2018 Fiscal Year Annual Research Report
A Sociological Study on the Introduction of Human Papillomavirus(HPV) Vaccination Progam in Japan : A Special Focus on Boundary Work
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16K01173
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
種田 博之 産業医科大学, 医学部, 講師 (80330976)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | boundary work(境界作業) / HPV / 審議会 / ワクチン行政 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、厚生労働省厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会――以下、審議会と略記――において、HPV(ヒトパピローマウイルス)、子宮頸がん、そしてHPVワクチン・接種がいかに語られ、どのように正当化されたのかを、「boundary work(境界作業)」の視点から明らかにした。その成果として、中間報告を日本社会学会(第91回大会、甲南大学)にておこなった。 HPVワクチンが定期接種のA類(旧1類)疾病指定されたのは、2013年の予防接種法改正においてである。2013年改正の基軸となったのが、2009年12月に設置された審議会である。審議会は「第二次提言(2012年5月)」をとりまとめ、そのなかでHPVワクチン接種の定期化を具申した。 厚生労働省は当初、HPVを2類疾病に分類してみてはどうかと審議会に提案していた。しかしながら、健康被害が起った場合の補償額の点から、審議会で異論が出た。そのため、厚労省はHPVを1類疾病に再分類すべく、1類疾病概念自体の変更をおこなった。この1類疾病概念の変更はboundary workの結果である。厚労省自体は、HPVは2類疾病でもよかった。しかしながら、審議会でとくに補償の点で異論が出たがゆえに、厚労省は1類疾病概念の変更をおこなってまで、HPVを1類疾病に該当させた。まさに審議会がboundary workの場であったことを明らかにすることができた。 また、これまでの成果を冊子形態の報告書にもまとめた。章立ては以下の通りである。序論 問題の所在、第1章 基本的知識、第2章 がん統計とその見せ方・読み方の差異、第3章 医学論文におけるHPVワクチンと当該ワクチン接種の語られ方、第4章 審議会におけるboundary work、終章 「HPVワクチン問題」について、注釈、参考文献。
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