2017 Fiscal Year Research-status Report
学修力を深化させ,先進的学習意欲を惹起する,数理の「深い学習」の研究
Project/Area Number |
16K01082
|
Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
谷口 進一 金沢工業大学, 基礎教育部, 教授 (50440483)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山岡 英孝 金沢工業大学, 基礎教育部, 准教授 (10443045)
木村 竜也 金沢工業大学, 基礎教育部, 准教授 (20410293)
中村 晃 金沢工業大学, 基礎教育部, 教授 (60387355)
高 香滋 金沢工業大学, 基礎教育部, 准教授 (90175422)
谷口 哲也 金沢工業大学, 基礎教育部, 講師 (90625500)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 数理の深い学習 / ルーブリック評価 / 深い学習態度尺度 / ヒューリスティック / 因子分析 / 共分散構造分析 / 潜在因子 / 自己評定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,前年度のトライアル実施で得られた知見を基にして,授業や学習支援において「深い学習」促進の本格実施を行い,学修の深化の度合いを測定し,評価・分析を行った。その結果,前年度より深い学習を促進する方略に到達できた。これは,前年度の分析により得られた,深い学習態度因子の中で,ヒューリスティックに関する分析を再度詳細に行ったことによる。前年度ヒューリスティックの抑制は研究開始当初の予想とは異なり,深い学習態度に負の影響を与えていることが判明した。このことから,ヒューリスティックは,まず,科目の学習開始段階ではある程度これを経験し,そこから派生する認知バイアスに対する気づきがあって,初めて深い学習態度の促進に向けて抑制していく必要性があるのではないかという仮説を立てた。この仮説を検証するため,前年度の深い学習態度尺度を再検討し,新たな質問項目を付け加え,探索的因子分析などの統計的分析を行ったところ,新しい因子として,「ヒューリスティック:前提的活用」因子が得られた。この因子の内容は,仮説を支持するもので,深い学習を促進するためには前提としてヒューリスティックの活用が必要という内容であった。 また,学習支援において,気づきに対する初期段階の知見を得ることができた。このこともヒューリスティックの一定の使用・反復が深い学習へとつながることを示唆していることが判明した。 これらの知見より,教授方略・学習方略として,ヒューリスティックの前提的活用をもとに注意深くヒューリスティックの抑制を行うことにより,深い学習の促進を活性化することができた。 さらに,先進的学習意欲のトライアル調査として,初期学習意欲の調査を行い,充実志向,実用志向,報酬志向,関係志向の4つの因子に分けて分析したところ,深い学習態度に専攻差が見られなかったのに対し,専攻により因子得点にかなりの差があることが判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究進行状況として予定していた全ての項目を実施し,成果を出すことができた。授業や学習支援において「深い学習」促進の本格実施を行い,学修の深化の度 合いを測定し,評価・分析を行った。その上で,前年度より効率的に深い学習を促進する方略に到達することができた。その過程において,前年度,研究開始当初の予想と異なるヒューリスティックの抑制が,深い学習態度に負の影響を与えていることに関する仮説を検証することができた。また,同時に気づきのトライアル調査として,ヒューリスティックは,まず,科目の学習開始段階ではある程度これを経験し,そこから派生する認知バイアスに対する気づきがあって,初めて深い学習態度の促進に向けて抑制していく必要性があるという知見を得た。また,前年度の深い学習態度尺度を再検討し,多変量解析を中心とする統計的分析を行い,新しい因子として,「ヒューリスティック:前提的活用因子」を得ることができた。また,学習支援において,気づきに対する初期段階の知見を得ることができたが,このこともヒューリスティックの一定の使用・反復が深い学習へとつながることを示唆しているという知見となった。これらの知見により,「深い学習」促進の本格実施により,ヒューリスティックの深い学習への前駆的役割を認識し,授業開始時から終了時にかけて,段階的にヒューリスティックの前提的活用から,徐々に抑制へと向かう教授・学習方略を考案した。 さらに,次年度への予備調査として,先進的学習意欲のトライアル調査として,初期学習意欲の調査を行った。この予備調査によって来年度の気づきの構造と先進的学習意欲の関係に関する研究を効率よく進めることができると考える。 以上を総括し,平成29年度の研究計画はおおむね順調に進行したと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,ヒューリスティックの前駆的効果,漸近的抑制などを考慮に入れ,「深い学習」促進の本格実施の継続を行う。同時に,学修力の深化の評価・分析を興味深さに対する「気づき」と関連付けて行い,「気づき」の構造を明らかにする。この際,これまでは評価の中心が自己評定にあった部分を,教員における他者評価と比較し,評価の確度・客観性を向上させる。また,「気づき」における認知的側面の先進的学習意欲への影響の度合いを評価・分析する。そして総括として,この研究成果を纏め,数理の学修力深化に対する実践的効果を評価する。 特に,① 「深い学習」促進の本格実施の継続を研究チーム全体で行い,数理系各科目(数学,統計学,物理学,化学)における学修力の深化の評価・分析を総合的に行う。② 学修力の深化の評価・分析を興味深さに対する「気づき」と関連付けて行い,「気づき」の仕組みを分析し,その構造を明らかにする。③ 「気づき」の認知的側面が先進的学習意欲へ及ぼす影響の度合いを評価・分析する。その結果により,学習初期段階での学習意欲・動機と先進的学習意欲,すなわち自発的に自ら進んで後続する科目,学習分野を学びたいという意欲の間の差異を明確化する。この際,学習初期段階のにおける学習意欲との比較が重要となるが,本年度トライアル調査した結果をもとに統計的手法,質的研究法を総合して用いることにより,的確な評価法を確立する。 以上を,総合して深い学習とそこから派生する気づき,また,先進的学習意欲に関する構造的理解を構築し,研究成果を纏める。
|
Causes of Carryover |
(理由)ほぼ研究計画の予定どおりに研究費を使用したが,統計的分析に使用する多変量解析のための統計専門ソフト(モジュール類を主とする)が,当初予定より,低額で購入することができたため,研究費全体に比し,少額ではあるが,次年度使用額が生じた。 (使用計画)本年度は研究の最終年度であり,アンケート類の整理もやや多くなる,また新しい角度からの統計的分析の試みも計画しており,これらのデータ整理のための学生アルバイト(リサーチアシスタント)への調査費への充足,統計ソフトモジュール等の購入のための費用の一部の充足に当てる予定である
|
Research Products
(9 results)