2018 Fiscal Year Annual Research Report
The Museum Initiative under Jacques Chirac's Administration- from Louvre Museum to The Shoah Memorial
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16K01204
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Research Institution | Kurashiki University of Science and the Arts |
Principal Investigator |
松岡 智子 倉敷芸術科学大学, 芸術学部, 教授 (90279026)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ジャック・シラク / セルジュ・クラルスフェルト / ユダヤ芸術歴史博物館 / ホロコースト記念館 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ドゴールからはじまりミッテラン大統領の時代に至るまでの博物館政策とは明確に一線を画している、ジャック・シラク政権下の「多文化共存」重視の博物館構想について、シラクの強力なイニシアティヴによって設立されたことで知られる、《非西洋》-アフリカ、アジア、オセアニア、アメリカ-の民族資料を展示するルーヴル美術館内の新ギャラリー「パヴィヨン・ド・セッション」(2000年)とケ・ブランリー美術館(2006年)以外の博物館、とりわけ、これまで指摘されることのなかったユダヤ芸術歴史博物館とホロコースト記念館に注目することにより、フランス社会における「ユダヤ人」と向き合うシラク政権下の博物館についての考察を行った。そこで明らかとなったのは、1995年、ジャック・シラクが演説のなかで、第二次世界大戦中、フランスのヴィシー政府がナチス・ドイツに加担し7万6千人のユダヤ人をアウシュヴィッツに強制移送した事実をフランスの大統領として初めて認め、フランス社会に大きな波紋を広げ、その背景には今でもホロコーストの記憶の忘却と戦い続ける、弁護士で歴史家のセルジュ・クラルスフェルトとの交流による強い影響があったためであると考えられる。筆者は、クラルスフェルト夫妻の『回想録』(2015年刊行。2019年度に筆者により翻訳出版予定)や、シラクの『回想録』と『演説集』(2017年、筆者により翻訳出版)等の文献資料、また、2019年3月のパリ出張で、クラルスフェルト夫妻へ3度目のインタヴューを行うことができ、その内容と提供された資料により、フランスのホロコーストの記憶と歴史を客観的に分析し解き明かす貴重な手がかりを得た。これらに基づき、今後もこれらの博物館や記念館の調査・研究を続行し、博物館から見たフランスのホロコースト史研究、現代史、さらには「想起」の文化史にも新たな光をあててゆく。
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