2016 Fiscal Year Research-status Report
プログラミングにおけるコードリーディング学習環境の構築とその効果の実践的調査
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16K01084
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Research Institution | Tokoha University |
Principal Investigator |
山下 浩一 常葉大学, 経営学部, 講師 (30340110)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小西 達裕 静岡大学, 情報学部, 教授 (30234800)
小暮 悟 静岡大学, 情報学部, 講師 (40359758)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 知的教育システム / コードリーディング学習 / プログラミング教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
[28-1] 本研究で構築するコードリーディング支援システムは、コードリーディングの対象となるプログラム、プログラムの処理対象となる論理的データ構造(対象世界)、プログラムコードが実現する対象世界への操作の系列(操作系列)の三つの視覚化領域からなる。学習者はプログラムコードの各ステートメントの実行によって対象世界に生じる変化の様子を観察し、そこから得られた知見を元に操作系列をグループ構造にまとめる作業を通じてコードリーディング学習を行う。これまでの実践では、対象世界の視覚化方針が教師の意図に沿わない事例が散見されており、こうした場合に対象世界の観察から得られる知見が不十分と思われる学習者が見られていた。本研究ではこうした問題に対処すべく、対象世界の描画に教師の意図を反映できるシステムであるTEDViTを構築し、実際に授業に導入してTEDViTを評価した(雑誌論文1: International Conference on Computers in Education 2016 (ICCE2016))。 [28-2] これまでに構築してきたコードリーディング支援システムLEPAを実際の授業に導入し、学習者のコードリーディングの様子を観察・記録した。記録の分析から、コードリーディング学習の成果を学習者が外化したものである操作系列のグループ構造は、授業回が早期の場合には単調であったり誤りが含まれていたのに対し、授業回が末期の場合には詳細な構造が作成されるようになることが明らかになった。このことは、学習者のコードリーディング能力と操作系列のグループ構造の精密さに正の相関があることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はコードリーディング学習とプログラミング能力向上の間にある相関性を明らかにすることを目的としている。本研究ではコードリーディング学習の円滑な遂行、学習者による学習成果の外化、教師による外化された学習成果の確認のため、コードリーディング支援システムであるLEPAを授業に導入している。本システムが提供するプログラムのふるまいの視覚化は、コードリーディング学習の円滑な遂行に支障となる恐れが見られたため、教師の意図を反映した視覚化を実現するシステムであるTEDViTを構築し、実授業にてその効果を評価した(研究成果28-1)。この成果はコンピュータ利用教育に関する歴史ある大規模な国際会議である International Conference on Computers and Education 2016(ICCE2016)に採択されており、国際的に高い評価を受けているといえる。 研究成果(28-2)は、頭記の研究目標の達成に密接に関わるものであり、得られた分析結果は今後の授業実践の方向性に対して十分な示唆を与えるものと考えられる。当初の計画通り小規模な学生数での実践ではあるが、実践授業の計画立案への貢献は大きいと評価する。 以上の点より、本研究はコードリーディング学習の基盤技術ならびに実践的な調査活動の双方において進捗が認められていることから、順調に進展していると自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果(28-1)で構築したTEDViTは、プログラムの処理対象となる論理的データ構造(対象世界)を教師の意図に沿って視覚化するシステムであり、現時点ではプログラムの挙動を観察する学習にしか対応できていない。今後はコードリーディング支援システムであるLEPAとTEDViTを統合し、コードリーディングの対象となるソースコード、教師の意図を反映した対象世界、プログラムが実現する対象世界に対する具体的な操作の系列の三つの視覚化領域を提供できるようなシステムの構築を目指す。TEDViTはあらかじめ教師が用意したプログラムのふるまいを視覚化するシステムであるのに対し、LEPAはコードリーディングの対象プログラムを学習者が自由に選択できる特徴を持つ。両システムの統合のためには、学習者の用意したプログラムに対して教師の資格化意図を反映した対象世界の視覚化の方法を検討する必要があり、現在これを進めている。 また当初の予定通り、LEPAを利用した学習者のコードリーディング学習の観察・記録を継続する。研究成果(28-2)で得られた記録の分析からは、学習者のコードリーディング能力と操作系列のグループ構造の精密さの間の大まかな相関しか観測できていない。今後はグループ構造の正確さや詳細さを数値化する方法の構築を目指し、統計的手法が適用できるような分析方法を検討していく。また、それに沿って実践授業の内容を検討し、様々な観点からの観察データが得られるよう授業内容を調整する。
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Causes of Carryover |
研究分担者一名がスケジュールの都合で予定されていた学会に参加できなくなり、旅費として執行する予定の予算が未使用となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
スケジュールを調整し、参加する学会を策定して研究調査を計画する。今年度の成果が途中段階を含めて学会発表にふさわしいと判断されたときには、研究発表を優先して計画する予定である。
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Research Products
(1 results)