2017 Fiscal Year Research-status Report
インテリジェントな到達度予測による自律的な学修意識の向上に関する研究
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16K01119
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
丹羽 量久 長崎大学, ICT基盤センター, 教授 (90448499)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山地 弘起 独立行政法人大学入試センター, 独立行政法人大学入試センター, 教授 (10220360)
二木 映子 宇部工業高等専門学校, 経営情報学科, 准教授 (20290794)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | メタ認知 / 高等教育 / 情報教育 / 表計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
学習場面での代表的なメタ認知測度の一つであるMetacognitive Awareness Inventory(Schraw& Dennison, 1994)は、知識面(宣言的知識・手続きの知識・条件の知識)と行動面(プランニング・情報管理方略・モニタリング・修正方略・学習評価)の8下位尺度、計52項目からなる。このMAIを翻訳してパイロット版を作成し、長崎大学の2017年度初年次学生を対象として質問紙による測定を実施した。回答データを使って因子分析等による種々の検討を行い、知識面2因子と行動面3因子を抽出した。これら各因子と情報系教養科目における学習成果の関係を調べる等、日本語版尺度として洗練するための基礎データを収集した。 一方、メタ認知測定に関する課題の整理と今後の展望を行うことを目的として、関連分野に興味ある研究者および教育者との情報交換や討論を行うラウンドテーブルを企画し、第24回大学教育研究フォーラムにおいて実施した。ここでは、このMAIを邦訳・抜粋したメタ認知尺度28項目(阿部・井田,2010)を用いた授業効果査定の事例として、長崎大学および徳島大学における取り組み内容と種々の検討結果を取り上げて論点を絞る題材とした。 表計算の自習支援システムについては、平成28年度に利用環境を整えたバッチ形式の運用を継続し、宇部工業高等専門学校にて授業で利用するとともに、システムの評価・改善を行うためのデータを蓄積した。長崎大学においても同様に授業での利用を継続し、データを蓄積した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究において重要な位置づけとなるメタ認知尺度を洗練するための検討を最重要課題として取り組んでいる。したがって、当初計画していたニューラルネットワークの構築については未着手である。 質問紙によるメタ認知尺度MAIの全52項目の翻訳を終え、長崎大学の2017年度初年次学生を対象として測定を実施し、全設問に有効な回答として216名のデータを得た。 因子分析については、標本数216は項目数52に対して十分とは言えないため、知識面17項目と行動面35項目の二つに分けることにした。固有値の減衰状況、プロマックス回転後の因子負荷量、各因子に分類された項目等に着目して探索的に検討したところ、知識面を2因子、行動面を3因子とするのが適当と判断した。知識面については、第1因子を「方法の有用性の知識」、第2因子を「学習の促進要因の知識」と命名した。行動面については、第1因子を「モニタリングと評価」、第2因子を「理解難の際の調整」、第3因子を「プランニング」と命名した。 学習成果との関係については、情報系教養教育科目の成績判定に用いた総合点と各因子間との関係を調べた。総合点の分布を補正した上で、各因子得点とのPearson相関係数を求めた。知識面第2因子および行動面第2因子と学習成果との間に.169*、.177**の弱い正の相関がみられることがわかった(*p < .05. **p < .01.)。 Webポータルに取り込んで表計算の自習支援システムとして稼働させるには至っていない。Webシステムにファイルのアップロード・ダウンロード機能を装備するための設計を完了させ、実装に取りかかった。並行して、Office Open XMLのSpreadsheetML仕様への独自タグ組み込みのための定義や関連情報と連携する方法を分析に取り組んでいる。その際、操作履歴に関係する事項を優先させている。
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Strategy for Future Research Activity |
メタ認知尺度の確立を本研究の最重要課題とし、メタ認知測度MAI(Schraw& Dennison, 1994)の尺度52項目を日本語に翻訳したパイロット版の洗練を最優先で進める。 翻訳における課題として、英語では不自然さを感じなくてもそのまま日本語に翻訳すると不自然さを感じるようなこと、副詞(たとえば、頻度)の使い分けをそれぞれの文意に反映するための日本語表現等を取り上げる。原著者が本研究への協力要請に応じてくれることから、早期に面談等を行って原著のニュアンスを確認し、適切な日本語表現に見直す等の改訳に取り組む。 検証における課題として、学習場面で生かされるメタ認知尺度としての妥当性を取り上げる。日本語版尺度を使って測定を行い、因子分析による因子の抽出をはじめとした種々の分析結果を使った検討により、学習成果との関係を明確にしていく。同時に、ニューラルネットワーク構築に不可欠なパラメータとしての妥当性についての確認に取りかかる。
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Causes of Carryover |
(理由) データ分析補助としての人件費支出を予定していたが別途雇用する必要がなく,さらに研究成果投稿料と別刷り印刷費を要しなかったため。 (使用計画) 関連ソフトウェアおよび関連資料の整備に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)