2017 Fiscal Year Research-status Report
多段階確率計画問題に対する効率的解法の開発と社会システムへの応用
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16K01253
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
椎名 孝之 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90371666)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今泉 淳 東洋大学, 経営学部, 教授 (00257221)
徐 春暉 千葉工業大学, 社会システム科学部, 教授 (70279058)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 数理計画法 / 最適化 / 確率計画法 / 整数計画法 / 不確実性 / 需要変動 / 交通システム / 電力システム |
Outline of Annual Research Achievements |
数理計画法や最適化手法は現実の様々な分野に応用されている。現実の多くの問題は、確定的ではなく変動要因を含む。今年度は特に、鉄道分野でのネットワーク設計問題、スポーツスケジューリングの問題、エネルギー供給のネットワーク配置問題などへの確率計画法の適用を行った。 鉄道分野の問題に対しては、L-shaped法を用いることで計算時間を短縮することを可能にした。このような計画手法は、日本では都市の基幹交通を補完するようなLRTなどの導入計画に応用することが可能である。日本国内では、モータリゼーションの進行に伴い路面電車の廃止が続いたが、今後都心部に住宅や仕事場を集約し、新たな街づくりを行うために、LRT(ライトレールトランジット)などの導入が検討されている。LRTの導入は従来の公共交通のネットワークを補完し、機能させるために有効である。このような新たな交通システムの導入を検討するために、確率計画法を用いた数理計画モデルを開発した。 スポーツスケジューリングの問題に関しては、雨天中止という不確実性を考慮したスケジュールを考えるため、まず整数計画法によりスケジュールを生成し、雨天順延を考慮することにより,球団間の未消化試合数の差の最小化を行った。 また、エネルギー供給のネットワーク設計問題については、電力の制御を行う装置の設置を設備投資計画の中で扱わなければならない。この場合、ネットワークの運用制約や電力品質要求を満足することを条件に、投資コストを最小にする設置箇所と容量の決定が必要となる。このような装置設置のための最適化手法は、非常に長い計算時間が必要となる。今年度は需要の変動を考慮した電力制御装置配置のための近似手法を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鉄道分野でのネットワーク設計問題においては、限られた予算の中で路線を拡張し、満たすことのできる需要を最大化するために、多期間にわたる需要変動を考慮した確率計画問題として取り扱った。顧客の交通需要は確率変数に従うものとし、鉄道ネットワークを拡張する計画を考えた。鉄道のネットワークにおける区間容量は、区間の長さ、待避線の有無、信号の数、平均速度などに依存する。この計画では、どの区間を拡張するか、どの順番で拡張するかを考え、需要変動を考慮して期間ごとの費用の総和を最小化することを可能とした。 スポーツスケジューリングに関しては、国外で多くの研究があるが、直接的に日本におけるスケジュールに応用することは困難であると考えられる.なぜなら,日本においては雨天順延が多く,良いスケジュールを求めたとしても,後にこれらが計画通りに遂行できない可能性が高いからである。国内での従来の研究では、過去のデータから各月日において試合が中止になる確率を定め、その値をもとにしてプロ野球の既存スケジュールの改善策を示しているが、元となるスケジュールの作成は扱っていない。本研究では、不確実性を考慮したスケジュールを考え、スケジュールの作成も同時に行っている。 エネルギー供給問題に関しては、電力の制御装置設置費用を線形近似する手法によって、必要最小限の非線形最適化の実行により求解可能となる解法を開発し、高速化を実現した。開発手法の機能を実規模の配電モデル系統を用いて検証したところ、全ての電圧違反を解消した上でコスト最小となる解を従来の局所探索による最適化手法に比べ短い計算時間で効率的に解を求めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)確率計画法の理論、解法アルゴリズムの研究に関する研究を進める。確率計画法における分解法は、2段階型問題などの比較的短期間の問題に分解されている。(2)(3)で対象とする問題は継続する費用を表す関数が近似の困難な関数であると同時に、問題は多期間の大規模最適化を含むことが多いため、解析は容易ではない。分解法の効率化に関する分析を行った結果を応用し、近似の容易な領域に分割することによって問題を解く手法の開発を予定している。さらに、非常に多くのシナリオを取り扱わなければならない場合には、シナリオの統合や、シナリオ生成の効率化を行う。 (2)リスク尺度を導入したSCMなどのモデリングと計算方法の研究においては、多段階モデルの分解は、シナリオを段階ごとでなく、継続的なシナリオとして分解しなければならない。その場合、過去の履歴が等しいシナリオでの整合性が取れなくなるという問題が生じる可能性がある。この場合、実行可能解を再計算する手法を提案する。特にサプライチェーンの運用リスクを最小化する問題への応用を行う。 (3)スケジューリング、交通、エネルギーなどの最適化問題への応用に関しては、対象となる問題を確率的整数計画問題として定式化した上で、効率的解法を開発する。実用性を考慮し、現実社会で重要性が指摘されているスマートコミュニティのエネルギー機器運用最適化、配送の計画最適化、プロジェクトスケジューリングへの応用などを行う。
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Causes of Carryover |
予定していた国際会議への参加が、都合により不可能になったため、次年度使用額が生じた。平成30年度に国内外の学会参加費および、研究用計算機と数理最適化システムの購入へ支出予定である。
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Research Products
(14 results)