2016 Fiscal Year Research-status Report
複数高専と民間企業の連携によるロボットを活用した生産システム制御技術者の育成
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16K01047
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Research Institution | Numazu National College of Technology |
Principal Investigator |
三谷 祐一朗 沼津工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (00280389)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上 泰 明石工業高等専門学校, 電気情報工学科, 准教授 (20413809)
佐藤 拓 仙台高等専門学校, 電気システム工学科, 准教授 (30451545)
岩野 優樹 明石工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (90413799)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 日韓合同 / 制御技術教育キャンプ / 生産技術コンテスト / 高専機構・オムロン共同プロジェクト / グループワーク / 高機能制御機器 / 制振制御 / 3軸ロボット |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年7月25日から8月2日までの9日間において,「平成28年度日韓合同制御技術教育キャンプ」を実施した.オムロン(株)草津事業所にて開催し,参加者は,高専学生10名,韓国学生14名の,合計24名であった.制御技術教育キャンプは平成23年度より,高専機構がオムロン(株)と連携して,毎年夏季休業中に6年間継続して実施している,高専生の制御技術向上を目的とした教育活動である.それとは別に,韓国の大学生の夏季インターンシップを毎年オムロンが日本国内で受け入れており,制御技術教育キャンプと同レベルの制御教育を行っている.そこで平成28年度それらを同時期に開催し,初めて日韓合同で実施した. 実施内容は,オムロンの新型PLCを用いて3軸ロボットの動作を制御し,ピック&プレイス動作を基礎として,異なる重さのワークを重さ順に並び替えるという課題を,グループワークによって解決する,主としてシーケンス制御技術の向上を目指した教育である.高機能な画像センサやサーボドライバ,ファイバセンサなどを活用し,短時間で正確な動作が求められ,1週間という短期間ではあるが,学生たちは1日およそ10時間,毎日制御機器のプログラミングに取り組んだ. また,それとほぼ同時期である,平成28年8月23日にオムロン東京事業所にて「生産技術コンテスト」を開催した.これは,高度な制御機器を用いて,時間を要する課題を約3ヶ月間の長期にわたり検討し発表するスタイルの教育プロジェクトである.糸でぶら下げたサイコロを揺らさずに目的位置まで搬送する制振制御システム構築の課題に対し,グループワークにて取り組み,成果発表を実施した. 以上2件のプロジェクトに対し,実施結果をプロジェクトに携わった高専教員およびオムロン社員にて総括した.グローバルな人材育成に貢献したと高く評価された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
応募書類に記載した3つの研究目的,1)企業と連携した実践的教育の実施,2)複数高専の連携による教育活動の強化,3)オムロン・高専機構共同プロジェクトの日韓合同への拡張はすべて,初年度で実践できた.今後は,その実施方法や使用する制御機器を改善・改良し,教育効果を向上させることに注力する. 応募書類の研究計画・方法の[平成28年度]における1)「制振制御」については,平成28年度「生産技術コンテスト」にて計画通りの制御機器を構築して実施し,7高専,21名の学生が参加,うち6高専でPLCにアルゴリズムを実装し制振制御に成功した.制御機器の3軸ロボットも予定どおりオムロンから提供を受けて利用した.ただし,ライセンス費用の問題でMATLABの使用は実現できなかった.2)「非接触搬送」については,申請書の研究分担者ではないが,岐阜高専の小林教員との共同研究を開始し,制御系構築の目処が立った.既に所有している2軸ロボットでは,ロボットの剛性に問題があることが分かり,新たに小型3軸(直交XYZ軸)ロボットを設計し製作した.その垂直軸であるZ軸に電磁石を取付け,ワークを非接触で搬送するシステムを構築済である.なお,磁気浮上制御系を設計するにあたり,電磁石の吸引力に関する物理パラメータが必要である.それらのパラメータは通常,手作業で事前に同定実験を行い,得られたパラメータにより制御系を設計する.ここでは,変位センサ内包型電磁石を自作し,3軸ロボットに設置することで,事前の同定実験までも3軸ロボットが自律的に実施し,浮上に到ることを目指している.現在までにその可能性を確認できており,今後は,自律同定実験から浮上,搬送までのプログラムを作成する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
非接触搬送システムの試作を平成29年度の前期中に完成させ,その評価を行う.昨年度製作した小型3軸ロボットによって搬送を行うテストを行ったところ,センサ内包型電磁石の重さが約800gあり,駆動用ACモータの定格トルクを超えた.そこで,より小型の電磁石を設計し,再製作する.その電磁石により非接触搬送実験を試行し,研究分担者およびオムロン社員により,制御性能の評価を行う.その際,オムロンのPLCが持つ同期制御の機能を利用すれば,搬送時の高い振動抑制効果が得られることを実証する.また,高専生や高専の教職員,またはオムロン社員などの教育システムとしての使用方法を提案し,開発した非接触搬送システムを用いた教育効果も評価する. 2011年度から,オムロンは高専機構と連携し,制御教育プロジェクトを進めてきた.ところが,オムロン内部で組織の大規模な改革がなされ,高専を対象とした教育に関する予算は,平成30年度以降確保されなくなる可能性が高くなった.そこで平成28年度,沼津高専における校内予算(マスタープラン)250万円を獲得し,1軸ロボットの製作に必要な制御機器8セット分をそろえた.これにより,1次元的な水平方向のみの搬送は可能である.今年度,1軸ロボットを1台試作し,上述した小型電磁石を用いて非接触搬送を試行する.複数のワークを用いて搬送制御性能を評価し改良を加えた後,8セット製作し,平成30年度の前期に沼津高専にてPBL形式の本科の授業「システム制御工学基礎」にて教育効果を検証する.同時に,同年後期に実施予定の生産技術コンテストにおいて,PLCとMATLABとの連携やモーション制御の基礎を学ぶ機材として活用する. もし,オムロンが高専機構とのプロジェクトを継続する場合は,韓国オムロンと連絡を取り,韓国とのコンテスト合同開催の可能性を検討する予定である.
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Causes of Carryover |
1) 本プロジェクトが,高専機構とオムロンとが連携して行っていることから,研究代表者と研究分担者および研究協力者の打合せ旅費は,本研究予算ではなく,高専機構教育研究調査室およびオムロンから支出されたこと. 2) 研究分担者の役割である,機材の性能評価,制御系の構築,コンテスト運営のサポートにおいて,平成28年度はすべて,電子データファイルの共有やE-mail,Skypeを用いた情報交換にて行っており,予算の支出は,軽微な消耗品のみとなったこと. 3) 平成28年度は,オムロンからの制御機器の提供を受けており,プロジェクトを実施するためのハードウェアに関わる経費は,オムロンが負担したこと.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
以下に示す項目に関する使用を計画している:1) 平成29年度~平成30年度にかけての,プロジェクトの今後の運営に関する打合せ旅費.2) プロジェクト(制御技術教育キャンプ・生産技術コンテスト)の実施課題の検討を行うための消耗品の購入.3) 非接触搬送に関する制御機器の購入. オムロンからのプロジェクトへの予算的支援は,平成30年度以降は期待できない状況である.したがって,プロジェクトの運営方法や実施内容を大幅に変更せざるを得ない.平成29年度生産技術コンテストは,それまでの実施方法や時期・使用する制御機器を変更し,新たな体制で試行する.次年度使用額は主として,その準備に充てる.
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Research Products
(17 results)