2017 Fiscal Year Research-status Report
コンピテンシー重視の地理教育の確立に向けた基礎的研究
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16K01224
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
池 俊介 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (30176078)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井田 仁康 筑波大学, 人間系, 教授 (20203086)
山本 隆太 静岡大学, 教職センター, 研究員 (80608836)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | コンピテンシー / 地理教育 / カリキュラム / ヨーロッパ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、コンピテンシー育成を重視した地理教育カリキュラムが実践されているヨーロッパ諸国を対象として、各国におけるコンピテンシーを重視したカリキュラム策定の経緯やカリキュラムの特徴と課題に関する資料・情報を収集・分析し、日本の学校教育の現状に適合したコンピテンシー重視の地理教育カリキュラムを検討・立案することを目的としている。 2年目に当たる平成29年度は、平成28年度に引き続き国内外のコンピテンシーに関する関連文献の収集を行うとともに、その内容分析を通じて特徴や課題を明確化する作業を行った。具体的には、研究代表者の池がポルトガルに、研究分担者の山本がドイツに出張し、コンピテンシー研究に関する最新の資料・情報の収集を行った。また研究分担者の井田は、リスボンで開催されたIGU(国際地理学連合)のCGE(地理教育コミッション)に出席し、英語圏におけるコンピテンシー研究に関する情報を収集した。 その結果、ドイツ語圏では、ルツェルン大学のレンプフラー教授を中心に、現場での検証を踏まえた精緻なコンピテンシーの作成が行われ、世界でも先進的なコンピテンシー開発が進められていることが明らかとなった。その一方で、ポルトガルではコンピテンシー育成への転換を図ったナショナル・カリキュラムが学校現場からの反発を招き、コンピテンシーの育成と従来の学習内容重視の指導との均衡のとれたカリキュラムの作成が模索されていることが、さらに英語圏でもコンピテンシー育成に過度に傾斜したカリキュラムの見直しが進められていることが分かった。コンピテンシー開発の詳細が明らかになると同時に、その課題や対策の実態も明らかにすることができたことが、平成29年度の研究の大きな成果であった。 また、レンプフラー教授の招聘についての交渉も順調に進み、平成30年6月20日~25日に日本で講演会・情報交換会等を行うことになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヨーロッパ各国におけるコンピテンシー育成の現状を把握することができ、日本に適合したコンピテンシー重視のカリキュラムを作成する上での検討課題が明確になった。また、地理教育におけるコンピテンシー研究の第一人者であるスイス・ルツェルン大学のレンプフラー教授との交渉が順調に進み、平成30年の6月に日本に教授を招聘し、日本地理教育学会6月例会(6月24日開催予定)等においてコンピテンシー開発に関する講演会や、日本の地理教育研究者との情報交換会などを行うことになった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、これまで収集したヨーロッパ各国におけるコンピテンシー研究・授業実践に関する資料・情報の分析結果をもとに、日本の教育界の実態に適合したコンピテンシーに基づく地理教育カリキュラムの立案に向けた本格的な検討に入る予定である。 これまでの作業を通じて、ヨーロッパにおけるコンピテンシー育成に大きく転換した地理教育カリキュラムに対して、地元の地理教育研究者や学校現場から批判や反発が出ていることが明らかとなった。実際にコンピテンシーに基づく地理教育カリキュラムを立案する上では、批判や反発の原因を明らかにし、それらの問題点を克服するための対応策を検討し、それを実際のカリキュラムに反映させる必要がある。そのような作業を進めることで、従来の知識中心のコンテンツ・ベースの授業に慣れ親しんだ教員にも受入れられやすい日本の学校文化に適合した地理教育カリキュラムの開発が可能となると思われる。 また、レンプフラー教授を日本に招聘し、講演会等を通じて研究交流を進めることにより、日本の地理教育界にコンピテンシー研究の意義や価値、さらにはその課題についての認識を広めることができる。さらに、ドイツ語圏で進められつつある地理コンピテンシー開発に日本の地理教育研究者が参加する足がかりが築けるものと思われる。
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Causes of Carryover |
平成29年度にスイス・ルツェルン大学のレンプフラー教授を日本に招聘して、講演会等を開催する予定であったが、先方のご都合がつかず予定した年度に実施できなかった。そのため、招聘のための旅費や関連する経費は支出せず、平成30年度に支出することになった。なお、平成30年6月にレンプフラー教授を招聘し旅費等を支出する予定である。
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Research Products
(8 results)