2017 Fiscal Year Research-status Report
読み書きの困難に対する学習支援プログラムと遠隔指導に関する研究
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16K01071
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
雲井 未歓 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (70381150)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 学習障害 / 読み書き / 語彙判断課題 / 早期予防的支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、読み書きに困難のある児童のための、学習支援プログラムの開発と効果検証を目的とした。前年度、単語の読みの速さの評価方法として、語彙判断課題を援用した平仮名の単語読みテストを開発し有効性を示した。今年度はこれを発展させ、平仮名単語を清音と特殊音節とに分けて調査するとともに、漢字の読みの達成との関連を検討した。小学生564名を対象に行った調査の結果、清音の単語が良好でも、特殊音節での成績低下が大きい児童では、漢字単語の読みに低成績が生じる可能性が高まることが明らかになった。漢字単語についても同様の語彙判断課題を作成し、平仮名との関連を検討した。その結果、漢字での低成績傾向(平均‐1SD以下)の生起は、平仮名が同水準の場合に著しく高まることが、3年生と4年生で明らかとなった。それより、漢字での低成績が生じる前の2・3学年の段階で、平仮名の早期予防的支援の必要性が高いことを指摘した。この結果に基づき、平仮名単語の読みの学習支援教材を、語彙判断課題を中心とするプリントワークとして整備した。それにより早期予防的支援を通常学級で行って効果を測定する検討の実施体制を整えた。 読み困難のある児童生徒に対する支援については、平仮名の学習初期から著しい困難のある小学1年生の事例を対象に、音韻操作課題を中心とした指導の効果を確かめた。また、高学年から中学生の5事例において、語彙判断課題に基づく指導が、文章読解に及ぼす効果を認めた。文中の語句による語彙判断課題により、速やかな単語読みが達成されることで、文章の意味内容の把握や推論に、より多くの認知資源を充当できるようになることが考えられた。これらの結果に基づき、ひらがなの導入段階から文章の読解にいたる各段階で、効果を認める支援教材を配列できた。それにより、児童生徒の実態に応じて選択できる学習支援プログラムの整備と検証が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
語彙判断テストによる読みの速さの評価を集団的に行えるようにしたことと、通常の学級における一斉指導で利用できる平仮名単語の促進課題を作成できたことは、当初計画に沿うものであり順調と判断した。促進課題の有効性の検討に関しては、反復的な介入と前後での効果測定を計画したが、協力校にとっての有益性を考慮すると、年度途中での開始よりも新年度当初に開始する方が望ましいと判断され、実施を先送りした。この点については次年度5月時点より開始できる体制をすでに整えており、全体の進捗に大きな影響はないと判断した。個別学習支援プログラムの検討については、平仮名の導入段階から文章の読解にいたる各段階の支援教材を整理できた。いずれもパソコンで利用できる教材群として配列し、児童生徒の実態に応じた選択と指導経過の記録を可能にした。この点はおおむね当初計画に沿った進捗状況にあると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、学習支援プログラム(教材群)の完成とその遠隔利用に関する検討を計画している。教材群に関しては、対象児のより多様な実態に対応するため、内容を文章の読解にまで広げることとした。そのため、この点の評価方法や促進要因について検討を加える。文章の読解課題は、設問形式が多様なため一定の観点での評価がなされにくい。この点について、読解に関わる推論過程についての理論モデルに基づき、直接記述された内容の把握、言い換え等によって表象される内容の把握、局所における内容把握、全体的な内容把握の4つの観点での正誤判断課題を作成する。それにより、異なる文章に対して一貫した評価を行えるようにし、困難の所在を踏まえた支援と効果の検討を可能にする。遠隔利用に関しては、2台のパソコン間で通信を行い、指導者が課題の呈示を遠隔で行えるようにするための基本的な機能を準備している。遠隔指導には地理的事情による不利を補う効果が期待できる一方、対面指導と比べて制約が多いことが予想される。そこで、定期的に来談される児童を対象に、通信による別室での指導を実施し、効果を確かめる予備的検討を行う。それにより、対面指導と類似の効果を持つ指導内容を明らかにし、遠隔指導への適用の条件の検討を行うこととした。
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Research Products
(4 results)