2016 Fiscal Year Research-status Report
博物館に保管されたボーリング標本で展開する大都市地域における地学・防災総合教育
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16K01055
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Research Institution | Osaka Museum of Natural History |
Principal Investigator |
石井 陽子 大阪市立自然史博物館, 学芸課, 学芸員 (90300970)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 博学連携 / ボーリング標本 / 地学教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
博物館所蔵のボーリングデータのデジタル化、及び標本調査を行い、大阪平野地下に分布する第四系の層序と地質構造を検討した。また、ボーリングデータとの比較に必要な大阪平野周辺の第四系の野外調査も行った。これらの成果にもとづき、博物館普及行事の実施、特別展「氷河時代-化石でたどる日本の気候変動-」の展示作成、小中学校を対象としたボーリング標本を用いた学校向け貸し出し教材の開発・運用を行った。貸し出し教材を使用した教員からの聞き取りに加え、大学の教員養成課程の実習にボーリング標本を提供し、ボーリング標本観察の指導で特に注意すべき点を挙げて頂いた。これにより次年度以降の貸し出し教材の改良が可能になった。また、中学校の理科教員と協力して中学校向けの指導案を作成した。 第49回全国小学校理科教育研究大阪大会において公開授業を行った大阪市立中大江小学校のボーリング標本の調査、及び周辺地域の地質データの解析を事前に行い、教員に情報を提供した。この研究大会にブース出展し、ボーリング標本を中心とした学校向け貸し出し教材について紹介した。 全国科学博物館協議会第24回研究発表大会(京都)で、ボーリング標本を中心とした貸し出し教材の開発・運用について報告を行い、科学系博物館職員と意見交換を行った。また、第28回全国地学教育研究大会・日本地学教育学会第70回全国大会(徳島市)において、小学校を対象とした地学教育支援の実践について報告し、さまざまな校種の教員や博物館関係者と意見交流を行った。日本地質学会第123年学術大会(東京・桜上水)において、地学教育についての情報収集、他地域の第四系の研究の動向についての情報収集、関東平野の第四系の比較試料の採取を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成28年度は所属の特別展「氷河時代-化石でたどる日本の気候変動-」の主担当となり、展示開始までは準備作業や広報、展示期間中は展示の運営や関連普及行事の実施、教員向け研修での特別展活用、展示終了後は資料返却や総括などの作業に追われ、当初に想定していたように時間と労力をかけて課題研究に取り組むことができなかった。このため、当初計画していた小中学校の理科・社会科の学習内容の分析、火山灰分析や貝化石の分析などが大幅に遅れてしまった。一方で、毎年継続的に行っているボーリング標本の貸し出し教材としての運用や、教材を活用した教員への聞き取りなどの最低限の作業を行うことができた。また、平成27年度までは、連携ができていたのが小学校の教員に限られていたが、平成28年度には中学校の教員や大学の教員養成課程の教員との連携の見通しができた。職務との兼ね合いで課題研究が大幅に遅れてしまったが、特別展の展示作成の過程で、課題研究のために必要な新生代第四紀の環境変遷や大阪地域の地質学的研究の研究史について、整理してまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、平成28年度のような特別展の主担当などの責任が重くかつ時間や労力をかける必要のある職務分担がないため、当初想定していた程度には時間と労力を課題研究に費やすことが可能である。しかしながら、前年度に生じた課題研究の大幅な遅れを取り戻すには、自身の努力だけでは不十分と考える。そのため、同じ職場の研究者達に積極的に助言をもらう、分析作業を分担してもらうなどの工夫が必要である。さらに、貸し出し教材を実際に利用した教員や協力して教材開発をした教員など、平成28年度までに得ることのできた協力者にも積極的に働きかけて、教材開発を行う上で必要な助言をしてもらう、実践例を増やして教育効果の検証を行うなどの努力が必要である。
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Causes of Carryover |
所属の特別展の主担当となり、年度の大半の期間において、課題研究に当初予定していたように時間と労力を費やして臨むことができず、研究に遅れが生じたため次年度使用額が生じた。その詳細は、以下のとおりである。 当初計画していた小中学校の理科・社会科の学習内容の分析に着手できず、分析対象とする教科書類や副読本の選定と購入ができなかった。また、火山灰分析や貝化石の分析の作業をほとんど行うことができず、消耗品等の購入の必要が生じなかった。また、貝化石分析で使う試料の選定がほとんどできなかったため、作業の補助者の雇用ができなかった。年代測定を委託するために必要な試料の選定と確保を行うことができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、平成28年度に比べて特別展の主担当などの責任が重くかつ時間や労力をかける必要のある職務分担がないため、当初想定していた程度には時間と労力を課題研究に費やすことが可能となる。研究計画を見直し、平成28年度に予定していたが実際には行う事のできなかった研究内容を、平成29年度の前半のうちに行うようにする。これにより必要な消耗品の購入や作業の補助者の雇用を早期のうちに行う。平成29年度の前半のうちに行う作業の内容は、小中学校の理科・社会科の学習内容の分析作業、火山灰・貝化石等の分析試料の選定と分析作業、年代測定を委託するための試料の選定と確保である。
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Research Products
(7 results)