光源が必要となることや,日射計の波長依存性なども調べる必要があることもわかった. また,水耕栽培の教材化では,大気環境を測定するための小型測器,生物の成長を監視するためのカメラ,データの集積と管理を行うための電子機器の利用可能性を調査した.その結果,市販の機器を利用して,最先端の科学技術(STEM)を体験的に学習できることが確認できた.一方,教育用CO2センサーやO2センサーは,長期間の測定に対応できないことや人間活動の影響が大きい植物の光合成によるCO2濃度の変動を感知することが難しいこともわかった. 循環型農業としてアクアポニックスを実践し,持続可能性に関するSTEM教材としての利用可能性を調査した.市販のアクアポニックスを利用して金魚とエビを飼育し,排泄物を肥料としてレタスとイチゴを栽培した.光源としては,青と赤のLEDを用いて四か月間実験した.アクアポニックスが,持続可能性とSTEMの重要性を指導する上で最適な教材であることが確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究計画に示した具体的な5項目の内の3項目については,研究業績の概要に記載した通り「当初の計画以上に進展している」と言える.しかし,残り2項目については「やや遅れている」状況となっているので,「おおむね順調に進展している」とした. 持続可能性に関する市民の認識調査のためのwebサイトは開設することができず,予備調査を実施することができなかった.そのため,持続可能性に関する市民の認識調査については,文献調査だけとなってしまった.また,表計算ソフト(エクセル)を用いた環境モデリングの教材を開発することに関しては,既存の教材の評価に留まり,独自教材を開発することができなかった. 光明理化学工業(株)と連携して取り組んでいるバイオマスに関する教材開発では,バイオ水素の実験教材に関して日本エネルギー環境教育学会で公表することができた.今後,バイオエタノールに関しても教材開発を進めていく予定である.また,日本科学教育学会では,「気候リテラシーに関する教材開発~水耕栽培~」として研究成果を発表することができた.また,水耕栽培の教材開発については,欧州気象学会の教育セッションで発表した. 持続可能性の理解では,変化する地球環境への理解も重要となる.そこで,過去100年間の東京における降水パターンの変化を調査し,日本気象学会と欧州気象学会で発表した.この調査は気象学的研究ではあるが,統計学の社会への利用をテーマとしたSTEM教材として発展させる予定である. 本研究の副次的な成果として,「STEM教育改善とアクティブラーニング」というテーマで大学教育学会において公表することができた.本研究は持続可能性を指導するためにSTEM的なアプローチを提案するものであるが,結果としてSTEM教育改善に寄与できることを示した.
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Strategy for Future Research Activity |
持続可能性に関する「気候変動」と「エネルギー」,「人口」の各課題に対する一般市民の認識を調査するためのwebサイトを構築し,調査を開始する.しかし,web調査は閲覧者のボランティアベースであるため,調査人数の確保が難しいことも予想される.そこで,紙ベースで大学や高等学校などでの調査も計画する.そして,引き続き海外のpublic perceptionに関する調査結果を分析する. 人工気象器を早急に導入し,市販の水耕栽培キットを用いて開発したSTEM教材の検証を行い,生徒用マニュアルと指導者用マニュアルを作成する.また,人工気象器は水耕栽培キットより,厳密な温度と光の管理ができるので,より高度なSTEM教材の開発を試みる.また,表計算ソフトを用いた環境モデリングの教材としては,フォレスターの「世界のモデル」の現代版作成を試みる.持続可能性を論じた「成長の限界」や環境史的な視点からの教材開発を考える. これまで教材開発に重点を置いてきたが,大学教育学会での発表を踏まえて,アクティブラーニングも含めた指導法についても配慮して研究を進めていく.例えば,同じ教材でも利用の仕方やリアルタイムなフィードバックにより,教育効果を高めることが期待される.そこで,STEMやアクティブラーニングを積極的に活用することで,持続可能性の理解増進を試みる. 普及と評価としては,日本学術振興会の「ひらめき☆ときめきサイエンス事業」により高校生のための環境科学講座を開催し,水耕栽培とアクアポニックスに関する教材を試験する.また,企業あるいは気象予報士会と連携した教員向けワークショップなどの企画を試みる.そして, 国内外の学会で成果を報告することで,積極的に外部評価を受けると共に開発したSTEM教材の普及を図る.
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Causes of Carryover |
単品としては高額な卓上人工気象器の購入に先立ち,スペックを確認するための予備実験に時間を要したため,導入を先送りした.一方,それほど高額ではないAquaponicsの導入を早めて予備調査を行った.そのため,その差額として次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
卓上人工気象器は,次年度に購入の予定である.
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[Presentation] Tokyo’s 100-year Rainfall Changes2016
Author(s)
Yukimasa Tsubota and Saki Machida
Organizer
The 16th EMS Annual Meeting & 11th European Conference on Applied Climatology
Place of Presentation
Statione Marittima Congress Centre Trieste, Italy
Year and Date
2016-09-16
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