2017 Fiscal Year Research-status Report
保育・教職志望者のピアノ授業と個別学習を連携する演奏eポートフォリオの開発と実践
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16K01148
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Research Institution | St.Margaret's Junior College |
Principal Investigator |
田中 功一 立教女学院短期大学, 幼児教育科, 准教授 (10413006)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻 靖彦 放送大学, 教養学部, 准教授 (10392292)
小倉 隆一郎 文教大学, 教育学部, 教授 (60177201)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ピアノ演奏評価 / 演奏分析 / 見える化 / 可視化 / ピアノ学習 / MIDI録音 / 自学自習 / SCAT |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年は、保育士・教員養成校で学ぶピアノ初学者の学習を支援するため、学習者と教員の演奏状況をグラフに出力してフィードバックするプログラム「ピアノ演奏見える化ツール」(VSPP)を開発した。2017年は、このツールを中核として、その前後に自学自習プログラムとピアノ対面指導を加えた「ピアノ学習プロセス」(PLP:Piano Learning Process)を構築した。PLPの構成は、1)教員の模範演奏動画を主要コンテンツとするデジタル教材による自学自習、2)教員が行う個別対面指導、3)学習者が演奏を録音して聴く振り返り、4) VSPPの演奏グラフのフィードバックによる演奏状況の把握、以上、PLPはこれら1)~4)から成る。PLPの特徴は、1)~4)の順に繰り返して学習を進める点である。 PLPの実践における学生の記述と教員のコメントに対して、質的データ分析の手法の一つであるSCATを用いた分析を行った結果、PLPの特徴として計18の理論記述を導き、学びにおける構造的な意味を抽出した(田中, 小倉, 鈴木, & 辻, 2018)。また、PLP参加者の後期の学習について追跡調査を行った。PLP参加者と非参加者を比較した結果、ピアノ技能レベルで「ピアノ未経験またはバイエル9番程度」と回答した23名の平均点は、PLPとVSPP参加者9名が75.9ポイント、非参加者が75.5ポイントであった。さらに、PLPとVSPPに参加した9名について参加回数と成績の相関を確認したところ、PLP参加者に有意傾向を伴う正の相関が認められた(r=.64,p <.1)。一方、VSPP参加者においても正の相関が認められた(r=.68, p < .05)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
独自に開発した演奏分析システムであるVSPPは1年目の取り組みにおいて予定通り行われた結果、本システムの活用可能性が示された。しかし、VSPPによる学びの周辺には複数の学びが機能的に配置され、学びが循環する構造を成している。具体的には、1)教員の模範演奏動画を主要コンテンツとするデジタル教材による自学自習、2)教員が行う個別対面指導、3)学習者が演奏を録音して聴く振り返り、4) VSPPによる演奏グラフのフィードバックによる演奏状況の把握、以上1)~4)が循環する。したがって、学びの変容が前述の1)~4)のどこで起こったのか、また循環する構造であるため何周目の1)~4)で起こったのか、これらについて分析が検討できる。2年目はこの検討に際してSCATを用いて学習者の発話と教員のコメントに対して質的データ分析を試みた。その結果、PLPの特徴として計18の理論記述を導いた。また、PLPの学びの特徴として次の5点が明らかになった。すなわち、1) 学習者が学びの当事者となることがある、2) 振り返りの状況の違いにより振り返りの観点が変容することがある、3) 振り返りが進む中で自身の感情の働きの変容を把握することがある、4) 演奏の問題の所在を音楽の技術要素別に把握することがある、5) 学生の学びの変容に伴い、教員の個別指導の態度が変容することがある。今回の分析によりPLPの学びにおける構造的な意味が抽出できた。以上のことから本研究が当初の計画の通り進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目はVSPPの実践において学習者の振り返り記述の内容から学習の様子を確認した。2年目は記述に対して質的データ分析を行い、本システムの有効可能性を確認した。3年目はシステムの利便性を向上するため、現状のWindowsタブレットによる運用からアンドロイドスマートフォンによる運用を目指す。本研究が目指す「循環型実技スキル学習共有化システム」の構築にとって、スマートフォンによるVSPPの運用は、学習者の自学自習環境を充実させる可能性が期待できる。
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Causes of Carryover |
2018年よりシステム構築をWindowsタブレット版からアンドロイドスマートフォン版に変更するため、開発のための業務委託費として3年目に26万円を使用する計画です。
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Research Products
(13 results)