2016 Fiscal Year Research-status Report
情報活用型アプローチによる「学びの質」ルーブリックバンクの開発
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16K01123
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
稲垣 忠 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (70364396)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 康志 新潟大学, 教育・学生支援機構, 准教授 (40410261)
松本 章代 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (40413752)
豊田 充崇 和歌山大学, 教育学部, 教授 (60346327)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 情報教育 / 情報活用能力 / ルーブリック / 学習評価 / 授業設計 / プロジェクト学習 / カリキュラム / 教員研修 |
Outline of Annual Research Achievements |
児童生徒が情報を収集、編集、発信する探究的な学びを遂行する際のルーブリック(評価基準)を体系的に開発し、教師と児童生徒が任意の観点、基準でルーブリックを利用できるデータベース(ルーブリックバンク)として公開することが本研究の目的である。具体的には次のA)~C)の3点に取り組んでいる。 A) 児童生徒の探究活動における情報教育の観点からの体系的な「学びの質」ルーブリックの構築:義務教育段階を対象に、児童・生徒の探究的な学習プロセスにおいてどのような学習活動がなされているのかを収集する。特に情報活用能力に関する目標やカリキュラムモデル、評価基準等を参考にしながら、具体的な情報活用場面として21種類の学習活動を定義し、それぞれに4段階の基準からなるルーブリックを構築した。 B)ルーブリックを教師および児童生徒が設定・活用する際の授業設計・学習評価手法の明確化:情報活用型アプローチでは、情報の収集、編集、発信の3場面で、単元を通した学習を構成する。A)において開発したルーブリックを教師や児童生徒が情報の収集、編集、発信の各場面において選択・活用し、授業の設計を支援するために学習活動カードを開発した。このカードと学びの質ルーブリックを用いた単元開発のプロセスを明らかにすることができた。 C) Web上でのルーブリックバンクの公開と、それを活用した授業設計・学習支援モデルの開発:オンライン上でルーブリックを公開、作成支援を行っているウェブサイトの事例研究を行った上で、情報活用に関する多数のルーブリックをWeb上で選択、編集できる環境を開発した。学生および教員によるプロトタイプシステムの運用実験を行い、動作確認とともにユーザインタフェースに関する評価を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
H28年度の目標は、①国内外の情報活用能力・情報リテラシーに関するルーブリック評価の情報収集から取り組み、ルーブリックバンクに含めるべき構成要素を明らかにするとともに、②プロトタイプ開発に向けてシステム要件、データベース構造、ユーザインタフェースの定義を行う、の2点だった。 目標①に関しては、教科書や情報教育に関する図書をもとに21種類の学習活動を抽出し、「学びの質ルーブリック」としてメタルーブリックを提案した。さらに、21種類の学習活動をイラスト化し、具体化する上での視点や学びの質を考える留意点を記載した「学習活動カード」を作成した。同カードを用いて探究型の単元を開発する「情報活用型プロジェクト学習」の授業設計手法を明確にするとともに、単元開発を行う教員研修プログラムを開発・実施することができた。 目標②に関しては、海外のルーブリック共有サイトについて情報収集を行った上で機能要件の定義を行い、ウェブ上でルーブリックの作成、共有、検索が行えるシステムを構築した。大学の実習科目および2回の教員研修での運用実験を行い、ユーザインタフェース等の評価を行った。さらに、本年度協力を得た学校から収集したルーブリックを入力し、70件ほどのデータベースを構築することができた。 以上のことから、目標①②とも当初の計画を上回る進捗で推移している。一方で、課題点として目標①に関して作成した学習活動に即したメタル-ブリックに対して、目標②で収集したルーブリックはプロジェクト型の単元設計を前提に児童・生徒の成果物に対する指標として設定した「思考・表現ルーブリック」であり、これら2種類のルーブリックをどう関連づけていくのかが課題となった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の目標は、①プロトタイプシステムを活用しながら、小学校・中学校教員との連携のもと、ルーブリックバンクを用いた授業開発を試みる。②ルーブリックを用いた情報活用型の探究学習に対する評価手法を明らかにするとともに、③プロトタイプへの評価をもとに本システムを開発する、の3点である。 ①については、前年度に仙台、和歌山、新潟の各地域において、既に学びの質ルーブリックに対する教員による評価、学びの質ルーブリックを活用した授業設計に取り組んでおり、本年度はルーブリックバンクの活用を組み込んでいく。 ②については、情報活用能力に関する探究プロセスをベースにした問題作成等を試みている。本年度は、ルーブリックによる学習活動および学習成果物の評価から実証を行う。 ③については、ユーザーインタフェースやナビゲーションの改善とともに、ルーブリックの作成時点の記述支援方策を具体化し、本システムへと実装する。
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Causes of Carryover |
物品費に関してはシステム構築のため予定通り使用した。旅費に関しては調査校への訪問旅費を分担研究者それぞれの近隣地で実施したため削減することができた。人件費に関しては本研究の一部に取り組んだこと、教育委員会との連携により作業分担が行えたことにより発生しなかった・Webサイトに関しては学生の卒業研究の中心テーマとして開発したため、構築費用は発生しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H29年度はプロトタイプシステムの運用を開始する。研究構想時点以上に研究協力を得られる学校が増えているため、物品費、旅費とも増額を予定している。人件費等についても得られる実証データが増大することが予想されるため、前年度使用しなかった分を本年度に使用する予定である。
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