2017 Fiscal Year Research-status Report
3次元レーザスキャナを用いた鉱山遺跡の採掘状況を再現する新たな手法の研究
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16K01184
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Research Institution | Matsue National College of Technology |
Principal Investigator |
久間 英樹 松江工業高等専門学校, 電子制御工学科, 教授 (40259924)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 3次元レーザ測定 / 鉱山遺跡 / 不整地走破ロボット / 坑道調査 / 鉱山絵図 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では3次元レーザスキャナを用いた取得した3次元点群データから鉱山遺跡の採掘状況を再現する新たな手法を提案した。以下、具体的に説明する。坑道周辺で3次元レーザ測定を実施すると地面に樹木や倒木等も含んだ3次元点群データが採取される。そのため採掘時の坑道周辺の様子を再現することができない。そこで地面検知処理機能を有する専用ソフトを用いて地面のみの3次元点群データに変換する。次に視覚的に地面を確認しやすくするために専用ソフトを用いて3次元点群データを面データから立体データに変換する。この立体データを活用することによって3Dプリンタで坑道や坑道周辺の模型を製作することが可能となる。また坑道や坑道周辺の距離感をリアルに表現するために、鳥が飛行しているような目線からの映像も作成できる。この一連の手法が坑道周辺の採掘時の状況を再現する新たな手法である。更に上記立体データに3次元レーザスキャナを搭載したロボットによって採取された複数の坑道内定量データをつなぎ合わせることによって、地面に散在している坑道の地中内での相互関係を推測することも可能となった。 次に、取得した立体データから坑道周辺の採掘年代を推定するため、作成年代が特定されている鉱山絵図と立体データを比較し坑道概形や採掘方向の検証を行った。その結果、下記のことがわかった。①「絵図内の点で描かれた場所」は崩落もしくは埋め戻された跡を表していた。このことは埋め戻し跡が記載されている坑道は絵図作成以前の時代の坑道形状であることを示唆している。②「絵図に未記載の坑道」は絵図作成後に採掘された坑道であった。未記載坑道の3次元レーザ測定データを考察することで絵図作成以降の時代の坑道採掘形状を推定可能となった。これより鉱山絵図と3次元レーザ測定結果を比較することで、時代毎の坑道採掘形状の特徴を構築できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、坑道内の3次元レーザ測定をより円滑に進めるために狭小坑道および下向き坑道に対応したロボットを製作できないか検討した。具体的には、昨年度開発した駆動用DCモータを内輪と兼用したホイールで覆った、駆動ユニットの約70%の小型化に成功した。このユニットを2個および6個組み合わせることによって2種類のロボットを製作した。これらのロボットを用いて鉱山坑道跡で実証試験を実施した。また従来は坑道間の相互関係を調査するために坑道が散在する山中全体を3次元レーザ測定していた。しかしこれでは膨大な時間を要する。そこで本年度は坑口から坑口までの斜面のみの測定データから地中での坑道間の相互関係を求めることができないか検討した。その結果の佐渡金銀山「弥吉間歩」付近の調査では下記のことがわかった。鉱山絵図に記載されて古文書を読み解くと、1837年に「弥吉間歩」の坑内通気を改善するために付近の間歩と貫通させる工事を行ったと記載があった。各坑道内の3次元レーザ測定を行った結果、現在は地中で貫通していないことがわかった。更に上記手法で坑口間の斜面3次元レーザ測定を行い、各坑道内の3次元レーザ測定結果を重ね合わせた。その結果、各坑道の先端付近が約1m埋没していることがわかった。そこで専用ソフト上で埋没部分を取り除くと絵図通り地中内で2つの坑道が貫通していることがわかった。 また、採取した定量データから埋蔵文化財としての鉱山坑道跡の価値を再認識してもらうために、全国各地の鉱山跡で成果報告会を実施した。その際、実際に使用した遠隔操作型ロボットの実演や操作体験も実施し、ロボットを用いた鉱山探査の重要性を認識してもらった。更に子供たちにものづくりの面白さを体験してもらうために、鉱山調査に関連したオリジナルロボット工作キッドを開発した。これを用いて出雲科学館や多田銀銅山内の中学校等で工作教室も実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度開発した狭小坑道対応型ロボットを用いて、従来3次元レーザ測定が困難であった坑道の調査を行う。これまで3次元レーザスキャナを搭載したロボットを用いた測定の際には、ロボット本体が静止している必要があった。しかし急勾配の下向き坑道測定の際にはロボットが静止するまで時間を要する場合があった。そこでロボットの振動を定量化してロボットが不静止状態でも測定可能なシステムの開発を試みる。また従来の3次元レーザスキャナが約5kgであるため、長時間ロボットが不整地を走行すると駆動系ユニットが変形することがあった。そこで測定精度は劣るが軽量化された3次元レーザ測定機を用いて坑道測定を試みる。更に、昨年度実施した3次元レーザ測定結果と古文書や絵図との比較検討も行い、未だ発見されていない坑道や地中での坑道間の相関関係も解明していく。 次に、坑道を含めた鉱山関連遺構が採掘年代推定の指標として使用できないか検討する。具体的には、昨年度開発した3次元レーザ測定システムを応用することで、選鉱道具、鉱山臼等、鉱山関連遺構の定量データを現場で効率良く測定できるシステムを実現する。この結果を用いて鉱山稼働時の採掘状況や鉱山遺跡の文化的価値を定量的に評価する手法も検討する。 本年度も昨年度と同様に埋蔵文化財としての鉱山遺跡の価値を再認識してもらうために、全国各地の鉱山跡(石見銀山世界遺産センター、佐渡金銀山金井コミュニティセンター、生野銀山シルバー生野、多田銀銅山悠久の館、湯之奥金山湯之奥金山博物館等)で成果報告会やものづくり教室を実施する。特に本年度の世界文化遺産の国内推薦候補を目指す佐渡金銀山では、地元小学校で「3次元レーザスキャナ搭載型ロボットを用いた佐渡金銀山調査結果」に関する講演を行う。また生徒諸君に坑道調査に同行してもらい、ロボットを用いた調査の様子を体験してもらう予定である。
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Causes of Carryover |
その他(ロボット運送費)予定していた費用が15,932円残った。次年度のロボット運送費に利用する予定である。
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Remarks |
遠隔操作型ロボットを用いた坑道調査の様子を紹介している。
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