2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K01033
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
石井 恭子 玉川大学, 教育学部, 教授 (50467130)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 吉英 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 准教授 (30588570)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | active learning / 探究 / カリキュラム / 小中高一貫 / 実践コミュニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本において課題となっている児童生徒が主体となって科学的探究を行う授業の実現に向けて、大学と地域の小中高等学校理科教員の協働実践研究コミュニティ(Professional Learning Community)によってカリキュラム開発を行うものである。日本の理科教育においては、関心意欲の喚起や問題解決能力/探究力の育成が唱われながらも、現実には知識定着に留まっているという問題が指摘されている。物理教育においては、概念理解を目指したカリキュラム研究や評価研究が進んでいるが、教材教具の開発に留まることも多く、教員同士の実践研究が不可欠である。そこで、本研究では、既に構築されている福井県の小中高大理科教員の協働研究組織を生かした実践研究によるカリキュラム開発を目的とする。 平成28年度は、以下の3点について、研究を進めた。 ① 福井県内の小中高大の教員および学生による定期的な研究会、また授業研究会での議論を踏まえ、物理領域における小中高大それぞれの授業実態・困難性や工夫された授業実践について情報共有し、その共通性や各学年段階での躓きを調査した。 ② 小中高大協働実践研究コミュニティによる、Active Learning研究会 at Fukuiを中心に、児童生徒の概念形成を大切にした授業プランの開発に着手した。身近な材料を用いた教材開発の交流だけでなく、教材をどのように授業で扱うかという実践の交流が重要であることが共有された。また、国内の附属学校や先進校の公開授業研究会におけるカリキュラム構造、授業プラン、また児童・生徒の学びの姿を検討し、今後のカリキュラム開発に向けて情報を収集した。 ③ 開発した授業プランに基づき、小中高大における試行実践を始めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、以下の研究成果が得られた。 ① 福井大学、県教育研究所、小学校教育研究会理科部会、中学校教育研究会理科部会との連携により年間5回の研究会を行い、小中高大教員での情報交換を定期的に行った。電気の領域においては、小中高どの学年においても電流や電圧、電力などの概念理解が困難であることが認められた。中学校や高等学校での躓きや概念形成における実態を精査し、小学校における実体験、また数学・言語等の基本的学習が中学校以降の物理学習には重要であることが共有された。中学校において、小学校で既習と見なされる光の直進や、体積と重さの学習、単位あたり量等の数学との関連をていねいに学習する授業プランが開発され実践された。これらの研究成果を、物理教育誌に発表した。 ② 授業実践事例を情報交換することにより、若手を中心に児童生徒の理解を促進する授業プランの開発に着手した。小・中・高・大の協働研究チームにより、小・中学校共通に実践可能な教材として開発されたエネルギーハウス教材を活用して、各学年の授業プランを作成したり、個々の授業実践に基づいて新たな授業プランを作成したりする実践研究コミュニティが作られた。こうした実践研究の取り組みについて、WCPE(国際物理教育学会)で発表した。 ③ 国内の附属学校や先進校の公開授業研究会においては、学習指導要領や教科書に留まらず、児童生徒の関心意欲や、教科内容構造を重視した授業プランが提案されていた。今後のカリキュラム開発においては、児童生徒の学びに基づいた教科内容構造を検討していくことの必要性が示唆された。また、化学や地学等、理科全般にわたる議論もなされ、物理学分野の概念理解、およびカリキュラムを検討する上でも、教科の壁を越えた議論の重要性が明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、個々の学校における個々の事例の交流を行いつつ、共通の課題や探究的な授業づくりの方向性が明確になった。研究計画に基づき、今後は以下の研究を推進する。 Ⅰ 小中高等学校における物理授業を検討しつつ、共通した困難性と各学年段階での躓きをさらに検討する。また、国内外の探究の授業実践や探究型カリキュラム、大学と小中高等学校の連携研究の先進事例について調査する。可能な限り研究協力者の現職教員と共に視察調査を行い、カリキュラム開発へ指針を得るとともに授業のあり方への示唆を得る。研究協力者による試行実践や授業研究での議論をもとに、開発カリキュラムのさらなる課題や改善点を明らかにする。 Ⅱ 小中高の教員との協働研究組織を生かし、児童生徒の実態と学習指導要領の連続性を踏まえた概念理解と探究力育成の物理カリキュラムを開発する。開発メンバーによる試行実践や研究協力校、国内の研究推進校の授業実践に基づいて、改訂作業を繰り返し、評価・見直しを行う。試行カリキュラムを用いた実践を検討し、児童生徒への教育効果を含む評価に基づいて、開発したカリキュラムの見直しと改善を行う。国内外の研究成果を検討し、小中高大を通じた概念形成やカリキュラム評価研究を踏まえ、カリキュラムを改善して、さらなるカリキュラム開発を進める。開発カリキュラムを学会等で報告し評価・見直しを行う。 Ⅲ:開発した探究型物理カリキュラムの実践を、授業研究や実践報告の交流に基づいて検討し、評価・見直しを通じた開発カリキュラムおよび開発プロセスの検証を行う。開発カリキュラムを実践し、授業研究会や事例報告会等で検討、評価し、改良を加えるとともに開発カリキュラムの成果や課題を明らかにする。見出された課題を踏まえて、さらに実践を重ね、開発カリキュラムの実践を学会等で報告し、公開する。
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Causes of Carryover |
教材開発用備品や消耗品の購入が少なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、実験用消耗品や図書などを購入し、教材開発とカリキュラム開発を進める。また国内の学会で報告し、開発プログラムの評価と改訂を行う。
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Research Products
(6 results)