2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K01050
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
臼田 功美子 (佐藤功美子) 国立天文台, 天文情報センター, 特任専門員 (70455202)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 触って理解できる天文教材の開発 / 3Dプリンタを使った模型製作 / 国内外ネットワークの強化 |
Outline of Annual Research Achievements |
東京都高田馬場にある社会福祉法人日本点字図書館(以下、日点)別館の「ふれる博物館」にて、2018年8月17日から12月22日まで第2回企画展「宇宙をさわる」が開催され、企画段階から展示内容、教材提供、解説指導など全面的に協力した。本プロジェクトで開発した「すばる望遠鏡」3D模型も提供し、展示全体の流れの中での効果的な説明方法をさぐった。企画展は週3回、合計54日間の開催で、視覚の有無を問わず545人が来館した。 前年度、視覚障害者を対象にすばる望遠鏡3D模型の解説を行った際、相補的な触図の必要性を感じた。そこで、立体コピー作成機とその印刷用紙を購入し、視覚障害者のアドバイスを得て、単純な屈折望遠鏡と反射望遠鏡の断面図と、すばる望遠鏡の断面図の、2種類の2次元触図を作成した。日本点字図書館(2018年8月)や東京都主催「晴眼者とともに学ぶ視覚障害者教養講座」(同11月)、川崎市視覚障害者情報文化センター(2019年1月)での講演会において、2次元触図を配布したところ、望遠鏡の構造について、参加者の理解がより深まった感触を得た。 このように今年度は、日点での企画展を通じて国内ネットワークを強化できた。視覚障害者向け雑誌への執筆を依頼されるなどの反響があった。国際的には、今年度から2019年にかけて、国際天文学連合(IAU)が「Inspiring Stars」という触る教材の巡回展を行っており、初回が2018年8月にウィーンで行われた。すばる望遠鏡の3D模型も提供し、多くの参加者が触った。 模型開発としては、国立天文台が北米・ヨーロッパ等との国際協力により建設した電波干渉計「アルマ望遠鏡」のアンテナ作成にとりかかった。アルマ望遠鏡で使用しているアンテナ4種類(日7m、日・米・欧12m)のうち、日本の7mアンテナの試作品が完成し、日本の12mアンテナの完成に向けて取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内外のネットワーク強化は極めて順調に進んだ。国内では、日本点字図書館スタッフや、企画展を共催した「手と目でみる教材ライブラリー」の専門家が作成した展示方法から学んだ点を、今後の教材作成に活かしたい。また、企画展参加者からは、視覚障害者メーリングリストなどを通じて感想がよせられ、今後の教材開発にあたり、意見を求めることができる知り合いが増えた。国際的には、前述のInspiring Stars関係者や、2019年11月に国立天文台三鷹で開催されるIAUシンポジウム世話人と議論を進めた(臼田-佐藤はシンポジウム世話人コアメンバーの一人である)。シンポジウムは教材作りに特化した内容ではないが、世話人の多くは各国で教材開発・普及に取り組んでおり、密な情報交換が重要だと考えている。昨年度完成できなかった本プロジェクトの英語サイトも作成し、国際ネットワークを通じて宣伝を行った。 教材開発も、おおむね順調に進んだ。2次元の触図を作成することができたし、アルマ望遠鏡アンテナの試作品を1体完成させた。しかし、3D模型の作成には時間を要することから、2体目の作成は、途中の段階で年度末を迎えた。 今年度の推進方策に掲げていながら遂行できなかったのが、成果報告を論文にまとめて投稿することである。日本点字図書館での企画展などを通じたネットワーク強化を優先させたためであるが、2019年度の最優先事項として取り組む必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進行中の、アルマ望遠鏡関連の模型を完成させる。望遠鏡に加えて天体模型作成も試みた上で、触って理解できる天文教材のノウハウをまとめ、天文学コミュニケーションの査読雑誌「Communicating Astronomy with the Public Journal」に投稿する。論文投稿は、2018年度の推進方策に掲げていながら、ネットワーク強化を優先させたために遂行できなかった、最優先事項である。 国内外のネットワーク強化も引き続き行う。日本点字図書館の企画展などを通じて視覚障害者や、天文教育普及研究者との意見交換から、新たに浮かびかがった課題がでてきた。特に、開発した模型の広め方については、2019年度だけで解決できる問題ではないが、最終年度として、新たな課題の洗い出しとその解決のための展望をまとめる。国際ネットワークについては、Inspiring Stars関係者やIAUシンポジウム世話人との議論を進める。
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Research Products
(8 results)