2017 Fiscal Year Research-status Report
企業の社会的責任を考慮した総合的効率性評価分析手法の構築と応用
Project/Area Number |
16K01236
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
後藤 美香 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (50371208)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 企業の社会的責任 / 環境効率 / 経営効率 / 効率性評価モデル / データ包絡分析法 / DEA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、経済効率性に加え、環境問題への取り組みなど、CSR(企業の社会的責任)の実践を考慮した、企業の統合的経営効率性の評価分析手法を、数理モデルの応用により構築し、それを実際に企業の経営情報に適用し分析することで、企業経営への示唆を得ることを目的としている。新たに提案する評価分析手法を用い、企業の経営効率性の経年的変化を計測し、環境投資や技術進歩が効率性に与える影響や、企業間の効率性や成長性の差異について、定量的に把握し検討する。 2年目となる平成29年度は、分析に必要となる、経済効率性と環境効率性の優先度に関する基本的な概念を整理するとともに、その概念を分析手法の基盤となるData Envelopment Analysis(DEA)モデルに取り入れることで、基本モデルの構築を完了した。 それら分析手法の研究と応用研究をとりまとめ、書籍を執筆・出版した。また、環境効率性の計測に関する応用として、太陽光発電の効率性国際比較や、地域経済の効率性分析を実施し、国内外の学会での発表や、査読付き国際ジャーナルへの論文投稿・掲載を実施した。 さらに、財務データやCSR関連データなど、企業の経営情報データの整理を継続した。環境効率性に関連するデータは、多くが環境負荷物質の排出量など、量的データとして得られるが、環境関連以外のCSRデータは、企業組織に関するものや、CSRへの取組みのあり方およびその度合いに関するものなど、多くの場合、質的データないしカテゴリデータである。そのようなデータを新たなDEAモデルで取り扱った事例はなく、工夫を要するため、データの整理に時間を費やした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分析モデルの構築に必要な効率性概念の整理や、分析モデルの構築を完了し、実証研究を行う基盤を整えたこと、またその分析モデルを企業や産業、地域のデータに応用し、その分析結果から、企業等における環境効率性の向上や、持続可能な社会への適合について示唆を得たことから、本研究課題はおおむね順調に進捗していると考える。 一方で、環境以外のCSRに関する評価指標は、企業別のデータを一通り整理したところであり、分析モデルへの応用はこれからである。そのようなCSRデータをDEAモデルに適用して分析した先行研究はほとんど存在しないため、妥当な分析結果が得られるか、慎重に検証を進める必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き財務データやCSRデータなど、実証分析に用いる経営情報の整理を行うとともに、新たに提案したDEA分析モデルの高度化に取り組む。特に、効率値の時間的変化を捉える方法や、RadialモデルとNon-radialモデルの中間的なモデルの開発と応用については、これまで十分な研究の蓄積がなされておらず、それらを実際に企業のCSRデータに適用し、妥当な経営効率性指標が得られるかどうかについて、慎重に検証していく。 さらに、得られた成果を論文としてとりまとめ、査読付き国際ジャーナルへの投稿・掲載を進める。
|
Causes of Carryover |
人件費・謝礼金の支払や、英文校閲費用を次年度に繰り越したことにより、次年度使用額が生じた。このことは、当該予算を次年度使用額とあわせて使用することが、研究推進のためにより効果的であると判断したためである。
|
Research Products
(7 results)