2017 Fiscal Year Research-status Report
複数高専と民間企業の連携によるロボットを活用した生産システム制御技術者の育成
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16K01047
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Research Institution | Numazu National College of Technology |
Principal Investigator |
三谷 祐一朗 沼津工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (00280389)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上 泰 明石工業高等専門学校, 電気情報工学科, 准教授 (20413809)
佐藤 拓 仙台高等専門学校, 総合工学科, 准教授 (30451545)
岩野 優樹 明石工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (90413799)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 3軸ロボット / グループワーク / コンテスト / 企業連携プロジェクト / PLC / 課題解決 / 非接触搬送 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年8月20日から8月26日の7日間において,「オムロン株式会社・国立高等専門学校機構共同教育プロジェクト平成29度制御技術教育キャンプ」を実施した.明石工業高等専門学校にて開催し,13高専より33名の学生が参加した.本教育活動のさらなる拡大のために,プロジェクトメンバーからの参加者増加の強い意向があり,本年度の開催・宿泊場所を,これまでのオムロン・ホテルから高専・少年自然の家に変更した.その結果,平成23年度に制御技術教育キャンプを開始して以来,過去最多の参加者となった.実施内容は,ACサーボモータで駆動する直交3軸ロボットを制御して,「重さの異なるワークを3軸ロボットの可動範囲外へ運ぶシステムを構築する」という課題を解決するというもので,参加学生達は,センサを使った重さの分別システムや,弾性エネルギーを利用した機構を自作して,楽しみながら高度な制御装置に関する実践的な技術を習得した.また,1週間昼夜を問わず,異なる高専の学生同士によるグループワークにより,リーダーシップや計画性の大切さなど,実践社会にて重要なスキルを学んだ. それに続けて,夏休み終了後から年末にかけて,「オムロン・高専機構共同教育プロジェクト平成29年度PLC制御コンテスト」を実施した.平成28年度までは「生産技術コンテスト」という名称で,生産工場のラインをイメージした競技内容であったが,今回はPLCのみ学生に与え,「学校の困り事を解決」という課題で実施した.高専の1年生から専攻科生まで合計43名が参加し,こちらも平成26年に開始して以来,過去最多の参加となった.今年度より,高専機構共同教育プロジェクトの一環として実施し,参加した高専生の学習意欲の向上および制御スキルの習得が確認できた. なお,当初の計画にあった非接触搬送システムはほぼ完成しており,現在利用方法の検討中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
応募書類に記載した3つの研究目的,1)企業と連携した実践的教育の実施,2)複数高専の連携による教育活動の強化,3)オムロン・高専機構の共同プロジェクトの,海外への拡張のうち,1)2)の2項目は継続的に達成できた.3)については夏季休業時期の問題で,平成29年度は保留となった.ただし,昨年度合同開催した韓国からは継続的な実施の要望がきており,引き続き検討予定である. 研究計画にある「制振制御システム」に関しては,すでに平成28年度に完成し,制御技術教育キャンプにてその有効性を確認した.しかし,その際に利用した3軸ロボットは,アームの剛性が低く,非接触搬送に活用するのは困難であると判断し,同年後期に新たに3軸ロボットを設計し製作した.平成29年度,その新型3軸ロボットを使って非接触搬送システムを構築し,磁気浮上制御,搬送実験を試行した.磁気浮上における浮上位置と制御入力との関係のみを実測することで,安定な制御器を設計できることを実験的に検証済である.すなわち,不安定システムを安定化するという制御効果の有効性が極めて容易に確認できるシステムの構築に成功しており,制御理論という抽象的な工学の概念を,分かりやすく学べる教育が可能となったといえる.また,オムロンも本システムを高く評価しており,平成30年度も引き続き,非接触搬送に関する共同研究を実施予定である. なお,実施計画に明確に記載はしていなかったが,非接触搬送制御系の安定性や応答性について,上教員より新たな制御系設計法の提案があり,すでに実験的検証を開始している.また,平成28年度の研究で開発した3軸ロボットを原型として,オムロンは,新型のサーボモータを用いた新たな3軸ロボットを平成30年度の夏までに製作することを決定している.平成30年度の制御技術教育キャンプにて,新型3軸ロボットを活用し,その性能評価を行う予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度についても,オムロン・高専機構共同教育プロジェクトとして,「制御技術教育キャンプ」および「PLC制御コンテスト」の実施が決まっている.前者では,平成30年度にオムロンが新たに製作する3軸ロボットを活用し,ワークを,複雑な形状の経路を通過させる課題を検討中であり,そこへ電磁石を活用することを検討する.オムロンの意向および研究予算の関係で,非接触搬送を平成30年度に活用するのは厳しいが,ここで開発する新システムを用いた非接触搬送の制御性能を検証し,平成31年度での活用を検討する. 後者のプロジェクト,「PLC制御コンテスト」においては,平成29年度に全面的に方向性を修正し,生産システムだけではなく,より広範囲なシーケンス制御システムの構築へと,取り扱う内容を学生の興味に対応できるよう変更した.その結果,参加者が急増し,学生の構築した制御システムも,学生らしい多彩なアイディアが多く見受けられた.それを受けてオムロンは,最新のPLCおよびその周辺機器を30セット,高専機構に寄贈し,本プロジェクトのさらなる拡大を託した.そこで,その寄贈制御機器を全国高専に貸し出すシステムを構築し,すでに貸し出しを開始している.PLC制御コンテストのさらなる拡大が期待できる. またそれとは別に,昨年度予算で準備した,上記と同タイプのPLCを活用した1軸ロボットを平成29年度試作済である.平成30年度にそれを8セット製作し,非接触搬送制御システムを構築して,その有効性を検証する.共同教育プロジェクトメンバー間で情報共有し,その活用方法を検討する.平成31年度,5年生の選択科目や社会人対象の公開講座などで活用し,その有効性を確認する予定である.
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Causes of Carryover |
<次年度使用額が生じた理由>: 研究計画を作成した当初,制振や搬送制御を想定したコンテスト用の制御機器はすべて,オムロンが製作したものを借りて実施する予定であった.しかし,オムロン社内での方針転換がなされ,計画調書に記載したような,高度な完成された制御システムを高専に貸し出す代わりに,廉価版として新しくオムロンが発売した,新型で高機能なPLCとほぼ同等の機能を持ったPLCを30台,高専機構にコンテスト用として寄贈されることになった.その目的は,高専生がより幅広い自由なアイディアを発揮しやすくすることで,学習意欲や主体性の向上を狙ったものであり,調書における研究目的の[1][2]にうまく合致する.以上の方向転換により,当初予算の使用品目に変更が生じ,次年度使用額が生じた. <使用計画>: 平成29年度に方向転換したコンテストは,平成30年度も同様の実施形態とすることが決まっており,その実施のための予算は必要としていない.平成30年度は,計画調書に記載したとおり,卒業研究課題として自律制御システムの開発を実施する.成果発表は,オムロン社内での実施を計画するが,難しい場合は,各種学会での口頭発表や論文の原稿をオムロンへ送付することで,それに代える.
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Research Products
(7 results)