2018 Fiscal Year Research-status Report
ひきこもり経験者・不登校生徒に対する情報教育による支援体制に関する研究
Project/Area Number |
16K01136
|
Research Institution | Seisa University |
Principal Investigator |
斎藤 俊則 星槎大学, 教育実践研究科, 准教授 (80434447)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 情報教育支援 / 情報学的知識 / プログラミング / デジタル・エージェンシー / 社会参加 / ケイパビリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度,本研究者は研究計画に従って協力関係にある当該NPOにおいて40回のフィールド調査を実施した.また,フィールド調査と並行してデータ分析および分析において用いる理論的枠組みの構築を先行事例(Vaughan and Walker 2012)を参照しつつ進めた.フィールド調査の内容は主にプログラミングを中心とする情報学的知識および数学などに関する勉強会(位置付けとしては自習会)の開催と,その中での参加者たち(支援の対象となる人たち,支援を行うスタッフ,その他地域住民など)との交流,および関係者への聞き取り,現場の学習文化に何らかの関わりがあると思われるあらゆる事象に対する観察と記述などであった.フィールド調査にあたっては,アクションリサーチの基本理念に従い,本研究者は支援者,被支援者との共同学習者としての立場からその都度共同的に学習課題を模索,設定し,特に被支援者による情報学的知識への親しみと理解形成を目指しながら支援を継続した.また,その間に得られたデータ(主にフィールドノーツと映像記録からなる)から,今年度は1.学習スペース利用者における情報環境のwell-beingへの転換に関する実情,2.プログラミング勉強会参加者において同勉強会への継続的参加が持つケイパビリティ拡大にとっての意味,3.勉強会参加者に見られる学習の自律性と学習課題としてのプログラミングの特性との関係,の3点を中心に反省的な分析と仮設形成を行った.進捗状況で述べる通り1,2,3について一定の成果が見られた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は1, 2, 3について一定の成果があったため.1については同じ情報環境の中でそれぞれの利用者のニーズや背景に応じて「情報環境のwell-beingへの転換」は起こるが,特に勉強会参加者においては他者のケア(情報環境へのインクルージョンに当たるガイダンスなど)や支援グループの情報環境の改善や支援グループが請け負う事業の分担など,本人の情報環境の活用スキルを通してグループ内の活動で不可欠な役割を担うことの可能性が拡大していることがわかった.このことは,情報環境がグループ内で支援を受けるだけでなく,支援やサービスを提供する側に立つことのへの選択肢に転換されうること,さらにこの選択肢の拡大において情報学的知識およびスキルは個人のwell-beingの拡大に意味を持つこと,などを示唆する.2については情報学的知識が学習その他の活動のあり方を通して個人やグループの持続可能性に深く関与すること,この点をもって同勉強会への継続的参加が参加者のケイパビリティ拡大に確実に結びついていることが確認された.3については学習課題がプログラミングであることが,他の諸要因(勉強会の目的と運営,グループ固有の学習文化,学習者本人の動機,など)と関係し合いながら学習の自律性を引き出していることが示唆された.この点についてはデジタル時代における主体性(digital agency)として概念化を進めている.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は平成30年度中に完結しなかった「情報技術・情報科学の知識・技能に関するケイパビリティ」の理論化の,特に学習・教育のケイパビリティ拡大への関わりの理論的枠組(Vaughan and Walker 2012)における,情報学的知識習得の特殊性に焦点を当てた理論化を目指す.さらに,従来通りにフィールドワークを継続して,理論化と並行しながらその理論の実地における有効性に関する知見を得ることを目指す.
|
Causes of Carryover |
研究論文の翻訳校正サービスを利用しなかったため若干の剰余金が生じた.
|
Research Products
(3 results)