2016 Fiscal Year Research-status Report
福島県沿岸域から阿武隈山地における地下水の水質形成と地下水流動の解明
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16K01212
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
藪崎 志穂 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, センター研究推進支援員 (60447232)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 福島県沿岸域 / 地下水 / 湧水 / 水質 / 安定同位体 / 地下水流動 / 滞留時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請課題の先行研究として,平成26~27年度に福島県北部沿岸域で実施した調査の結果から,当該地域には複数の帯水層があり,一部の自噴井や湧水は滞留時間の長い水であることを把握した。こうした沿岸域の地下水の涵養域は阿武隈山地周辺であることが予想されるが,本地域での調査事例が少ないことに加え,研究対象地の地質は双葉断層を境に東西で異なり複雑な構造を示している等の理由から,地下水涵養域については未だ明確には示されていない。一方で,避難地域への住民の帰還に伴い,沿岸域での農業活動等において地下水利用の需要が増えると考えられるため,滞留時間を含む地下水流動系や地下水の涵養域の把握は喫緊の課題である。こうしたことから,本研究では,福島県沿岸域から内陸部まで調査範囲を広げ,それらの地域に分布する地下水や湧水,河川水等の現地調査や採水を実施して,水質やトリチウム等の分析結果を解析し,「地下水の涵養域や広域の地下水流動系および地下水年代について把握し,今後の沿岸域の復興に寄与できるデータベースの構築を目指す」ことを最終的な目標と定め,研究を進めている。 平成28年度の調査では,先行研究の結果を参考にして調査地点を選定し,秋季~冬季にかけて調査・採水を実施した。既存の調査地点(地下水や湧水)に加え,沿岸域の自噴井(深井戸)も複数追加し,深度別の水質の特徴や涵養域の違いについて把握することができた。併せて,滞留時間(地下水の年代)を推定するための試料採取も実施した。また,年代推定に使用するための涵養標高データを得るために,複数河川を対象とした標高別河川水の採水も実施し,同位体比の高度効果についてより明確に示すことができた。これらの結果,より広範囲の水質特性を把握し,地下水や湧水の涵養域の推定を行うことができた。現在,分析中の年代推定値が定まった後,地下水流動について更に考察を進めてゆく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度(2016年度)の研究では,12月と3月に現地調査・採水を行ない,無機溶存成分,微量元素および安定同位体の分析を行った。これらの結果を取りまとめて,同位体比の高度効果を明確にし,地下水,湧水の涵養標高の推定を試みた。また,無機溶存イオンと重金属元素を含めた微量元素の特徴も把握し,帯水層による水質の違いについても示すことができた。さらに,水質組成の特徴を把握したうえで,年代測定用の試料採取地点を選定して3月に採水を実施し,外部機関に分析を依頼した。年代分析用の試料は一部を次年度に繰り越し,結果についてはこれから検討する予定であるが,当初に予定した研究項目は概ね実施することができ,研究も順調に進展している状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度(2017年度)は,分析中の年代測定用データの解析を行い,沿岸域の湧水,地下水,自噴井の滞留時間を推定する。年代データに加え,水質,安定同位体比の結果などを総合的に用いて検討し,沿岸域周辺の地下水流動の概念図を作成できるよう努める。この結果から,今年度に実施する調査地点を選定し,夏~秋にかけて現地調査・採水を実施できるように準備を進める。今年度は,特に涵養域である内陸部(阿武隈山地周辺)の地点を追加して,沿岸域から内陸部にかけての地下水流動解析に用いるためのデータの取得を目指す。 また,研究結果(中間報告)については,本年5月と秋の学会にて発表する予定である。平成29年度末までに大よその調査を完了させ,最終年度(平成30年度)は解析を中心にして,福島県沿岸域の地下水流動を解明できるよう努めてゆく。
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Causes of Carryover |
地下水年代(滞留時間)を推定するための水試料採取について,対象とする地点の選定に予定よりも時間を要したため,平成28年度の調査では3月に採水を実施した。これに伴い,年代測定用の依頼分析を次年度(平成29年度)に実施することになったため,分析費用および関連する消耗品等について,次年度への繰り越しを希望した。また,平成29年度も年代推定用の地点を追加するため,この分の調査旅費についても,平成29年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年3月後半の調査において,予定していた年代分析用の試料採取の一部を実施した。これらの水試料について,4月~5月に外部機関に分析を依頼し,地下水年代推定用のデータとして用いる予定である。また,追加調査も夏~秋ごろを目安に準備を進め,残りの年代分析用地点の採水も実施する。
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Research Products
(7 results)