2017 Fiscal Year Research-status Report
衛星AISを活用した北極海航路実用化支援情報基盤の設計
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16K01273
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
安部 智久 北海道大学, 北極域研究センター, 教授 (30370795)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 北極海航路 / 航行実態 / 定時性 / エスコート / AIS |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、以下の研究活動を行い成果を得た。1)衛星AISデータを用い、2017年の北極海航路の航行実態について詳細に把握を行った。これは研究開始当初から継続的に行っているものであり、2017年の航行船舶の特徴や海氷との関係などについて考察を行った。2)船会社や荷主といった今後の北極海航路の潜在的な利用主体が、その利用の可否を容易に判断できることを目的に、衛星AISデータのさらに踏み込んだ分析を試みた。第一には、北極海航路の航行の定時性が評価できるよう、海氷の影響を受けやすい区間を対象として、所要時間の分析を行った。この結果、海氷が減退する夏の期間においては、船舶は相当の定時性を持って航行できる状況を明らかに出来た。第二に、海氷が厳しい7月を対象として、特に船速が低下する区間を対象に、衛星AISデータを詳細に分析することで、船舶の挙動と遅延の理由を分析した。ここでは、民間衛星のデータも合わせて活用した。その結果、海氷が特に厳しい区間での砕氷船による特殊な方法でのエスコートや、砕氷船と貨物船との待ち合わせが、これらの遅延の要因となっていることを明らかにした。第三に、海図の不備が指摘されている東シベリア海地域を対象として、衛星AISデータから取得される実喫水データを用い、船舶の実喫水の分布を空間的にメッシュで示す方法を提案した。これは、今後船舶が航行計画を検討する場合に活用できるものである。3)国際学会での発表や討議、関係者へのヒアリング等を実施し、北極海航路の関係主体が必要とする航行実態に関する情報の内容を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に沿ったスケジュールによって、順調に進展している。平成29年度までで衛星AISデータを用いた北極海航路の分析内容について明確化できたため、最終年度ではその利用者への情報提供の方法を検討し、とりまとめとする。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの2年間で、北極海航路の航行実態の継続的な把握・分析と、利用者が北極海航路の利用を容易に判断できるための情報分析手法の検討を行うことができた。平成30年度は、最終年度として、以下の検討を行いとりまとめを行う予定である。第一に、北極海航路の航行実態について、継続的なモニタリングの結果を詳細に考察し、その特徴と、安定的な輸送のボトルネックとなりえる事項を明確化する。第二に、輸送のボトルネックとなりえる事項に着目し、北極海航路の航行に関する統計資料の作成方針を検討する。第三に、実喫水のメッシュ化など利用者が利用しやすい形でのデータベース化やHPでの情報提供のイメージを具体化し、幾つかのケーススタディによってこれらの試作を行う。
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Causes of Carryover |
これまでの研究の結果、民間の衛星AISデータでなければ取得できない情報が見いだされ、平成30年度(平成30年7月)における船舶航行データを購入する必要が生じたため。
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