2019 Fiscal Year Annual Research Report
A study of a lead isotope ratio and a Fe chemical state of lead glaze earthenware : characteristic for a firing technique and a provenance
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16K01190
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Research Institution | Kyoto National Museum |
Principal Investigator |
降幡 順子 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部保存科学室, 室長 (60372182)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 胎土分析 / 鉄価数 / 鉛釉陶器 / 焼成温度 / 須恵器 / 瓦 / 奈良三彩 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、古代軟質胎土を有する陶器のうち、胎土色が白色を呈する陶器の焼成技術の特徴と系譜について究明することである。そこで「白色・軟質」胎土のうち鉄を多く含む胎土について、胎土の化学組成、鉄の価数、胎土色調に着目し、複数の分析手法を組み合わせて焼成技術を考察してきた。昨年度までの調査結果から、本研究で着目した奈良三彩などの軟質の胎土は、焼成時のみではなく、遺棄されたのち土中に埋まっている間に「鉄気」といわれる鉄の影響を受けている可能性があることが判明した。 そこで今年度は、実験データの詳細な解析をおこない、低火度焼成資料の表面から浸透したと考えられる鉄の影響は、今回の作製した参考試料の場合、その深さが最大で3㎜程度まで達していることがわかった。このことから、本研究のように軟質胎土を調査対象とした非破壊分析の際には、これらの影響について考慮していく必要があるといえる。いっぽう、鉄の価数の変化として、焼成温度が900度以上の試料片や1100度以上の試料片ではピークに特徴的な形状が得られる傾向もみられた。従来はX線回折法でムライトの生成が確認できない低火度焼成資料の場合、非破壊分析で焼成温度を判別することは厳しいとされてきたが、本調査結果は低火度の焼成温度の考察に有用なデータとなる可能性がある。また吸収端のごく近傍で認められるショルダーピークは、胎土中に別の化合物が混成された影響によるものと考えられる。出土資料においても、同様の傾向を確認している。比較する鉄化合物試料の種類を増やしたところ、昨年度に考察した磁鉄鉱とともに、本年度実施した調査ではイルバイトが出土資料と最も特徴が類似する結果となった。今年度はこれまでも継続しておこなっている、胎土組成分析、鉛同位体比分析による鉛原料の産地推定、釉薬顔料の分類も実施した。調査成果等は、報告書、学会発表などを通じて公表した。
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Research Products
(7 results)