2016 Fiscal Year Research-status Report
博物館体験の向上をめざす展示解説手法の研究―自然史博物館でおこなうUXDの試み―
Project/Area Number |
16K01206
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Research Institution | Kanagawa Prefectural Museum of Natural History |
Principal Investigator |
大島 光春 神奈川県立生命の星・地球博物館, 学芸部, 主任学芸員 (40260343)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田口 公則 神奈川県立生命の星・地球博物館, 企画情報部, 主任学芸員 (70300960)
加藤 ゆき 神奈川県立生命の星・地球博物館, 学芸部, 主任学芸員 (70342946)
石浜 佐栄子 神奈川県立生命の星・地球博物館, 学芸部, 主任学芸員 (60416047)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 博物館展示 / ユーザーエクスペリエンスデザイン / 博物館体験 / 解説手法 |
Outline of Annual Research Achievements |
博物館では、展示物と見学者の関係を理解することが、永遠の課題の一つである。本研究では、展示ラベルや解説を展示標本のUI(ユーザ・インターフェイス)としてとらえ、さまざまな来館者それぞれに最適なUIが何かを研究し、提供することを試みる。その過程と結果をUXD(ユーザ・エクスペリエンス・デザイン)という概念にまとめ、展示見学のために訪れる来館者の満足度向上のための方法を探求する。 本研究はこれまでに行ってきた『子どものための展示開発』、『自然系博物館における「動く展示」・「動いてみる展示」の開発』、『誰もが楽しめる安全な展示手法』など、「博物館側のどのような行動が、博物館の利用価値を高められるか」というテーマの延長線上にあり、さまざまな来館者に博物館が伝えたい内容を来館者の目的に応じて伝え、そのことによって最終的に博物館体験の満足感を高めるための方法を研究しようとするものである。 展示におけるUIで、大切なのは「一目で分かる=glance-able communication」ことである。そこで興味があれば、もっと良く見れば良いし、分かった上でスキップするならそれも良い。一見しただけでは、興味深いのかそうでないのかさえ分からないことが問題なのである。その短時間の、最初のふれ合いでの敷居をなるべく下げて、過不足なく(センセーショナルでなく)伝えたい。そのためには、文章なのか、音声なのか、イラストなのか、動画なのか、そして、字数は、文体は、大きさは、色は、といった項目について、対象となる来館者のペルソナごとに、事例をまとめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2016年度は館種を限定せずに、なるべく最近新設されたりリニューアルしたりした博物館・美術館等を選び、複数で議論あるいは意見交換しながら、UIについて調査を行った。UIとしての観点から字数、字の大きさ、色、図表の使用、音声ガイド(有無や内容)、外国語の対応等の項目で調査をおこない、UX(ユーザ・エクスペリエンス)の度合いを評価する指標を整理したいと考えた。また来館者のペルソナごとに解説として最適なメディアや量を客観的な手法で求めたい。字数、字の大きさ、色、図表の使用、音声ガイド(有無や内容)、外国語の対応等を予定している。その他に吉村・関口(2013,2014)にもあるようなUX度(=有効さ、効率、満足度)の測定あるいは評価の度合いについて検討中である。具体的な調査項目とその評価指標の決定が現在の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
次の3つの条件を備えた調査項目とその評価指標を決定することが、推進方策としての優先課題と考えている。(1)我々自身が「良い」と感じることが高評価となり、「悪い」あるいは「要改善」と感じることが低評価となるような、感覚と評価が確実に相関すること、(2)調査員に拠らず再現性や客観性が担保されるようにすること、(3)UXに影響するにもかかわらず見落される項目を少なくすること、である。 次にUXを改善するシナリオあるいはメソッドを考えたい。2017年度は当館の特別展を題材にUXDに取り組み、自己評価、改善までを試行する。
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Causes of Carryover |
海外を含め複数のメンバーで他館の調査を行う計画であったが、調整が付かず海外調査は行われず、国内調査も単独で行動することになったり、調査にいくことができないことがあったりしたために、特に旅費が計画通り執行できなかった。また、物品費の一部については2016年度に発注したが年度をまたいで納品されることになったため、2017年度に執行される。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度に、当該年度分と2016年度分を併せて多くの調査を行うこととし、多くの額が執行される予定。また、特別展の解説手法研究および試行に伴って、物品費、人件費・謝金を執行する計画である。
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