2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K01050
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
臼田 功美子 (佐藤功美子) 国立天文台, 天文情報センター, 特任専門員 (70455202)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 触ってわかる天文教材 / 国内外への情報発信 |
Outline of Annual Research Achievements |
国立天文台を代表する「すばる望遠鏡」の模型製作を行った。すばるのCG映像製作者の協力を仰ぎ、精密模型のプロトタイプを3Dプリンタで製作し、視覚障害者や特別支援学校(盲学校)の理科教員の意見を求めた。理科教員からは「生徒が理解しやすいように、鏡などの触ってもらいたい部分のみを精密に製作し、その他の部分は単純化した方がよい。」というアドバイスを得た。その一方で、「触る文化」のエキスパートである視覚障害者からは「精密に作られているので、触っていて楽しい。このままで良い。」という意見を得た。そこで、精密バージョンと単純化バージョンの2体を製作することに決め、すばる望遠鏡の構造に詳しい職員のアドバイスを得ながら、単純化バージョンを製作した。さらに、別の視覚障害者からは、望遠鏡に関する質問を沢山受け、「模型を触ることによって、すばる望遠鏡の話がいろいろ聞けて楽しかった。」というコメントを得て、コミュニケーションが本質であることを認識した。ウェブサイトを作成する際には、3Dプリンタ用ファイルを提示するだけでなく、望遠鏡に関する情報などを加えることが重要であると考えている。 国内外のネットワーク強化にも力をいれた。5月にコロンビアで開催されたCommunicating Astronomy with the Public研究会では、同様の活動・研究を行っているメンバーと一緒に「ユニバーサルデザイン天文」のワークショップを行い、好評を得て、最終日にアンコール・ワークショップを行った。9月に国立天文台で開催された第三回ユニバーサルデザイン天文教育研究会や、10月にコロンビアで開催されたAstronomy beyond Common Senses研究会では、3D模型を見せながら本研究の紹介を行った。これらの研究会を通じて、同様の取り組みを行っている国内外の研究者との人脈を拡げた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
望遠鏡模型の製作や、国内外での発表・人脈作りは順調に進んだ(「研究実績の概要」参照)。しかし、以下の2点については、当初予期していなかった。 ①当初は、すばる望遠鏡とそれと異なる望遠鏡の模型2体の開発を考えていたが、複数の方に意見を求めた結果、精度の異なるすばる望遠鏡の模型を2種類作る方が意味があると判断し、そのように変更した。今後の模型作りにおいても、(望遠鏡や天体の)種類を増やすより、1つ1つの模型とじっくり取り組み、必要に応じて同一の望遠鏡や天体において、複数の模型を作る方針に変更したいと考えている。 ②特別支援学校での出前授業を行うことができなかった。(ア)9月に国立天文台で開催された、第三回ユニバーサルデザイン天文教育研究会の世話人を務め、中核的な役割を果たし、研究会の準備に大幅な時間を費やしたのが原因である。国内と国外からの参加者をつなぐため、講演スライドの和訳・英訳や、英語講演の翻訳(和訳)のほとんどを担当したため、その間は模型製作自体に時間を割くことができず、製作スケジュールが遅れた。その反面、研究会を通じて多くの研究者との人脈を強化できたこと、また、この研究会での成果を10月にコロンビアで開催された研究会で発表できたことは、国内外への情報発信という点で大きな進展となった。(コロンビアでの研究会では、私のみ口頭発表を2件行った。)(イ)理科教員からのリクエスト (1) 学校で教える単元(光の反射・屈折・吸収など)とのつながりを持たせてほしい、(2) 授業では標本の触り方などを教えているので、できれば1人に1体ずつ模型がほしい、について、検討する必要があったためである。特に2点目については、模型を1体製作するのに50時間程度必要で、少人数とはいえ、生徒1人に1体ずつ提供するのが大変難しく、今年度解決すべき課題となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度開発した、すばる望遠鏡の模型2体について、より多くの視覚障害者の意見を求める予定である。さらに、すばる望遠鏡の広報担当者と協力しながら、望遠鏡模型を通じて何を伝えたいかをもう一度見直し、模型を完成させる。完成後には、当初の予定通り、3Dプリンタ用ファイルをダウンロードできるウェブサイトを日本語と英語でたちあげる。その際、単にファイルを提示するだけでなく、サイトを訪問した天文普及関係者や教員が望遠鏡に親しみを感じ、解説できるような説明を加える。ウェブサイトがたちあがった段階で、Communicating Astronomy with the Public Journalなどへ、報告を投稿する。 出前授業については、上記「現在までの進捗状況」に記した課題を解決する必要がある。天文の単元は学年末に教えられるが、それまでに担当教員と相談を行いながら、出前授業実現に向けて準備を行う予定である。
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Research Products
(6 results)