2016 Fiscal Year Research-status Report
ICTプロジェクトの開発プロセスとチーム形成段階の関係に関する研究
Project/Area Number |
16K01237
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
森本 千佳子 東京工業大学, 情報理工学院, 特任准教授 (00749335)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津田 和彦 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (50302378)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ソフトウエア開発プロセス / チームビルディング / プロジェクトマネジメント / 複線経路・等至性モデル / ジニ係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
●研究成果の内容 当研究の目的は情報通信(ICT)業界における、開発プロセスとチームビルディングに関するプロジェクトマネジメント研究である。28年度は、基礎調査を狙いとしてプロジェクトの形成モデルに関するヒアリング調査を実施した。具体的には、実プロジェクトのヒアリングに先立ち、情報系学生によるPBL(Project Based Learning)でのチーム形成について5チームにヒアリングを実施し、学生によるアジャイル型のプロジェクトにおいて先行研究のTackmanモデル同様に、チーム段階が推移することが確認できた。分析手法として、心理学研究で定性分析に用いられるTEM(複線経路・等至性モデル)手法を適用した。分析の結果、先行研究では「騒乱期」から「規範期」の移行でチームパフォーマンスが向上するとされていたが、特に問題のあったチームはパフォーマンスが低いまま状態が推移し、いったん「実行期」に移行した後に「規範期」に戻り直すパスがあることを発見した。状態が推移したと判断するチェックポイントについて引き続き分析を実施している。また、複数のチームを客観的に比較する手法としてジニ係数の適用を試みた。試行の結果、何を指標として用いるかの検討は文脈に沿って十分な議論が必要なものの複数のチーム比較が簡便に行えるという知見を得た。 ●成果の意義 学生のシステム開発チームを対象としているもののチームの形成段階を表現する手法として、従来、個人の心理学的アプローチに用いられてきたTEM手法を「プロジェクト」という組織に試行したことに新規性がある。またアジャイル型でのチーム形成段階が確認できたことに意義がある。ジニ係数の応用により、チーム比較のしやすさという試行結果を得た。説明変数として何を用いてジニ係数を算出するかについては継続して研究を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
●進捗状況 計画では平成28年度は、インタビュー調査による「現状整理と仮説の導出」、続いて、アンケートによる「メンバーの意識調査」を行う予定であった。実績としては、現状整理と学生のPBLを用いた仮説の導出は実施し、チーム形成段階の認識についてはTuckmanモデルの適用について整理ができた。さらに、SOE(System of Engagement)系と、SOR(System or Record)系でチームへの姿勢が異なることが分かった。また、定性調査としてTEM(複線経路・等至性モデル)を用いたパターン化に着手できた。さらに、チーム状態遷移を可視化する手法として、LEGO(R) SERIOUS PLAY(R) methodologyの評価を追加で実施した。 しかし、メンバーの意識調査については、予備調査であるインタビューにとどまり、アンケートによる定量調査が未着手となっている。結果として3ヶ月の遅延となっている。 ●遅延理由と対策 理由は2つある。まず、当初インタビュー協力依頼をしていた企業のプロジェクトが進捗上の重大な問題に直面し、希望するタイミングでインタビューできなかったことによる。同時にバックアップとして協力依頼をしていた企業のプロジェクトマネージャの退職があり、スケジュール調整が不可能となった。しかし平成29年3月に、当初予定していたプロジェクトのキーマンとなるリーダのインタビューが実施できた。このインタビューを分析し、予備アンケートを作成している。2つ目の遅延理由として、TEMを用いた分析の過程で、複数メンバーのチーム状態の認識を可視化する方法が必要であることがわかった。そのため、組織開発に有効な手段とされている、LEGO(R) SERIOUS PLAY(R) methodologyの評価と試行を行った。これらの理由により、スケジュールがやや遅延した。
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Strategy for Future Research Activity |
●29年度の推進方策 計画では29年度は「仮説の詳細化と検証」を行う。仮説の詳細化には、前年度の研究結果を用いて、Webアンケートを設計し実施する。また、予備アンケートの結果とインタビュー結果を突合して、より詳細な仮説を設定する。前年度のヒアリングにより、SOE(System of Engagement)系エンジニアと、SOR(System or Record)系エンジニアでそもそも「チーム」の捉え方が異なることが見えてきたためこのフレームワークを現状分析にフィードバックし再分析し理論的枠組みを構築する。定性調査としては、前年度の分析によりチームの形成段階を個人がどう認知しているかを表現する手法として、TEMが適していることが分かった。TEMは作成したTEM図を元に継続してインタビューを実施し、変化のプロセスを表現する手法のため、引き続きTEMによる分析を行う。さらに、LEGO(R) SERIOUS PLAY(R) methodologyによってチーム状態の遷移を可視化することが分かったため、仮説の詳細化段階ではインタビューにこれを適用する。LEGO(R)の分析には画像認知を文字化する手法としてビジュアル・ナラティブの適用を検討する。 ●30年度の推進方策 計画では「理論化と実務へのインプリケーション」を行うこととしている。28年度にインタビューを実施したプロジェクトのリリースが2018年(平成29年)のため、プロジェクト全体を振り返ったインタビューができる予定である。それにより理論的枠組みの当てはまりをプロジェクトの形成から終焉までの全体の視点で検証する。また、SOEとSORの分析視点を得たので、それを適用したITプロジェクトの働き方とチーム形成について分析し、インプリケーションするポイントをまとめる。
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Causes of Carryover |
インタビュー調査のスケジュールが遅延したことにより、当初予定していた人数にインタビュー出来なかったため、謝金の支払いが発生しなかった。また、企業のインタビュイーが謝金を辞退したため、支払いが発生しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度に追加インタビューを行うため、謝金支払いが発生することを予定している。
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Research Products
(2 results)