2017 Fiscal Year Research-status Report
博物館体験の向上をめざす展示解説手法の研究―自然史博物館でおこなうUXDの試み―
Project/Area Number |
16K01206
|
Research Institution | Kanagawa Prefectural Museum of Natural History |
Principal Investigator |
大島 光春 神奈川県立生命の星・地球博物館, 学芸部, 主任学芸員 (40260343)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田口 公則 神奈川県立生命の星・地球博物館, 企画情報部, 主任学芸員 (70300960)
加藤 ゆき 神奈川県立生命の星・地球博物館, 学芸部, 主任学芸員 (70342946)
石浜 佐栄子 神奈川県立生命の星・地球博物館, 企画情報部, 主任学芸員 (60416047)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 博物館体験 / 展示手法 / 解説手法 / 地層はぎ取り標本 |
Outline of Annual Research Achievements |
博物館展示における情報の提供について、欧州11館・園および国内約20館の視察および実態調査を行った。調査の項目は博物館の主な対象者、ラベルとパネルの大きさ、文字の大きさと字数、外国語対応の有無や言語の種類、音声ガイドの有無、展示の特徴などである。 2017年7月15日~11月5日まで開催された神奈川県立生命の星・地球博物館の特別展「地球を『はぎ取る』~地層が伝える大地の記憶~」では、一般市民の「地層」に対する地味な印象、「地層はぎ取り標本」の認知度の低さ、内容の理解の難しさなどが予測され、展示手法と解説手法での対処が必要だと考えた。展示では、調査の現場を博物館内で再現し、来館者が現場にいるような体験ができるようデザインした。露頭があった現場と同じ状態で観察できるよう、トンネル状展示、垂直吊り下げ方式や傾斜立てかけ方式など、さまざまな展示を試みた。解説のために、種々の解説ツールを作製し、多面的に内容を解説したり補足したりする形にして、立体的な展示解説を試みた。1つの展示物に対して、最大で8つのアイテムを組み合わせた。①章のタイトル、②節のタイトル+1コマ漫画+100字程度の解説+露頭や周辺の写真、③標本展示のタイトル+100字程度の解説+写真+五七五による標本の表現、④デジタルフォトフレームを用いた静止画+動画解説、⑤スケッチによる解説+標本の属性データ、⑥キャラクターによる標本上での会話的解説、⑦模型などによる実験または体験的展示、⑧実物標本または模型による補足説明である。これらのアイテムを適宜組み合わせて、はぎ取り標本の内容や、標本を製作した意味を理解してもらえるようにした。 来館者の理解度、標本や実験に対する印象などについて評価を行うためアンケート調査を行った。解説のわかりやすさについては評価が高かったが、より詳しい解説を求める意見もあった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
博物館体験には、影響を与えるさまざまな要素があり、その個々の要素を客観的に指標化するための項目や基準を定めることが困難である。 また、昨年は研究代表者および分担者2人が、地層はぎ取り標本の研究報告および展示の担当でもあったため、本研究のケーススタディの場とすることが可能となった。しかしながらそのために、研究に割ける時間が限られてしまい、個々のアイデアをUXDとして展示に落とし込むだけの余裕が無くなってしまった側面もある。 展示の終了後からは、展示や展示解説で十分にできたところ、不十分だったところを洗い出し、自己評価を行った。アンケートの結果と合わせてまとめている。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在は昨年の特別展で行った展示、解説、アンケートのまとめについて検討し、平成30年に全国科学系博物館協議会研究発表大会で発表し、さらに内容を分けて深化させ、日本地球惑星科学連合大会、日本博物館学会、日本展示学会などいくつかの学会で発表する準備を進めている。 博物館体験に影響を与えるさまざまな要素について、それぞれの要素を客観的に指標化するための項目選択や基準を定めることが大きな課題である。 これからペルソナの設定を再考し、複数のペルソナについてより詳細で、かつ多様なものにする。また、新しい取り組みとして、平成29年12月からはNECネクサソリューションズの被写体認識基盤システムを用い、タブレット端末などの機器を使って、展示室で必要な情報を提供する、新しい展示解説手法について検討を始めた。現在は平成30年度の秋頃に実証実験を実施するための作業を行っている。
|
Causes of Carryover |
大きな理由は2つある。一つは昨年度計画していた海外調査に行けなかった分担者があったためである。2つめは、特別展で実施する計画だった展示解説に関する実証実験が行えなかったためである。特別展の開催をまずは優先したため、実証実験の規模を縮小しなければならなかったし、インターネットやタブレットなどのデバイスを用いた実験の準備ができなかった。そのために、機器の購入、コンテンツの制作委託などの費用を次年度に送ることになった。 昨年12月からはNECネクサソリューションズの被写体認識基盤システムを用い、タブレット端末などの機器を用いて、展示室で必要な情報を提供する、新しい展示解説手法について検討を始めた。今年度の秋頃に実証実験を実施するための作業を行っている。この実証実験に使用する解説サイトの構築、端末機器の購入、インターネット接続の費用、アンケート調査の人件費などが必要である。
|