2018 Fiscal Year Research-status Report
福島県沿岸域から阿武隈山地における地下水の水質形成と地下水流動の解明
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16K01212
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
藪崎 志穂 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 研究員 (60447232)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 福島県沿岸域 / 地下水 / 湧水 / 水質 / 安定同位体 / 地下水流動 / 滞留時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年(平成28年)より福島県北部沿岸域から阿武隈高地周辺の地域に位置する地下水,自噴井,湧水,河川水,温泉を対象として,現地調査を定期的に実施し,ECやpH,水温の現地測定と採水をおこなった。採取した水試料は,全試料について無機溶存成分(IC),微量元素(ICP-MS),酸素と水素の安定同位体比(CRDS)を測定し,各地点の水質の特徴把握や,水質の季節変化の有無について示した。 2018年度の研究では,これまでに蓄積した水質や同位体比のデータを用いて統計解析(階層別クラスター解析,主成分分析等)を行い,グループごとの水質や同位体,地点の位置情報など,具体的な特徴をまとめた。 また,標高の異なる4地点で約1年間実施した降水観測の結果を用いて地下水涵養直線を求め,研究対象地域の地下水や湧水の涵養域の推定を行った。 さらに,滞留時間の把握のため,3HやCFCs,SF6分析用の採水を行い,依頼分析により滞留時間の推定値を取得した。滞留時間と水質,安定同位体比を併せて検討した結果,安定同位体比が相対的に高い地点では滞留時間が短い場合が多く,沿岸域周辺の台地部で涵養された水であることが予想された。一方で,安定同位体比が相対的に低い地点では滞留時間が長い場合が多く,これらは内陸部に位置する阿武隈山地周辺で涵養された水であること考えられる。前者の水質組成はCa-HCO3型やNa-Cl型,Ca-SO4型を示し,後者の水質組成はNa-HCO3型を示す地点が多く,上記の推定が水質の特徴が示す結果と矛盾がないことも把握できた。 今後は,補足的な調査(特に滞留時間の地点追加)を実施し,これまでに得られた結果と併せて考察して,福島県沿岸域の地下水流動について取りまとる。これらの結果を論文として公表し,また,学会発表やHP等を活用して,研究成果の情報公開に努める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの研究において,研究対象地域の地下水や湧水の溶存成分や安定同位体のデータは十分にそろい,沿岸域から内陸部にかけての水質の特徴把握を行うことができた。一方,滞留時間分析用の試料採取もこれまでに複数回実施しているが,採水条件により地点が限られてしまうことに加え,分析に時間を要することから,データ収集について当初の予定よりもやや遅れている。2019年度も補足的な調査を実施し,滞留時間のデータを蓄積する。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は特に滞留時間分析用の補足的な調査・採水を行い,分析を実施して,データを蓄積する。これまでに実施した調査の結果や分析データも含めて結果を取りまとめ,福島県沿岸域の地下水流動について検討する。研究結果について学会発表や論文で公表できるよう,準備を進める。また,今後の研究の発展や結果の活用法についても考え,研究で得られた成果の社会還元に努める。
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Causes of Carryover |
滞留時間推定用の試料採取が予定よりもやや遅れているため,その分の調査旅費,分析費用等を次年度に繰り越しすることになった。また,研究成果をまとめた論文の英文校閲,投稿料等にも使用する予定である。
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Research Products
(5 results)