2018 Fiscal Year Research-status Report
日本における産業技術基盤の形成と情報通信技術を通じたその進化
Project/Area Number |
16K01170
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
山崎 文徳 立命館大学, 経営学部, 准教授 (70411204)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 真悟 立命館大学, 経営学部, 准教授 (10623358)
永島 昂 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (10733321)
杉本 通百則 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (40454508)
田口 直樹 大阪市立大学, 大学院経営学研究科, 教授 (60303252)
兵藤 友博 立命館大学, 経営学部, 教授 (20278477)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 産業技術基盤 / 情報通信技術 / 電子化 / インダストリー4.0 / ビッグデータ / FA / PA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本における産業技術基盤(素材、部品・機械、資本財の産業技術)の形成を、最終製品と産業技術基盤の産業・技術特性をふまえて歴史的・構造的に把握し、その上で情報通信技術の産業利用、つまり製品と産業技術の自動化・電子化を明らかにすることであった。 欧米とは異なり現場でのカイゼンによる生産性向上という目的で日本製造業の自動化・電子化、そして産業IoT(Industrial Internet of Things)は進展した。自動制御機器などの産業技術基盤に着目すると、機械工業ではFA(Factory Automation)を進めるために三菱電機やオムロン、ファナックがPLC(Programmable Logic Controller)を提供し、装置工業ではPA(Process Automation)を進めるために横河電機などがDCS(Distributed Control System)を供給して、従来のリレー制御が置き換えられてきた。 情報通信技術の産業利用のメカニズムとしては、1970~2000年代には、最終製品、つまり産業技術基盤を使用する側の企業群の要求にもとづいて産業技術基盤が提供・使用されてオートメーション(自動化)が進展した。その延長上にある産業IoTは、グローバル展開の中で生産情報の可視化やビッグデータ収集、AIによる分析とソリューションを通じた生産性向上が目的であるが、オートメーションの中で形成された産業技術基盤が技術的な基礎になっていると同時に、技術の日本的な特質を規定している。 本研究では、文献調査やヒアリング調査を国内外で行うことでこれらの内容を整理し、適切な論点設定を行うとともに今後の課題を明確にすることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度の研究実績としては下記の4点を挙げることができる。 1.年度内に5~6回程度の対面による研究打合せとメールによる打合せを行い、研究会で扱う内容の設定、調査先と調査内容の設定を行なった。 2.メンバーそれぞれは、当初設定した分担、つまり機械産業技術、工作機械・金型産業技術、石油化学技術、鉄鋼・鋳物産業技術、科学技術政策といった分野ごとに個別の研究やヒアリング調査を行なってきた。 3.1年を通じて何度かの研究会を実施した。7月には、国内調査予定を立てるとともに、9月に実施するドイツ調査について相談した。 4.8月にはPLCを扱う国内企業3社を訪問した。9月には、ドイツIoT調査の中で、日系企業を訪問したり、ドイツの同業種企業を訪問して日本企業と比較するなどした。11月にはFA向けに自動制御機器を提供する日本企業を訪問して、PLC事業について日本と中国、欧州事業の展開などをヒアリング調査した。1月にはPA向けに自動制御機器を提供する日本企業を訪問してDCSの産業利用とその発達プロセスについてのヒアリングを実施した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、第1に、日本製造業の産業IoTの特質を明らかにするために、自動化及びIIoTの手段を供給するメーカー群を対象に調査・分析する必要がある。メーカー群は、自動制御機器メーカーを中心に工作機械メーカーや産業用ロボットメーカー、装置メーカー、センサメーカーなどの産業技術基盤の供給企業群から構成される。 第2に、機械工業のFAを実現するFA供給企業群と、装置工業のPAを実現するPA供給企業群という2つのタイプの産業技術基盤の供給企業群を対象に比較、調査する必要がある。一方はドメスティック、他方はグローバルと対照的な展開の志向性をもつことから、両者の比較によってグローバル市場における日本の産業技術基盤の普遍的性格と特殊的性格を明らかにすることもできる。 第3に自動化及び産業IoTを実現するユーザー群を包括的に調査・分析する必要がある。供給企業群はFA供給企業群とPA供給企業群に、産業技術基盤の使用企業群は機械工業と装置工業に分けられる。機械工業には量産型の自動車産業や非量産型の航空機産業、装置工業としては素材形成で欠かすことのできない鉄鋼業や化学工業、鋳物工業が典型的な産業である。 第4に、産業技術基盤の供給企業群と使用企業群の両側面から相互的に分析を行う必要がある。供給企業群と使用企業群の相互関係は、これまでほとんど重視されてこなかった。しかし、メーカーとしての供給企業群が直接的には産業技術基盤を提供するが、その技術的特質は、使用企業群における具体的な使用形態によって規定される。産業技術基盤の日本的特質はメーカーとユーザーの双方から二重的に規定されるのであり、オートメーションでは積極的に評価されていた産業技術基盤が、産業IoTでは消極的に評価されている理由を、技術の日本的特質という面から明らかにする必要がある。
|
Causes of Carryover |
日本における産業技術基盤の形成と情報通信技術を通じたその進化について、国内の自動制御機器メーカーのヒアリング調査などを通じて研究を進めてきた。2017年度からは、同様の主旨で海外、特にドイツを対象とする調査も実施し、日独比較を通じて日本の特殊性を明らかにしてきた。日本の特殊性をより精緻に解明するため、当初の予定よりもさらに国際比較を通じた分析作業を追加する必要があり補助事業期間の延長を希望した。基本的にはこの金額は、残された課題に取り組むことで2019年度にすべて使用する。
|
Research Products
(18 results)