2016 Fiscal Year Research-status Report
学修力を深化させ,先進的学習意欲を惹起する,数理の「深い学習」の研究
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16K01082
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
谷口 進一 金沢工業大学, 基礎教育部, 教授 (50440483)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山岡 英孝 金沢工業大学, 基礎教育部, 講師 (10443045)
木村 竜也 金沢工業大学, 基礎教育部, 准教授 (20410293)
中村 晃 金沢工業大学, 基礎教育部, 教授 (60387355)
高 香滋 金沢工業大学, 基礎教育部, 准教授 (90175422)
谷口 哲也 金沢工業大学, 基礎教育部, 講師 (90625500)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 数理の深い学習 / ルーブリック評価 / 深い学習態度尺度 / 因子分析 / 共分散構造分析 / 自己評定 / 潜在因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
学内に,当初のメンバーで『学修力を深化させ,先進的学習意欲を惹起する,数理の「深い学習」の研究』の研究チームを立ち上げた。 このメンバーにより,文献,先行研究,教育現場の調査を行い,これまで明確にされてこなかった数理における深い学習の定義を決定した。定義では,深い学習のプロセスを,①概念形成の理解を重視する熟慮的思考をともなう学習プロセス,②既習の内容を振り返り,修正を加え,より精緻な状態への 変更を可能とする内省的学習プロセス,③既習の学習内容をさらに進んだ内容(専門性の高い分野 など)へ応用できるように再構築する俯瞰的学習プロセス,④問題解決の文脈にそって,多角的解決を考察する 批判的思考をともなう学習プロセスの4つに定め,主体的・意識的であり,プランニング,モニタリングなどを行うことによって自己によるコントロールが可能な学習プロセスについて着目している。 この定義に基づき,深い学習の到達度に対するベンチマークを決定し,これに基づき,数学,理科系の授業において,深い学習促進のための教授・学習方略のトライアルを行い,研究チームにより作成したルーブリックを用いて検証を行った。その結果,ほとんどの科目において授業開始時よりも授業終了時における深い学習に対する自己評定が高まっていた。 また,全学初年次生対象の質問紙法によるアンケート調査を実施し,因子分析,共分散構造分析などの多変量解析の統計的手法を用い,詳細な分析を行い,深い学習態度に関する尺度を構成することができた。この分析により,深い学習の潜在因子として「数理の探求心」「論理的思考への自覚」「一般的探求心」「数理に関する比較・検討への関心」「ヒューリスティックの抑制」の5つを抽出することができた。重要な知見として,初期の予想とは異なり,ヒューリスティックの抑制は深い学習態度に関して,負の影響を与えていることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究進行状況として予定していたすべての項目を実施し,成果を出すことができた。まず,当初予定の通り,金沢工業大学の数理工教育研究センター内で組織されている数理教育研究会において『学修力を深化させ,先進的学習意欲を惹起する,数理の「深い学習」の研究』立ち上げることができた。 このメンバーで役割分担を行い,①これまで明確にされていなかった「深い学習」の構成的定義を決定することができた。これは,多くの先行研究と整合的であり,実践的観点からも実施,評価に対して適合するものである。②定義をもとに研究のベンチマークを設定し,これに基づき,深い学習促進のための工夫を概念理解形成を中心に,クリッカーを用いたアクティブラーニング,深い学習促進のための課題作成,また,個別指導における理解度の深化など教授方略として予定していたトライアルをほとんど行うことができた。③このトライアルの評価として,予定通り,ルーブリックを作成し自己評定を実施することができた。④全学初年次生対象の質問紙を作成し,アンケート調査を実施することができた。⑤アンケート結果に対し,当初予定通り,因子分析,共分散構造分析などの統計的手法により詳細分析を行い,潜在因子を抽出した。⑥これにより,学生の数理の深い学習に対する態度尺度を構成し,深い学習に臨む傾向を分析し,現状を確認することができた。⑦潜在因子に対する共分散構造分析により,ヒューリスティックの抑制は深い学習態度に対して,負の影響を与えていることが判明した。これは研究開始当初の予想と異なるものであるが,深い学習態度の発現に対して,重要な知見を与える結果であり,これにより,当初の予定よりも,深い学習の心理構造に対して,より深く切り込むことができる結果であると考えられる。以上により,平成28年度の研究計画は概ね順調に進行したと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,授業や学習支援において「深い学習」促進の本格実施を行い,学修の深化の度合いを測定し,評価・分析を行う。そして,この結果を基に,数理の学習分野の興味深さのへの「気づき」に対する調査を行い,トライアルの評価・分析を実施する。さらに,先進的学習意欲の向上度調査を行い,評価・分析する。 ① 前年度のトライアルの結果をもとに,「深い学習」促進の本格実施を行う。そして,この効果を確認するために,学修の深化の度合いを測定し,評価・分析を行う。ここでは特に,「ヒューリスティックの抑制」がどのようにして,深い学習の態度傾向に負の影響を与えるのか,新しい質問紙により,全学調査を実施し解明する。その結果をもとに,ヒューリスティックに対しどのような対処方法が適切であるか決定し,深い学習を促進するために役立てる方略について検討する。この時点で,再度,教授方略,学習方略の点検を行い,必要に応じて改善を行う。 ② ①で行った「深い学習」促進による学修の深化の度合いの評価・分析結果を基に,数理の学習分野の興味深さに対する「気づき」対して,次年度における構造解明を念頭に,探索的に調査,トライアル評価,分析を行う。 ③ 学修の深化の度合いを測定結果に対する評価・分析法,及び数理の学習分野の興味深さに対する「気づき」対するトライアル評価・分析法を精神測定学的見地と質的評価の見地から検討し,最も信頼性・妥当性が高い手法を再検討する。 以上を総括すると,次年度は深い学習の促進に関する本格実施,それによる気づきの構造解明のトライアルから,先進的学習意欲へとつながる仕組みへと研究を進める。
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Causes of Carryover |
ほぼ,研究計画の予定通りに研究費を使用したが,アンケート調査の一部にトライアルとして,マークシート(自家製)を使用したため,学生アルバイト(リサーチアシスタント)によるデータ整理の作業が一部簡略化されたため,研究費全体に比し,少額ではあるが,次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は,アンケート調査において,従来の調査項目に加え,深い学習に対するヒューリスティックの負の影響を調査するため,新たなアンケートの作成・調査を行う必要がある。このためデータ整理の作業も増加するので,学生アルバイト(リサーチアシスタント)にデータ整理の補助を依頼する業務も増加することが見込まれるため,この費用の充足の一部に充てる予定である。
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Research Products
(3 results)