2017 Fiscal Year Research-status Report
疑似SNSを利用した実践的情報モラル教育法の開発と評価に関する研究
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16K01114
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
井上 仁 鳥取大学, 総合メディア基盤センター, 教授 (00176439)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東野 正幸 鳥取大学, 総合メディア基盤センター, 助教 (70736090)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | SNS / 授業支援システム / 情報モラル |
Outline of Annual Research Achievements |
1.教育用SNSの機能強化 昨年度より開発を進めている教育支援用SNSについて、ウェブアプリケーション開発フレームワークであるRuby on Railsを採用して再構築し、以下のような機能強化を図った。1)WebSocket 機能を用いることでユーザ間のメッセージ送受信のリアルタイムレスポンス性能を向上させた。2)ラップトップパソコン、タブレット端末、スマートフォンなど、画面の大きさや縦横比といったレイアウトが異なる色々な端末に対して適した画面表示ができるように対応した。また、昨年度のシステムではMacBookAirの無線ルータ機能を用いてイントラネットを構成していたが、処理できる端末数が10台程度と限界があった。本年度は業務用無線ルータを用いることで30台程度の端末まで処理が可能となり、対応授業の幅を広げることができた。 2.インターネットを用いたクラウドシステムの試作 イントラネットのシステムでは遠隔地からの利用が難しい。そこでインターネットを利用したクラウドシステムを試作し、東京と北海道の学校から遠隔利用の試験を行った。 3.授業実践によるシステムの評価と教育効果の検証 本システムを用いたSNSの適正利用に関する授業実践を行った。授業では、教師が匿名で「名前を教えて」「どこに住んでいるの」などのメッセージをシステムに書き込んだ。これに対し、名前や居住地などを書き込む生徒が見られた。一旦操作を止め、「個人情報とは何か」「知らない人に教えても良いのか」などを生徒と話し合った。その発言をもとにスライドに表示し、投稿された内容を振り返り、個人情報の扱い、不適切な発言について話合った。生徒は興味、関心を持って、SNS コミュニケーションツールの適切な利用について考えることができた。また授業1か月後の追跡調査で、体験授業の内容についてよく覚えていることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年開発したシステムでは、MacBookAirの無線ルータ機能を用いてイントラネットの構築を行ったが、利用者が10名を超えるとレスポンスが悪化する現象が見られた。その対策として今年度は業務用無線ルータ(Yamaha WLX202)の使用を試みた。その結果30名程度までは支障なく使用できることが確認できた。本装置を使うことで、教室内のイントラネットが容易に構築でき、対応できる生徒数の幅を広げることができた。また、ウェブアプリケーション開発フレームワークであるRuby on Railsを採用してシステムを再構築したことで、ユーザ間のメッセージ送受信のリアルタイムレスポンスを向上させることができ、よりリアルな疑似SNSシステムを作成することができた。更にラップトップパソコン、タブレット端末、スマートフォンなどの各種画面レイアウトに柔軟に対応できる機能を追加することで、利用する端末の制限を緩和することができた。 本年度の予定としてオールインワンタイプのポケットコンピュータによるシステムの開発を計画していた。しかしながら、インターネットが使える教室が増えてきたことから、インターネット経由でクラウドを利用する方式の方がより便利で有効性が高い。いくつかの県外の学校から本システムを使ってみたいとの要望が寄せられた。これらのことから当初の計画は断念して、クラウドを活用したシステムを試作して、遠隔地からの利用への対応も図った。 鳥取県下の特別支援学校で本システムを用いた情報モラル授業の実践を行いながら教育効果の評価を行っている。アンケートによれば多くの生徒が本システムを用いた授業が楽しかった・良くわかったと回答し、教育効果についても期待される結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
今まではネットワーク環境の有無に縛られずどんな場所でも活用できるように、ノートパソコンと無線ルータによるイントラネットシステムの開発に注力してきた。しかしながら、この方法ではシステムを持ち込める鳥取県内の学校での活用に限られていた。学会等で本システムを紹介したところ、全国各地から使ってみたいという問い合わせが寄せられた。そこで、インターネットを利用したクラウドシステムの開発に着手した。クラウドシステムは遠隔地から誰でも使えるという利点があるが、利用者の管理を行わないとシステムが目的外や不正に使われる危険性がある。現在のクラウドシステムは利用者管理の仕組みが不完全なため広く公開できていない。また本システムを用いた授業の実践においては、一人の教師が生徒の対応をしながら匿名で投稿したり、投稿メッセージをレビューするといった作業が発生し、教師がせわしなく教室を走り回る必要があった。そこで今後は以下のようなシステムの機能向上を目指す。1)クラウドシステムの利用者認証の機能の追加。具体的には、利用者から所属学校名、利用目的、利用日時と利用者数等を入力してもらい、自動的に認証をおこなって、素早く利用者権限を付与する仕組みを構築する。これによって遠隔地からの利便性が向上が期待できる。2)教師支援機能の追加。本システムを用いた授業実践では、個人情報を書き込む危険性やネットの匿名性について、体験を通じて理解させることを目的としている。教師に代わってシステムが自動的にメッセージを作成する機能を追加する。これにより教師は生徒への対応に専念できる。 更に、最終年として本システムを用いた授業実践の手引きの作成も予定している。
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Research Products
(4 results)