2016 Fiscal Year Research-status Report
文化財の表装修復の技・コツ・みきわめ:裏打ち作業における教授システムの構築
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16K01088
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
後藤 彰彦 大阪産業大学, デザイン工学部, 教授 (50257888)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高井 由佳 大阪産業大学, デザイン工学部, 講師 (90626368)
黒田 孝二 京都工芸繊維大学, 伝統みらい教育研究センター, シニア・フェロー (90780859)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 技の定量化 / 動作解析 / 眼球運動解析 / 教授システム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、糊の塗布量による接着ムラ、刷毛さばきによる和紙のシワの発生等、糊付け工程における熟練者の技および仕上がりの解明に取り組んだ。連携研究者の工房である岡墨光堂にて、表装文化財修復の裏打ち作業における糊付け工程の動作測定を実施した。被験者は4名とした。内訳は、熟練者2名、非熟練者1名、初心者1名であった。熟練者1名と非熟練者は、先行研究において被験者として、協力いただいていた職人であった。測定項目は、3次元動作測定、眼球運動測定および把持力の測定とした。3次元動作測定にて、被験者の上半身の動きを捉え、眼球運動測定にて、作業中の視線の動きおよび注視時間を明らかとした。さらに、把持力の測定にて、刷毛を握る力を定量化した。 先行研究にて被験者であった熟練者において、特徴的な職人の技が明確化された。糊を塗布した後、次の作業に取り掛かるまでの見極めに明らかな違いが見られた。和紙に糊を塗布した後、一旦、作業を止めて、糊が乾燥する状態を目視にて観察しながら、次工程へのタイミングを見極めていることが明らかとなった。実験終了後において、被験者へのヒアリングにて、被験者の作業中のコツがより詳細に明らかとなった。他の被験者においては、糊の乾燥状態を確認することなく作業を遂行されていた。眼球運動測定より、熟練者は、これから作業を進める場所を注視していた。しかしながら、非熟練者は、作業をしている場所を注視していることが明らかとなった。さらに、計測した複数項目におけるデータの解析を遂行している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に計画していた動作測定、眼球運動測定および把持力の測定を実施することができた。熟練者の技を解明するため、測定したデータの解析を遂行している。また、各被験者における糊付け工程の仕上がり度合いについては、明確な違いが目視観察されている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、昨年度測定した複数のデータの解析を進める。また、各被験者の作業工程の違いについて、解析したデータを基にして、なぜそのような動きや判断を行ったのかということに着目して、ヒアリングを実施する。さらに、熟練者が最適と考える教授方法についてヒアリングを行う。
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Causes of Carryover |
「糊付け」工程において、糊の塗布量による接着ムラ、刷毛さばきによる和紙のシワの発生等、未熟な「糊付け」工程は製品の仕上がりを左右する。この作業中の見極めは、視線の動きが支配的であり、眼球運動を詳細に解明することが有効であると考えられる。そこで、機能性および利便性に優れた眼球運動計測装置を購入することとした。 この装置は、当初予定していた装置とは異なるため、予定していた購入金額を上回ることになったため、前倒し支払請求を行うに至った。このため、次年度使用額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまでの研究計画に従い、実験および解析に必要となる人件費や国内外にて研究成果の発表を行なうための旅費とする。
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