2016 Fiscal Year Research-status Report
インタラクティブな電子書籍の開発とLMSを活用した物理教育
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16K01155
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Research Institution | Hiroshima National College of Maritime Technology |
Principal Investigator |
藤原 滋泰 広島商船高等専門学校, 一般教科, 准教授 (20390495)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 物理教育 / e-ラーニング / 電子書籍 / LMS(Blackboard) / 学習到達度試験 / 微分積分と力学 / アクティブラーニング / 放射線教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、基礎物理についてのインタラクティブな電子書籍を開発し、LMS(ラーニング マネージメント システム)を活用した配信とオンラインテストを実施し、ICTを用いた効果的な物理教育について研究を行っている。具体的には、以下の研究を推進している。①6年前から開発を行ってきた、物理の電子書籍に実験動画や練習問題ウィジェット、表計算によるグラフ、図式解法等を追加し、予習・復習での使用を促すことで、授業中のアクティブラーニングの時間を設け、ICTを活用した物理教育を実施する。②LMSとして、既存のBlackboard「物理(3年)」のホームページを活用し、電子書籍の配信だけではなく、学生の理解度や学習状況を管理できる様にすることで、より双方向性の高いeラーニングを行う。③インタラクティブな電子書籍とLMSを活用した物理教育の効果を明らかにする。 今年度は、微分積分を用いた力学についての、図解を多用したインタラクティブな電子書籍(iBooks形式)を開発した。この電子書籍では、縦軸に位置xや速度v、横軸に時刻tをとったx-tグラフやv-tグラフ、縦軸に力F、横軸に位置xや時刻tをとったF-xグラフやF-tグラフに於いて、iBooksのギャラリー機能を用いて、指のスワイプ操作で、①グラフ、②微分や積分の結果の図解とそれについての③解説文章が表示されるので、“傾き(微分の計算結果)”と“面積(積分の計算結果)”の図示で物理量に対する理解を視覚的に促進することが出来る。この電子書籍での学習と連携させ、Blackboard「物理(3年)」のオンラインテストによる理解度チェックも行った。 平成28年度の高専の学習到達度試験(物理)の第9領域“微分積分を用いた力学”の当校の平均点は、難易度が高い領域であるにも関わらず、(当校での)全9領域の中で、4番目に高い得点領域となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
微分積分と力学についての電子書籍の開発は順調に進み、Blackboard「物理(3年)」から配信すると共に、授業でも活用した。授業での活用に際して、教室でiPadを配布し、電子書籍の実物を操作しながら学習を進めさせた。 理解度をチェックする為に、Blackboard「物理(3年)」を用いて実施したオンラインテスト(平成28年8月に実施)では、微分積分と速度・加速度・変位についての各問題の正解率は85.55%~95.19%であったのに対し、微分積分と仕事・力積についての正解率は71.09%~81.93%とやや低いことが分かった。 微分積分と力学についての講義終了後(平成28年8月)、3年生に対して、アンケートを実施した。アンケートの結果、約64%の学生達が、電子書籍は役だったと回答し、約59%の学生達が、電子書籍のギャラリー機能による図解が、微分積分を用いた力学を理解するのに役立ったと回答した。また、約65%の学生達がオンラインテストは理解度のチェックに役立ったと回答した。 また、アンケートのコメント回答欄には、電子書籍については、「図が見易くて分かり易かった」、「微分・積分の特性を知ることができた」、「新しい勉強の仕方で興味が出て、理解し易かった」という好評が書かれてあった。オンラインテストについては、「スマートフォンからでも短時間で解けて、答案や点数が直ぐに見れた」、「選択式だったので、解きやすかった」、「何時でも出来るから、時間をおいても覚えているか試せた」等々というコメントが書かれてあった。 以上の様に、電子書籍の開発と授業等での実践、オンラインテスト、アンケート、平成28年度の学習到達度試験の結果ともに全て概ね良好な結果が出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
インタラクティブな電子書籍とLMSを活用した物理教育の効果を明らかにするために、今後は以下の3つの研究方策を推進する。 ①電子書籍については、”微分積分と力学についての、図解を多用した要点のまとめ”と”平成28年度の学習到達度試験(物理)の過去問演習の章“を既存の電子書籍に追加し、Blackboardより配信する。電子書籍を用いた予習を促し、授業中は学生同士の意見交換や教え合い(アクティブラーニング)の時間を多く作り、学生をファシリテートする指導を行う。 ②Blackboardでのオンラインテストについては、簡易な正誤問題のオンラインテストに加えて、文章表現をグラフ表現に変換する問題や、並べ替え問題、論述問題等々を追加し、問題形式を多様化することで、学生達により深く考えさせる工夫を施す。 ③Blackboardのホームページから得られたオンラインテストの成績の評定データと課題の提出状況、高専の学習到達度試験(物理)の結果を分析し、教育効果の測定を行う。
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Causes of Carryover |
タブレット端末(iPad)の購入に際して、年度毎の低価格化と高性能化、新製品の発売等を見込んで、初年度での全台数の一括購入から、各年度毎の購入に計画を変更したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
タブレット端末や電子書籍(iBooks)を作成するための物品の購入等に使用する。
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