2016 Fiscal Year Research-status Report
中国地方における古代製鉄・製塩の森林資源への影響評価
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16K01180
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
佐々木 尚子 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 研究員 (50425427)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 植生変化 / 植生史 / 半自然草原 / 二次林 / 火事史 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、中国山地の蒜山地域で採取した堆積物試料について、花粉分析、微粒炭分析、火山灰分析および植物珪酸体分析を実施した。 1. 花粉分析による植生変化史の解明:蒜山地域で採取した堆積物について、約70層準をサンプリングし、このうち半数について化石花粉を抽出し、花粉の同定・計数を実施した。 2. 微粒炭分析による植物燃焼史の解明:上記の堆積物のうち、26層準について微粒炭分析を実施した。 3. 炭材の樹種同定による燃料材の樹種変遷の解明:堆積物中に、同定に適した大型の炭片が含まれていなかった。 4. その他:堆積物下部に狭在する火山灰を分析したところ、およそ3万年前に降下した火山灰であることが明らかになった。このことから、この試料は、当初の想定よりも古い、約3万年前以降の植生変化を記録している可能性があることが判明した。また、イネ科をはじめとする草本花粉が多く含まれる15層準について、今後の分析に備え、植物珪酸体の抽出をおこなった。 これらの分析の結果、この堆積物では約9000年前に相当する層準以降、微粒炭が断続的に検出され、またイネ科やヨモギ属などの陽生草本の花粉が多く検出されることが明らかになった。一方、古代製鉄が始まった時期に対応する層準では、マツ属花粉の増加がみられたものの、その変化は明瞭ではなかった。このことは、当地域で製鉄が始まるよりも前から、火による植生変化が生じていたことを示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度当初に計画していた花粉分析、微粒炭分析については、研究協力者と作業を分担して進め、予定していた試料処理ならびに分析をほぼ予定通りに進めることができた。また炭材の樹種同定については、同定に適した大型の炭材が検出されなかったため、同定には至らなかった。堆積物の年代決定については、火山灰分析によって、堆積物の下限が約3万年前であることが明らかになった。また、花粉分析の結果、9000年前ごろの層準からイネ科などの陽生草本花粉が増加することが明らかになったため、当初の予定に加えて、イネ科を亜科や属のレベルまで同定できる植物珪酸体分析を実施した。 以上のような進捗状況から、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
火山灰分析の結果、堆積物試料の下限が、当初の予想よりも古い時代に遡るものであることが判明した。このため、平成29年度以降に、とくに過去約2000年間に対応する層準について、分析間隔を細かく設定し、放射性炭素年代測定を含め、追加分析を実施する必要がある。また、植生に火の影響が及んだ時期が、当初の想定よりも古かったため、過去に花粉分析が実施されている蛇が乢湿原において堆積物を採取し、微粒炭分析をおこなって、約9000年前以降の微粒炭の増加が広域的な現象であるかどうか確認することを計画している。 平成29年度は、瀬戸内地域で採取した堆積物について、花粉分析、微粒炭分析等を実施する計画である。中国山地の堆積物のように、イネ科花粉が多く検出されるようであれば、植物珪酸体分析を合わせて実施することも検討する。
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Research Products
(2 results)