2018 Fiscal Year Research-status Report
光ファイバひずみ計測の普及に向けた計測の高精度化についての研究
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16K01286
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
成瀬 央 三重大学, 工学研究科, 教授 (60402690)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三島 直生 国立研究開発法人建築研究所, 材料研究グループ, 主任研究員 (30335145)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 光ファイバ / 計測 / ひずみ / 変位 / ブリルアンゲインスペクトル / 環状構造物 / シミュレーション / 実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、インフラ設備などの構造物に生じる事故や災害が大きな社会問題になっており、安心安全な生活環境の実現に向けて、これらの構造物の変状や損傷をモニタリングする技術の開発とその普及が重要な課題となっている。光ファイバ内で発生するブリルアン散乱光のスペクトル(以下BGSと略す)がひずみに比例して周波数シフトする現象を利用する光ファイバひずみ計測方法は、従来の電気的センサでは実現できなかったひずみの長距離・分布計測可能であることから、光ファイバをセンサとして構造物に設置することによる構造物のひずみモニタリング技術への利用が期待されている。 通常、BGSは山型の形状を持つことから、光ファイバ上のひずみ計測位置において観測されたBGSが最大となる光周波数が求められ、それがひずみに変換される。このとき各ひずみ計測位置において、その位置を中心とする空間的にある長さのBGS観測区間、また観測時刻を中心とする時間的にある長さの観測時間内でのすべてのBGSが観測される。その結果、空間的または時間的に、また同時に不均一なひずみが生じるとBGSの形状が変形し、この変形が系統的計測誤差を引き起こす。光ファイバ計測の普及に向けた計測の高精度化のために、これまで不均一なひずみを考慮したBGS形状のモデル化と実験によるそのモデルの妥当性の実証、このモデルを用いた円環構造物の円周方向ひずみの計測方法の開発、さらに計測されたひずみから円環各部の変位計測方法を開発してきた。 平成30年度は、円環の円周方向ひずみ計測においてシミュレーションによるBGS観測条件がひずみ計測誤差に与える影響の明確化、模擬実験による円環円周方向ひずみ計測方法の有効性の実証、円環から環状構造物の円周方向ひずみ計測への拡張を行った。さらに、考案した円環のひずみから円環各部の変位を計測する方法の妥当性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) 空間的・時間的同時不均一ひずみのひずみ計測への影響の明確化 本研究は当初の計画より早く進展し、昨年度(平成29年度)末で完了している。この研究の過程で、空間にかかわるパラメータと時間にかかわるパラメータを置き換えることによって、空間的不均一ひずみ下と時間的不均一ひずみ下の両方のBGSがモデルされることが明らかになった。これは、空間的また時間的ひずみによらず、BGSに同じ変形が生じることを意味している。以下の研究において、この特性を利用した模擬実験を行った。 (2) 環状構造物の高精度ひずみ計測方法の開発 典型的な荷重である集中荷重と分布荷重が作用している円環について、シミュレーションによって円周方向ひずみ計測のためのBGS観測条件と計測誤差との関係について調べた。その結果、荷重によらず、ひずみ計測誤差はひずみ計測(BGS観測)角度の間隔とBGS観測周波数の間隔のいずれの平方根にも比例することを明らかにした。また、上記 (1)で述べた特性を利用して、両荷重が作用している空間的不均一ひずみ下の円環で観測されるBGSと同じ変形を与える時間的不均一ひずみを光ファイバに形成し、このBGSを観測する模擬実験を行い、開発した円環円周方向のひずみ計測方法の有効性を実験的にも実証した。実際に楕円環を作成し実験を行うことは経費的にも設備的にも困難なため、このような模擬実験を行った。円環の円周方向ひずみ計測方法を、より一般的な環状構造物に拡張する方法の基礎検討を行い、この計測を実現するためのソフトウェアを開発した。 (3) ひずみからの構造物断面各部の変位計測方法の開発 上記(2)の実験によって円環内外周に生じるBGSを観測し、それより計測されたひずみから、開発した変位計測方法を用いて円環構造物各部の変位を算出した。その結果、相対誤差1%以下の高い精度で変位が求められることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 空間的・時間的同時不均一ひずみのひずみ計測への影響の明確化 すでに述べているように本研究は完了しているので、実施しない予定である。 (2) 環状構造物の高精度ひずみ計測方法の開発 代表的な環状構造物として、曲面だけからなる楕円環と曲線と直線からなる四角環を取り上げ、平成30年度に開発した環状構造物円周方向ひずみ計測方法を用いて、典型的な荷重である集中荷重と等分布荷重が作用している両環の円周方向ひずみをシミュレーションと実験によって計測し、本方法の有効性を調べる。まず、有限要素解析によって両環の円周方向ひずみを求める。シミュレーションでは、求められたひずみ下でのBGSの観測値を算出し、今回開発した方法によって、それよりひずみを計測する。有限要素解析と開発方法によって得られたひずみを比較する。一方実験では、平成30年度での研究と同様、両環に生じる空間的不均一ひずみと同じ変形を与える時間的不均一ひずみが形成された光ファイバのBGSを観測する。そしてそれよりひずみを計測し、有限要素解析によるひずみと比較する。このような模擬実験を行う理由は上述のとおりである。 (3) ひずみからの構造物断面各部の変位計測方法の開発 環状構造物内外周のひずみから断面各部の変位を計測する方法を開発し、その実行可能性をシミュレーションと実験によって調べる。まず、有限要素法解析によって、集中荷重と等分布荷重が作用している楕円環と四角環内外周の円周方向ひずみと各部の変位を求める。次に、求められた内外周のひずみ下で算出されたBGSの観測値からひずみを計測し、計測された内外周のひずみから、開発した変位計測方法によって各部の変位を求める。また、上述した模擬実験によって観測されたBGSから内外周のひずみを、さらにひずみから各部の変位を求め、有限要素法解析と模擬実験によるひずみを比較、評価する。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた実験用物品を、別な実験で使用していた物品で代用したことによって経費を節減できた。次年度は、この経費を成果発表のための費用に充てる予定である。
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