2017 Fiscal Year Research-status Report
持続可能性(Sustainability)に関するSTEM教材の開発と国際比較
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16K01031
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Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
坪田 幸政 桜美林大学, 自然科学系, 教授 (70406859)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 持続可能性 / STEM / 科学技術 / 国際比較 / 気候変動 / 人口 / 食糧 / エネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
フォレスターの「世界のモデル」を表計算ソフト(エクセル)に移植することで,環境モデリングの教材を開発した.表計算ソフトに移植したことで,利用者にプログラムの知識が無くても定数や変数の初期値,経験関数の編集が可能となった.世界のモデルは,持続可能性の中心にある人間活動の影響の指導に有効であることがわかった.例えば,出生数と死亡数が,食糧と物的資源,混雑度,汚染などに関係することを明示的に示すことができる.また,世界のモデルは,出生率と死亡率で構成される単純な人口モデルを高度化した結果として示すことで,科学技術の基礎研究から応用研究への過程(プロセス)の指導に利用できることがわかった.そして,世界のモデルの結果を二十世紀末から現在の状況を比較し,アップデートするこは,環境モデリングの良い教材となることもわかった. 持続可能性に関する市民の認識調査の予備調査を行った.その結果,持続可能性で重要となる「将来」に対する時間スケールとしては,「10年後」の回答が多く,1000年以上が極めて少なかった.また,日本の食糧自給率,世界の食糧不足(飢餓),農業の環境負荷に対する理解の度合いが低いことが確認された.調査は,紙ベースのアンケートとGoogleフォームを用いて行った.Googleフォームを用いることで結果の処理は容易となるが,調査依頼の方法や回収率などに伴う結果の片寄り(バイアス)も認識できた.そして,調査用webを試作したが,ランダムに協力者を確保することの難しさも再確認できた.最終的な調査は,紙ベースとGoogleフォームを用いて行う事とした. これまでの研究成果の普及と評価を目的として,日本学術振興会のひらめき☆ときめきサイエンス事業の支援を受けて,再生可能エネルギーに関するSTEM教材の普及を目的として,高校生のための環境科学講座「持続可能な社会の構築と科学技術」を開催した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に示した具体的な5項目の内の3項目については,研究業績の概要に記載した通り「当初の計画以上に進展している」と言える.しかし,次に示す二項目については「やや遅れている」状況となっているので,「おおむね順調に進展している」とした. 水耕栽培とアクアポニックスの教材化に関して,導入した人工気象器を用いることで温度と色別(赤・緑・青)光量の厳密な管理が可能なった.しかし,これまで色別の放射強度で議論してきたが,光合成分野では光量子束密度を用いた評価が必要であることが判明した.そこで,これまでの色別実験の結果を新たに導入したライトアナライザーで再評価を行っている. 光明理化学工業(株)と連携してバイオエタノールの教材開発を進める予定となっていたが,本研究でも用いる同社製気体採取器の理科教育的研究が萌芽し,結果を日本理科教育学会で共著として発表した.また,本研究とも深く関わる水蒸気の測定に関する共同研究も始まった.そのため,バイオエタノールに関する教材開発が遅れている.また,企業との連携として,株式会社ナリカに対してレゴマインドストームEV3を用いたSTEM教材に関する教員研修講座の企画を提案したが,その実現には至っていない.一方,開発した「再生可能エネルギーの変動」は,平成30年7月15日に美浜町エネルギー環境教育体験館で開催される「きりばすカフェ2018」で利用する予定である. 日本とバングラデシュの初等教育における持続可能性の取り扱いを比較して,欧州気象学会の教育セッションで発表した.両国とも持続可能性に関わる人口,環境,防災を取り扱っているが,日本は現状把握(事実)が中心であるのに対して,バングラデシュでは行動指針を含むようなより包括的な内容となっていた.持続可能性に関する教材開発で,考慮すべき視点であることが確認できた.
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Strategy for Future Research Activity |
「持続可能性」に関する認識調査を継続する共に結果を世界の動向と比較・分析し,その結果をまとめて外部に向けて発信する.予備調査の結果を踏まえて,「持続可能性」に関する時間スケール,人口増加と食糧生産,エネルギー,水資源を中心に調査する. 水耕栽培と水産養殖を統合したアクアポニックスを利用した食物生産と炭素循環,窒素循環に関する教材を完成する.STEM教材としては,持続可能性と物質循環における科学技術の役割を体験的に学習できるようにする.そして,初等・中等教育における開発教材の利用可能性を考察する. 再生可能エネルギーにおける生物系資源としては,バイオエタノールとバイオ水素,バイオマスに加えて,植物色素を利用した色素増感太陽電池などを整理し,教材としての利用マニュアルを整備する.また,再生可能エネルギーにおける水力発電を水循環と関連付けることで,自然界におけるエネルギー循環に関する教材を整備する. 表計算ソフトを利用した環境モデリングを大学生を対象にして試用し,学習者からのフィードバックを参考にして完成する.テーマとしては,「気候変動」と「エネルギー」と「人口」を中心とする.試行では,学習者に対する事前・事後調査を実施することで,教材の効果測定を実施する. 外部機関と連携して高校生のための環境科学講座や指導者研修会を開催し,直接的・間接的に利用者からのフィードバックを取り入れ,開発教材の「生徒用ガイド」と「教師用マニュアル」を完成する.そして,国内外の学会で報告することで,積極的に外部評価を受けると共に開発するSTEM教材の普及を図り,「持続可能性」と「STEM教材」をキーワードとした人的ネットワークの構築を図る.最終的な研究成果を国際社会に向けて, 日本版 「地球の操作マニュアル (Earth Operator's manual)として公開する.
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Causes of Carryover |
今年度参加した国際会議の旅費が関連する学内研究費から支出することができたので,次年度の学会参加のための旅費として繰り越すこととした.
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