2018 Fiscal Year Research-status Report
カリフォルニア大学の研究契約から米国の軍産学複合体制の起源を探る
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16K01167
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Research Institution | Takushoku University |
Principal Investigator |
日野川 靜枝 拓殖大学, 付置研究所, 研究員 (90134832)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 1930年代カリフォルニア州の財政危機 / 1930年代カリフォルニア大学の財政危機 / 1930年代における科学の軍事化 / 軍事動員と研究契約 / 1930年代カリフォルニア大学放射線研究所 / 軍産学複合体制の起源 |
Outline of Annual Research Achievements |
資料収集の現状: バークレー市のカリフォルニア大学バンクロフト図書館では、下記の資料から必要な文書を写真撮影してきました。①.University of California, Office of the President records, 1941: 471-751, ②.Ernest O. Lawrence Papers, approximately 1920-1968. Reel 43, ③.Ernest O. Lawrence Papers, 1948-1958, box. 1, ④ Guide to the Records of the president of the University of California : Special problem folder, 1899-1958, box 28, box 29など。また、ニューヨーク市のヨシア・メイシー Jr. 財団本部で2012年発行の書籍、タイトル:The History of the Josiah Macy Jr. Foundationを頂戴してきました。
今年度は、これまで収集した資料の印刷・解読・分析作業を進めました。その結果、日本科学史学会において、「1930年代前半におけるカリフォルニア大学の研究条件の変化について―研究委員会(the Board of Research)の資料から―」というタイトルの発表をおこなうことができました。また、これまでの資料分析にもとづいて、所属する拓殖大学人文科学研究所紀要に英文論文 “How Science Became Militarized : The Case of the University of California at Berkeley”を発表することができました。なお、Repository, Permalinkはつぎの通りです。http://id.nii.ac.jp/1579/00000148/
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(理由) 上記の「研究実績の概要」に示す通りに研究は進捗しています。
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Strategy for Future Research Activity |
基本方針については、次のように考えています。今年度が最終年度であるため、これまでに収集した資料を再検討しながら、各テーマ別の章をまとめて、つぎのような内容の日本語を使用した著書を執筆したいと考えています。
タイトル:「科学はこうして軍事化された―カリフォルニア大学の場合―」、1章:1930年代カリフォルニア大学の直面した財政状況―1929年世界大恐慌の影響―、2章:外部資金導入の推奨―大学財政の変化とその対応―、3章:放射線研究所の特殊性―巨大科学の誕生―、4章:国防研究への動員―軍産学複合体制の起源―、5章:科学の軍事化と巨大科学―科学は誰のために、何のために存在するのだろうか―
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:今年度の期間中には、92歳の母を看取り、また75歳の夫の難病、筋萎縮性側索硬化症が確定診断がなされるなど、家族の介護に時間を割く必要がありました。そのために、最初の研究計画で予定していた資料収集の場所も、カリフォルニア大学以外の新たな大学まで広げることができませんでした。こうした要因が、一番の理由です。また、すでに2019年2月に実施しましたカリフォルニア大学への出張費用については、その手続きが大学の年度内会計処理締切日を過ぎてしまったために、次年度の会計処理となりました。その金額は、350,843円となっています。使用計画は、「今後の研究の推進方策」を参照してください。特に、出版に向けた原稿整理や構成の検討などには、専門家の力を借りたいと考えております。 今後の要望:「一時的な研究中断」の手続きの中に、「育児中断」と同様にぜひ「介護中断」も制度化していただきたいと、自らの体験をもとに強く要望いたします。確かに育児と異なり介護の場合には、先の読めない中断期間を容易に定められない特徴があります。しかし、社会的な介護制度が不十分な現状では、特に女性研究者に家族の介護の負担が重くのしかかってきています。こうした現状を直視して、女性研究者に一層心強いご支援をいただけますよう、関係各位には「介護中断」のご検討をよろしくお願い致します。
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