2016 Fiscal Year Research-status Report
東アジア方形城郭都市の造営技術史に関する学際的研究
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16K01174
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Research Institution | Kobe City College of Technology |
Principal Investigator |
町田 吉隆 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (80249820)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武田 和哉 大谷大学, 文学部, 准教授 (90643081)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 方形城郭都市 / 東アジア / 造営技術 / リモートセンシング / 空中写真 / 周辺環境要素 / 都市工学 / 東洋史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は唐朝成立以後に東アジア各地域に普及・展開した方形城郭都市に関する歴史的変容を先行研究からは抜け落ちていた周辺環境要素と造営技術を結びつける視点から解明することにある。 平成28年度には比較的良好に城郭遺跡が残存する中国内蒙古自治区において現地踏査を行い、10世紀以降、契丹国(遼朝)時代に造営された遼上京址、遼中京址、12世紀に築かれた金代の界壕址、13世紀に造営された元上都址および応昌路城址について調査を行うことができた。これらの方形城郭都市遺跡のうち、本格的な発掘調査が未だ行われていない元代の応昌路城址についてはGISおよび空中写真を用いて遺跡の様相や造営技術などインフラの構成要素を検討した結果に、文献史料を用いた考察を加え、元上都と相似する構成要素を指摘した(雑誌論文として発表)。 また契丹国(遼朝)時代の後半に外交上の首都として機能した遼中京については、先行研究に学びつつ、その都城機能の変遷を検討した。現地踏査で得られた知見に加え、空中写真から得られた情報を基に、城址西南部高地の造営方法を明らかにした。造営当時の方形城郭都市内部の景観に関する考察を加えて学会発表を行った。 平成28年度の調整会議は平成29年度春に予定していた年度会議と集約して行い、研究費の節減に努めた。平成28年度秋に発表された大宰府外郭城址の一部と考えられる前畑遺跡(福岡県筑紫野市)の現地調査報告会および関連シンポジウムに事前に参加した上で、得られた知見を参考にしつつ、研究班全員で大宰府址、水城址、大野城址、基肄城址など外郭城関連遺跡を踏査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の調査においては中国の内蒙古自治区の方形城郭都市遺跡および日本の大宰府外郭城関連遺跡を踏査することができた。旅程の都合により割愛せざるを得なかった遺跡も存在したが、年度当初に予定していた遺跡はおおむね調査することができた。 関連する国内外の報告、先行研究の収集、整理も順調に進み、空中写真および現地で撮影した写真を解析して、方形城郭都市の特徴を検討する作業を2つの方形城郭都市遺跡(遼中京址、元応路城址)について試み、研究報告として発表することができた。 一方、衛星画像データおよびGISを用いた遺跡周辺の地文様相把握とデジタルマップの作成、現地で撮影したデータに画像処理を用いることで地形および周辺環境要素を抽出する作業など人文学と工学の手法を融合させる研究手法については、現地で撮影した画像データに存在する精粗のばらつきの処理や対象とする遺跡の選定に際しての基準作りなどの課題も確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は内蒙古自治区の既に踏査した方形城郭都市遺跡について遺跡周辺の地文様相把握とデジタルマップの作成、画像処理を用いることで地形および周辺環境要素を抽出などの作業手法を試してみる必要がある。また造営、修復の工程を解析することや土木量を算出することなど同地域の遺跡については用いられたことがない分析手法も行う予定である。 現地踏査については内蒙古自治区東部に隣接する河北省や山西省の方形城郭都市を踏査する。これらの地方は内蒙古自治区に比べ、早くから人口稠密で、都市開発が進んでいる。また現存する城牆なども14世紀以降に下るが、考古調査報告などを参照し、その造営や修復について技術的な類似や相違を検証する予定である。 秋には国際学会において、中間報告を兼ねた研究報告を行う予定である。研究交流で得られた知見を踏まえて、年度後半には現地撮影データと空中写真を用いた画像処理技法やデジタルマップ化したデータベース作成の前段階である遺跡の選定などの課題に進む予定である。
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Causes of Carryover |
研究分担者の武田和哉(大谷大学文学部)に配分した研究費を2017年3月26日から3月28日にかけて実施した研究集会「東アジア方形城郭都市の造営技術史に関する学際的研究 2016年度研究成果総括会議」における武田和哉の旅費として使用したが、その旅費に残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度に近畿地区内で予定される研究集会の参加旅費として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)