2016 Fiscal Year Research-status Report
言語音がわかりにくい高次脳機能障がい者とともに作る生涯学習施設の放送音声
Project/Area Number |
16K01196
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
三谷 雅純 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 准教授 (20202343)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生涯学習施設 / 情報アクセス / 高次脳機能障がい / 失語 / 緊急避難情報 / 視聴覚メディア |
Outline of Annual Research Achievements |
高次脳機能障がい者に対して、情報付加による放送音声の聞き取りやすさ/聞き取りにくさを視聴覚実験によって調べた。素材は関西テレビCSRの援助により職業アナウンサーの肉声をデジタル録音して使用した。高次脳機能障がい当事者のべ32名と、対照群として介助者と言語聴覚士合わせて20名、計52名が被験者として参加した。実験は日を変えて複数回行った。 男女のアナウンサーが「棒読み」と「リズムを強調した読み」で吹き込んだ素材を、(1) 非障がい者、(2) 時には聞くことに不便がある軽度の高次脳機能障がい者、(3) 聞くことに常に不便がある中・重度の高次脳機能障がい者に聞いてもらい、理解しやすいかどうかを主観で答えてもらった。その結果、障がいのある/なしや程度に関らず、女性アナウンサーでは「わざとリズムを強調した読み」が理解しやすかった。一方、男性アナウンサーでは被験者間で結果が一定しなかった。 同様にして「棒読み」と「棒読みに音アラーム(注意を促す緊急情報のチャイム)を付加した読み」を比べた。非障がい者では、1名の男性アナウンサーを除いて、いずれも「音アラームの付加」が有効だったが、障がい者では、障がいの程度に関わらず今回使用した音アラームの付加は有効ではなかった。 被験者が知っている童謡を、リズムを付けない「朗読」とリズムを付けた「歌」で聞いてもらった。非障がい者であるか障がい者であるかに関わらず「歌」が理解しやすいという回答を得た。ただし有意差が出たケースは限られ、男女や声質によって有意差が出るアナウンサーが限られるということはなかった。被験者がすでに知っている「歌」であったから理解しやすかったのか、高次脳機能障がいの有無によらず全てのヒトにとってリズムを付けた音楽は「朗読」よりも理解しやすいのかは今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高次脳機能障がい者に理解しやすい放送では、男女のアナウンサーの聞きやすさの差異や非障がい者には有効な音アラーム(注意を促す緊急情報のチャイム)の付加が有効でないなど、想定していた結果とは異なる結果であった。そのため再検討に時間が掛かった。一定の結論を得たので、現在、論文を投稿準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
先行研究の結果(たとえば橋本ほか, 1989: 失語症研究)から高次脳機能障がい者に注意を促す音アラーム(注意を促す緊急情報のチャイム)は、環境音の質によってチャイム音の有効性が異なることが予想できる。また音アラームに限らず、視覚的な光アラームも想定できる。そのため、①既存の音アラームではない、高次脳機能障がい者に理解しやすい音を捜すこと、②高次脳機能障がい者に二次的な障がいを引き起こさない光アラームから、有効なものを捜すことを今後の目標とする。 音楽の有効な利用には文献研究を取り入れたい。
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Causes of Carryover |
予定していた人件費・謝金や視聴覚実験用のDAISY制作はJR西日本あんしん社会財団の研究費でまかなえたので、若干の金額があまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新たな団体を増やす計画があり、被験者に対する謝金が増える予定である。
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Research Products
(1 results)